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ミスコン!!  作者: ともやみやもと
1章 白鳥雪はアナウンサーになりたい
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第二話 第一回全体会議その2

 ~第一話の続き~



「ほな、自己紹介も済んだし、細かい話に移るで。それではみなさんこちらの資料をご覧ください」


 洋平はそう言いながらカバンの中から書類を取り出し、配っていった。


「洋平さん、丁寧な言葉も使えるんだ」


 木ノ葉がそう言う。


「せやで。すごいやろ」と洋平。


「なんかちょっと残念」と木ノ葉。


「なんでやねん。まあ、ええけど」


 洋平はスイッチを切り替えるように軽く二回咳をした。


 僕は安藤から紙を受けとり、ぱらぱらとめくった。内容としては、ミスコンの概要についてだった。ミスコンの基本方針について、イベントについて、そして、学祭のミスコン本番について。


「とりあえず、これからみんなで色々やっていくわけですが、基本的には男女のペアで動きます。ペアはこっちで勝手に決めさせてもらったわ。紙にも書いてるけど、まず、丸とアミリア。ほんで、安藤と木ノ葉ちゃん。てっぺーと雪ちゃん。なんとなく相性が良さそうな組み合わせにしたつもりだけど、それでええか? ええやろ? おし、次いくで」


「まあ、いいよ」とアミリアが代表するように言った。全員の性格も完全に理解したつもりではないため、ここでは異論の出ようもないだろう。


 僕が無意識に雪を見ると、少し遅れてちょうど雪もこちらを見たことろだった。雪が軽く頭を下げたので、僕も軽くお辞儀をした。そしてすぐに雪が視線を資料に戻したので、僕も戻した。


「次。皆さんには個人の公式SNSを運用してもらいます。なので、それを使って自由に自分を世界に売り込んでください」


 洋平はそう言うと、


「言っとくけどあれやで、SNSのフォロワー数めっちゃ大事やからちゃんとして方がええで」


 と続けた。


「自分のデザインの宣伝をしてもいいんですか?」


 安藤がそう言う。


「もちろん。自分の武器は何でも使ってくれ」


「おっぱいも?」


 アミリアがそう言う。


「おっぱいか。それは写真によるな。一旦俺に送ってくれ。俺が判断する」


「キモ」


 自分で言っておいて、アミリアは少し胸を隠すように腕で覆った。


「何やねん。でもまあ、真面目な話、ものによる。水着とかは全然OKやけど、スケベすぎるものはあかんな。気になったら女性の運営の人に都度確認で。他に聞きたいことは?」


「コラボは?」


 木ノ葉が手を挙げてそう言った。


「もちろん相手によるけど、原則OK。ただ、必ず運営は通して欲しい。反社とかやったらあかんし、トラブルにもなりうるからその場に葉スタッフも同席する」


「何かあれだな、芸能人と所属事務所みたいな感じだな」


 丸がそう言った。


「まあ、ざっくり言えばそうやな。あんまり深く干渉せえへんし、売り出し方も個人の裁量にお任せではあるけど」


 洋平がそう言う。僕はなんとなく頷きながらぼんやりと聞いていた。


「アカウントはもう作成済みで、後は紙に載ってるアドレスとパスワードを入力したらログインできる。今日の夜八時半に皆には自己紹介文と宣材写真を投稿してもらうから、それを合図にいよいよミスコンが始まるって感じやな」


「宣材写真はいつ撮るんですか?」


 木ノ葉は手を挙げてそう言った。


「この会議終わったら一人づつ撮ってくで」


「え、この後!?」


「そうやけど、あれ、言ってへんかったっけ?」


「えー、聞いてないよ。どうしよう、バイト終わりにそのまま来ちゃったから髪の毛変だよ」


 木ノ葉は髪の毛を触りながらそう言う。


「確かに、言われてみれば、言ってなかったかもな」


 洋平は口を押さえてそう言った。自分としてはこれといった問題はないが、女性陣にとっては看過できない伝達漏れだったようで、少しざわつく。


「しっかりしてよ。運営長」


 アミリアがそう言う。同時進行で各方面とやり取りをしているだろう洋平にとって、宣材写真の撮影というのは頭の片隅からこぼれ落ちてしまうくらいのことでしかないのかもしれない。


「そうか。どうしようかな。ちなみに、この後でも問題ない人は?」


 洋平がそう言うと、男三人と雪が手を挙げた。


「あ、雪ちゃんは問題ないん?」


「はい。大丈夫です?」


 男三人はそれほど頓着がないようで、逆に雪は常に気を抜いていないといった風であるのでさすがである。


「木ノ葉とアミリアは? 一旦家に帰りたい感じ?」


「私は最悪化粧だけ直せればいいけど」とアミリア。


「えー、うちは一回帰りたいかも」と木ノ葉。


「木ノ葉ちゃん実家やんな?」


「うん。往復二時間以上かかるから、準備も合わせて四時間くらいは欲しい」


「まじかあ」


 洋平はそう言うと、時計を見た。現在は午後三時。今日の七時から、大学近くのバーを貸切って懇親会兼、決起集会のようなものがあると聞かされている。写真を撮影するのにどれくらいの時間がかかるか分からないが、木ノ葉を待っていては写真を投稿する八時半には間に合わないだろう。


「だいたい、どうして全部一日でやろうとするのよ」


 アミリアがそう言う。


「六人のスケジュールが合う日が今日しかなかってん」


「何も六人同時じゃなくたっていいじゃないの」


「撮影スタジオ借りんのもタダちゃうねん。経費削減や」


 洋平がそう言うと、アミリアは「ほんとにもう」といった様子で、腕を組んだ。


「まあ、でもしょうがないか。どうしよう、うちは一人暮らしだから一回帰れるけど、木ノ葉ちゃんと雪ちゃんもうちに来る? 少し狭いけどアイロンとか、諸々は揃っているから」


