第十四話 閉ざされた世界
足をひきずる度に、辛そうな顔をしている幸平を横眼に、リシャンは途中で立ち止まる。
「ちょっと撃たれた足をこっちに伸ばして」
「え?」
幸平は言われた通りに足をだした。リシャンは杖を傷口に向ける。杖の先の紫の宝石に光が灯ると、幸平の傷が瞬く間に治っていく。
「こ‥‥これは‥‥一体‥‥」
《リシャン!》
驚いたのは幸平だけではなかった。
《杖のナノマシン治療は、一回しか使えないんですよ。もしものときの為のものだったのに、そんな無駄使いをしてどうするんですか。もう杖のバッテリーが半分きりましたよ》
「無駄使いじゃないでしょ、大事な情報源になるんだし」
灯りが弱まってきた頃、幸平の足はすっかりと元通りになっていた。
「信じられない‥‥」
「だとしても、職業がら、この世界に広めないでね」
さっきのジャーナリストというのは情報を広めること、用心するにこしたことはない。
「‥‥分かってる」
幸平は既にリシャンが普通の存在ではないことを受け入れたようだった。
しばらく歩くと、車通りが多くなってきた。
「この格好のままだと目立つかな」
クロウへのあてつけのつもりで呟き、杖を振る。先端の宝石が光ると、ドレスのような服はすぐにベージュのカーディガンと紺のスカートという普段着に変わった。
杖はネックレスに変わる。
幸平は口を開けて見ていた。
「‥‥凄いな、もう何でもありだ。本当にユズリハさんは何者なんだ?」
「ふふ」
それには答えず、リシャンは笑って先に歩きだす。
日はすっかりと暮れていた。
街へと誘導しているかのように街灯がポツポツと灯しはじめる。
「しかし‥‥もう俺のアパートには行けないな」
警官達が名前を言っていたことを思い出した。
「とりあえず俺の知り合いの所に行く。そこなら一息つけるだろ」
「‥‥そう」
しばらくは無言で歩いていく。
「‥‥で、コウヘイは何の罪を犯したの?」
先に口を開いたのはリシャンだった。
「‥‥罪‥‥か」
その言葉に幸平の顔が曇る。
「今から話すことは冗談でも笑い話でもない。真面目な話なんだ」
「‥‥どうぞ」
一歩だけ先を歩いていたリシャンは、立ち止まって幸平の顔をじっと見つめた。
真剣な眼差し‥‥言葉で言われなくても本気なことは分かる。
「この世界は‥‥時間も空間も閉ざされた世界かもしれないんだ」
「‥‥‥‥」
リシャンはその言葉を聞いて、胸元のネックレスを強く握りしめた。




