第十三話 ジャーナリスト
「なんで‥‥俺を助けたんだ? あんた誰なんだ? そんな格好をして‥‥」
「なんでって? そりゃ‥‥目の前で死にそうな人を見たら助けるんじゃないの? 普通は」
普通‥‥と言ったあと、リシャンは自分の服装を見渡す。この男性までも、おかしな格好‥‥というからには、場違いな服装なのは確かなようだ。
「で、自己紹介しよう。私は‥‥リ‥‥」
言いかけて途中で変える。
「ユズリハ。遠野楪。たまたま通りかかった学生」
「は?‥‥たまたま?」
リシャンの自己紹介に、男性は怪訝な表情になる。
「君は‥‥遠野さんは、たまたま警察にあんなことをしたのか? いや、普通は出来ないし‥‥」
男性は頭を振った。
「とにかく、ありがとう、助かったよ。あのままだと、俺は警察にハチの巣にされていた」
リシャンに手を伸ばしてくる。それが握手を求めているものだと、リシャンは知識で知っていた。
「俺は後藤幸平。フリーのジャーナリストをしている」
「ジャーナリストって?」
その言葉はリシャンの知識にはなかった。
「‥‥特定の報道機関に所属しないで、独立して取材・執筆・撮影を行う記者のことだよ。学生なのに、そんなことも知らないのかい?」
クロウが調べるより早く答えを言われ、少しだけリシャンはムっとした顔になる。
取材、執筆、撮影‥‥それを生業とする者が、現地のエージェントに狙われた。その事から察するに、この幸平という男は、統治者にとって暴かれたくないものを探ろうとして、逆劇を被ったに違いない。
暴かれたくないもの?
それはこの世界のこの国だけのことなのだろうか?
それともこの世界共通の秘密?
《リシャン、これ以上は関わらない方がいいと思いますが》
クロウも何となく胡散臭さを感じたらしく、いつもの心配性的発言をしてきた。
「何言ってるの? これはこの世界を探るいい機会じゃない」
「え?」
「あ‥‥何でもない」
幸平の存在を忘れてクロウに話しかけてしまい、リシャンは慌てて咳払いする。
当初の目的通り、この世界の状況を聞くにはうってつけの存在だ。
「とにかく、一旦、ここから離れよう。郊外に行けば奴らもいないはずだ」
幸平はそう言ったが、
《そのルート上には、さきほどの黒い制服姿の仲間達が封鎖していますね。このまま大通りを、市街地に移動した方が安全です》
「‥‥‥‥」
クロウの言葉に、リシャンは黙って頷く。
「逆に市街地に行きましょう」
「え?」
「そっちに行くと捕まると思うけど?」
「‥‥‥‥」
自信タップリにそう言うリシャンに、幸平は首を傾げながらついていく。