 アミリアがそう言う。


「え、いいの?」と木ノ葉。


「うん。うちすぐ近くだから。雪ちゃんも」


「ええと、どうしようかな。じゃあ、ありがとうございます」


 と、雪は少し迷ってそう答えた。


「それ、俺も行っていいやつ?」と丸は冗談半分でそう言う。


「ダメに決まってんでしょ」


 アミリアが切り裂くようにそう言うと、会議室は軽く笑いが起きた。


「俺んち近いから、あれならシャワー貸せますよ?」


 そんな中、安藤は一人真剣な表情で丸にそう提案した。


「あ、ごめん。別に俺は髪の毛セットし直したいとかじゃないから大丈夫」


 と、丸は慌てて訂正する。


「あんな、安藤。お前はびっくりするかもしれへんけど、丸は別にアミリアの家に行きたいわけではないねん。これを世界では冗談と呼ぶねん。ゆっくり覚えていこうな」


 洋平が優しくそう言うと、安藤はまたポカンとした。


「いや、行けるものなら行きたいと思ってたくせに」


 アミリアがそう言うが、丸は必死に否定していた。


「ほな、じゃあ先に男三人で写真を撮って、後から女子を撮ろか。撮影スタジオも念のため長めに抑えておいて良かったわ。ありがとうアミリア」


 会議室がいったんざわついたが、女性陣はアミリアの家でセットし直すという方向で一段落がついた。そして仕切り直すように洋平は咳ばらいを二回した。


「じゃあ、少し話それてもうたけど、本題に戻るで。学祭について。半年後の十一月の学祭がミスコンの本番やねんけど、その時に各三分ずつで特技披露をやってもらうことになってるから、早めに何をやるか考えておいてくれ。会場はでかい会議室を貸切ることになってて、キャパは三〇〇人くらいやな。やることが思いつかない場合も早めに言ってくれ。一緒に考えるから。まあ、よくあるのが手品とか、歌とかやな」


「何でもいいの?」


 アミリアがそう言う。


「おっぱい出したらあかんで」


「出さないわよ。例えば、柔道で人を思い切りぶん投げたりしてもいいの?」


 アミリアがそう言う。一瞬部屋が沈黙した。


「えっと、アミリアさんは柔道のご経験がおありで?」


 洋平がそう言う。


「うん。黒帯」


「はあ。左様でございますか」


「で、いいの?」


「まあ、アレやな。お客さんに危害が加わらない範囲であれば」


「そ。良かった」


 アミリアはそう言う。


「ちなみに、相手は誰なん?」


「いや、思い付きで言っただけだからまだ決まってない。でかくて投げがいのありそうな男を探すわよ」


 アミリアがそう言う。一瞬の間をおいて、全員の視線がなんとなく丸に集まった。


「え、俺?」


 丸が自分を指さしてそう言う。


「丸、身長何センチ?」


 アミリアは丸にそう言う。


「え、一八五センチだけど」


「いいね。体重は?」


「八八」


 丸がそう言うと、アミリアは、少しニヤリとした。


「じゃあ、半年間で体重を八キロ落とすこと。分かった?」


「え、何、決定? しかも八キロって、まあまあ大変だぞ」


「いいじゃない」


 アミリアがそう言うと、丸は「八キロかあ」と呟いた。技をかけられることよりも、八キロ減量することの方を気にしていた。


「丸やったらええよ。関係のない人を投げて怪我でもしたら責任問題になりかねんからな」と洋平は少し嬉しそうにそう言う。


「俺が怪我したらどうするんだよ」


「それは大丈夫。その時はちゃんと謝るから」


「謝るだけかよ」と丸は笑う。「まあでも、部活も終わるし体を絞るのもいいかもな」


 丸は何かを確かめるように自分の肩や二の腕を触っていた。部活にバイトに勉強にミスコン。一日の時間は僕と同じだというのに、彼はきっと僕とは比較にならないほどの密度で毎日を過ごしているのだろうと、そんな風に思えた。


「じゃあ次。投票について。ミスコンの本番はお客さんがそれぞれ一票もってて、合計三百票あるわけだけど、それとは別でネット投票もある。ただ、ネット票と会場票は一票の重みが全然違って、ネット票の百票が会場票の一票と同じになるようになってんねんけど、まあ、要はバランスやな。ネットで広く票を集めるだけでも勝てんし、かといってSNSをサボると、今度はネット票でまくられるかもしれんっていう。何か質問は?」


 洋平がそう言う。勝つことにこだわりのない僕にとっては、一番どうでもよい話だった。きっと、雪以外はみんな同じで、特に質問もない。


「ほな、次で最後やな。企画について。軽く言ってあると思うけど、再来週末に近くのショッピングモールでイベントがあります。詳しいことはまだ未定やねんけど、今のところ、さっき言ったペアでコーデバトルみたいなんをすると思うわ」


「おー。なんか、それっぽいね」


 木ノ葉が少し嬉しそうにそう言う。


「せやろ。このショッピングモールは毎年お世話になってるとこやねん」


 洋平は。そう言う。


「じゃあこれにて、今日の会議は終わり! 女性陣はアミリアの家でお色直しをして、男性陣は撮影! その後は女性陣の撮影で、七時からは懇親会! 八時半にミスコンスタート! ほんで二次会のカラオケ! 以上!」


「いや、どう考えても詰め込み過ぎだろう」


 丸は笑ってそう言った。


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