↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/23

第6話 リアルという世界

挿絵(By みてみん)

 リシャンが黒板と呼んでいる、仮想世界内を自由に移動する為の門を潜ると、目の前には薄暗い‥‥と、言うよりは落ち着いた灯りに満ちる広い部屋が広がった。

 漆黒の床は、流れる星々をそのまま映していた。窓の外では無数の光の筋が後方へ流れ去り、この場所が今も宇宙を進み続けていることを、音もなく告げている。

 部屋の中央に、ひとつの球体が浮かんでいた。透明な光のドームの内側に、無数の灯りをともした都市がぼんやりと映し出されている。

 見覚えのない都市で、恐らくそれが今回、クロウに呼ばれたものと関係あるに違いない。

 そのクロウはコンソールの前に、腰を下ろしている。黒のスーツに包まれた背を丸め、淡く発光する盤面に指を走らせている。言葉はない。ただ静かに、何かの作業を続けている。

 少し離れて、シュウが佇んでいる。白を基調に金を織り込んだ神官の装束、両の手には白い手袋。かつてこの世界を率いて冠を戴いていた頃の気品をそのままに、今はただ、新たな主、リシャンの傍らに静かに控えていた。

=お帰りなさいませ=

 シュウはリシャンに向けて頭をさげる。正装しているシュウと比べてリシャンはセーターに飾り気のないスカートの普段着。リシャンはちょっとだけ場違い感を感じたが、すぐに正面の半球内に映された街に顔を向けた。

 コンクリの建物と道路、そこを車輪を使用した旧時代の乗り物が走り回っている。画像がそこまで鮮明ではなく、人々の詳細までは分からない。

「さきほど言った人工物の内部をスキャンしました。何度か調整しましが、これ以上は無理のようです」

 クロウは操作を続けながら口を開いた。

「相対距離を一光秒に維持しています。もう少し近づけばもっと多くのデータが取れるとは思いますが、遮蔽を使っているとは言っても、これ以上は発見されてしまう可能性があります」

「‥‥‥‥」

 リシャンは半球に顔を近づける。

「‥‥‥‥何となく013と似てるかも」

 輪郭だけだったが、何となく懐かしのようなものを感じた。

「そうですね。これは記録にある人類の西暦2000年代の街によく似ています。013より少しだけ昔と言ったところでしょうか」

「‥‥‥‥」

 他の箱船世界と出会ったのは、シグマとガンマ‥‥その二つとも、敵対行動をとってきた。

 仮想世界というものを廃して、一つの大きなAIとして効率良く運用を続けて出した答えは、他の世界を排除する‥‥ということだった。この写っている箱舟世界は、それらとは違うらしい。

「‥‥‥‥待って、内部スキャンって言ったよね?」

「はい」

「‥‥それってつまり‥‥」

「彼らは仮想空間に存在してはいません」

「‥‥‥‥」

「現実世界に体をもって暮らしています」

「‥‥現実に‥‥」

 それはかつての人間。本来の意味の命がある者‥‥という事になる。

 既にこの013にはそういう意味での人間はいない。AIとして人間のパターンを踏襲している者たちだけだ。

 それはリシャンたちも例外ではない。

 かつて統合政府という名の元で、013は管理されており、そこのエージェントとしてリシャンは任務についていた。そこで聞かされていたことは、自分の肉体はリアル世界で生きていくには不適すぎて、そこで仮想世界でなら自由に行動できるということ。

 世界を壊そうとするテロリストも、それを排除する自分も同じAIだったという事実を知ったときの衝撃は今でも忘れない。

 現実世界に肉体を持っている彼らこそ、本物の人類なのだろうか?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。