第十六話 協力者
「幸平じゃないか、こんな時間に突然どうしたんだ?」
新しめのマンションの十階、エレベーターを降りて廊下を少し歩いた先に、幸平の言う、知り合いの情報提供者の部屋があった。幸平がインターフォンを押すと、しばらくして顔を出したその知り合いは、黒ぶちの眼鏡をかけた幸平と同じぐらいの男性。幸平を見て少しだけ意外な顔をしたが、リシャンの姿を見て、驚きの度合いを増した。
「詳しい話は中で話す」
「あ、ああ」
幸平はすぐに部屋の中に入って行った。
「お邪魔します」
その人は怪訝な顔をしていたが、リシャンは履いていた黒のローファーの靴を脱いだが、一定距離以上離れると原子分解してしまうので注意している必要がある。
通されたのは狭いリビング。他に誰もいない。一人暮らしの人のようだった。
長いソファーにリシャンと幸平が座る。テーブルを挟んで、その協力者が腰を下ろした。
「彼は立ち入り禁止区域の情報を提供してくれた中野雄二」
協力者‥‥中野雄二はリシャンに頭を下げた。
「彼女が‥‥」
紹介しようとした幸平は、途中で口ごもる。
幸平はリシャンの事を何も知らない。
(自分から名乗った方がいい?)
クロウに聞いてみる。
《そうですね、この場合は‥‥調べてみます‥‥ああ、この世界でゴトウコウヘイが信用している相手である言葉を見つけました。今後の事を考えればそう思わせておいた方がいいと思います》
「はじめまして、幸平さんの愛人の遠野ユズリハです」
「は?」
「え?」
クロウの言う言葉を口にした途端、中野雄二と幸平は同時に驚きの声をあげた。
「‥‥学生?‥‥だよね‥‥まあ、趣味には口は出さないが」
「い、いや‥‥」
反応がおかしい事に気が付いたが、それがなぜなのかリシャンには分からない。
「それより、どうしたんだ?」
「ああ、そうだった! 実は‥‥」
幸平は警察に追われたことはそのまま話したが、リシャンに助けられたことは伏せて、一緒に逃げてきたことにしていた。
「既に俺の素性はバレている。もうアパートには戻れない」
「そうだな、しばらくおとなしくしていた方がいい」
雄二は話を聞きながら、冷蔵庫から食べられるものを出してきた。
「それで‥‥本当に禁止区域に行ったのか?」
「いや、途中で見つかってしまって‥‥お前の言う場所まではたどり着けなかった」
そう言う幸平の顔は本当に悔しそうだ。
「そうか、あそこは警備が厳重だからな。仕方がない」
電子レンジが動く音が静かな部屋に響く。
「奴らは専用の情報網を持っている。近づく所か、それを調べようとした者までたちまち捕まえられてしまう」
中野雄二はかつて自分がその中で働く者の一人だった事、そこで見た小説の中にでもでてきそうな大がかりな機械設備のことを専らリシャンに説明した。
クロウの言った言葉は本当に効果があったようだ。
「その施設はバカげた程に巨大な保守点検装置だったんだ」
「保守点検?‥‥何の?」




