第十九話 群衆の中へ
(とはいえ‥‥)
限られた時間の中、このまま停滞していてもタイムリミットが来てしまう。
ここは動いてみて、出かたを見るべきかもしれない。
リシャンは口を開いた。
「‥‥私は外に出てみようと思う」
「え?」
二人は当然驚いた。それは想定通りだ。
「危険だ、俺は当然手配されているだろうが、遠野さん、あなたもあんなことをしたんだ。マークされている」
「かもしれないけど、ここに隠れていても何一つ分からない。だったら外にいくべき」
「それは‥‥そうだが‥‥」
幸平は言葉を探しているようだ。中野は黙って話を聞いている。
「幸平さん、あなたは、この世界の仕組みを暴いて、みんなに知らせたかったと言った。だったら、ここで自己の保身をしていても何も進まないんじゃない?」
「‥‥‥‥」
幸平は肘をついて考え込んだ。
「確かに‥‥君の言う通りだ。俺は、世界に真実を広める為に今までやってきた。妹のような悲劇を繰り返さない為にも」
笑って立ち上がる。
かつてシャオティンにも同じように諭された記憶がある。自分と重ねたリシャンは笑みを返した。
「都心に出てみよう。そこで支度をしたらその装置の場所に行ってみる」
そう言う幸平に、中野雄二は反論はしない。
「まあ、人混みこそ、一番の隠れ蓑とも言うしな。閑散とした場所に潜むより、賑わう街に紛れる方が追手の目を逃れやすいかもしれない」
幸平は頷く。
《いいんですかリシャン》
クロウの心配そうな声が聞こえてきた。リシャンは無意識に窓の外のカラスに顔を向ける。
(早く動けと言ったのはあなたでしょ?)
《それはそうですが‥‥彼と一緒では逆に危険です。言っておきますが、いざとなればこちらでその有機体とのリンク接続を解除しますから》
(勝手にそれはやめて)
《言うと思ってました。だから危ないんです。絶対、それを指示しなそうなので》
(分かってるじゃない)
《長い付き合いですからね》
「‥‥フフ」
リシャンはクロウの言葉に思わず静かな笑い声が出た。




