第7話 ヘルメス計画
「とにかく、これじゃ何も分からないわね」
「偵察用ドローンを放ってみますか?」
「彼らに直接聞きたいの」
「‥‥‥そこは仮想世界じゃないんです。AIの我々は‥‥」
クロウは唸って黙って考え込む。
=私から一つ提案があります=
シュウが口を開いた。
=以前、この013で進めていた計画があります。それが今回、うまく合致するかと=
「計画? あなたが管理してた時の?」
=はい、Host・Embodiment ・Remote ・Mind ・Emulation ・System‥‥HERMESと言います。これは人工に生成した肉体に、遠隔ので動かす機構です。これならば、リアル世界の調査が可能になると提案します=
「ヘルメス‥‥言葉だけを聞いたら、うってつけな感じね」
「待て、危険なことはないのか?」
クロウが口を挟んできた。
=AIの意識が遠隔操作で有機体を動かす為には、同時に同じAIがあっては矛盾が生じてしまいます。遠隔中はそれ以外の行動は出来ません。また、有機体が何らかで失われると、AIそのものも消失してしまいます。リアルアバターから撤退する際は、ちゃんとした手順を踏まなければなりません。それ以外は、ロストしてしまいます=
「駄目だ、駄目だ。そんな危険なこと」
「でもそれしか手はないんじゃない?」
「‥‥し‥‥」
何か言いかけたクロウは途中で止めた。
「リシャン‥‥見たところこの箱舟の科学技術で見るべき点はないようだし、敵対してくる様子もない。このまま放置してしまってもいいのでは?」
「‥‥‥‥」
クロウの言い分は最もだった。客観的に考えてみれば、この箱船から得られるものは何もないだろう。他の敵対的な箱舟と遭遇したとき、対処する技術があるとも思えない。
それに、クロウは心配してそう言っているのも分かる。
エージェントのときもそうだった。
だが‥‥。
「クロウ、私は知りたいの」
「しかし‥‥」
「それにね、私がやりたいと思ってやらなかった事、今まで、一度でもあった?」
「それは‥‥」
クロウはコンソールから手を離して、頭をかいた。
「‥‥そうですね、それがあなたでした。止めても無駄でした」
「ふふん」
リシャンは鼻を鳴らした。
「ですがくれぐれも危ないことはしないでください」
「分かってる」
「調査が目的なので、危険なことに首を突っ込んだりもしないでください」
「分かってるってば」
「本当ですか?」
「相変わらずうるさいな」
そう言い返しながらもリシャンは笑っていた。




