やらかしの96
「さて、だいぶ冷え込んできたから、あれを作るか。」俺はそう思いながら、孤児院の部屋を出る。
「ケイジ様、おはようございます。」華厳が朝の日課の包丁素振り100本をしながら言う。
「おぉ、精が出るな、華厳。」
「勿体無いお言葉、精進いたします。」
「さて。」俺はコンロを虚無の部屋から取り出す。
そして、虚無の部屋から大き目の鍋を取り出してコンロに乗せる。
鍋に魔法で水をはり、虚無の部屋からコブを出してそこに入れる。
「さてもう一つ。」俺は別の鍋を取り出すと同じように水をはる。
そして、机を用意すると、まな板と、包丁を取り出す。
まな板の上にミーウラ産のダイコを出す。
(煮込みにぴったりって言っていたよな。)俺はそう思いながら輪切りにして皮を厚くむく。
(皮はきんぴらにするか。)そう思いながら皮を虚無の部屋に入れる。
(面取りの部分も、きんぴらにするか。)面取りをしながら、その部分も虚無の部屋に入れる。
(隠し包丁を入れて。)
(んで、水から煮込む。)そう言いながら、厚めに切ったダイコを鍋で煮始める。
「ついでに、卵も茹でるか。」そう言いながら卵を40個取り出す。
「丸い方に穴をあけて・・」水で洗った卵の丸い方を包丁の角で突いて小さな穴を開け、更に別の水を張った鍋に入れていく。
「これも煮始める。」そう言ってコンロを起動する。
「主様、おはようにゃ、何をやってるにゃ?」
「あぁ、寒い日の定番だ。」
「ていばん?」
「あ~、またケイジ様がなんか作ってる、」エヌが言う。
「新しい事をやるときは、呼んでくださいって言ったのに。」エムも頬を膨らます。
「説明してください。」
「あぁ、そう言えばそんな約束をしたか。」俺はそう思い、4人に手順を説明する。
「めんとりって何ですか?」エヌが言う。
「あぁ、煮物をするときに、荷崩れしないように角を取るんだ。」そう言いながら余ったダイコで実演する。
「もったいないですね。」エルが言う。
「いや、他の料理にするんだ。」
「他の料理?」エムが首をかしげる。
俺は、虚無の部屋からニンジを取り出し、細切りにする。
そして、ダイコの皮、面取りしたものを取り出すと、ダイコの皮も細切りにする。
「で、フライパンにゴーマ油をひいて、これを炒める。」そう言いながら、そこにあったものすべてをフライパンに入れる。
「おぉぉ。」4人とも声を上げる。
「ちゃっ、ちゃっと炒めたら、隠し味の砂糖一つまみに酒を少しと醤を少し入れて出来上がり。」俺はそれを皿に盛りつけて4人の前に出す。
「ダイコの皮とニンジのきんぴらだ。」
「きんぴら?」
「聞いたことがない料理です。」
「良いから食ってみろ。」
「それでは。」4人がマイ箸を取り出し、口に入れる。
「美味しいにゃ!」
「これは、ライシーに合いそうです。」
「酒飲みには、あてに良いぞ。」
「ケイジ様、何やら良い匂いがするのですが。」華厳が匂いを嗅ぎつけてやってくる。
「あぁ、端材料理を作ったんだ。」
「なんと。」
「ダイコの剥いた皮を使った料理をな。」
「それはどのような?」
「そこの皿にある・・」
「え?」
皿には何も残っていなかった。
「ダイコの皮の細切りと、ニンジの細切りのきんぴらがあったんだが。」
「きんぴらですか。」
「美味しかったにゃ。」
「ケイジ様の料理は次元が違います。」
「幸せ。」
「同意。」
「ケイジ様、御指南下さい。」
「あぁ。」
俺はダイコを取り出すと、皮をむく。
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「で、これが本来のきんぴらだ。」ニンジとゴボを使ったきんぴらも机に置いた。
机の上には、『ダイコの皮とニンジのきんぴら』、『ダイコの皮の甘酢漬け』、『ゴボとニンジのきんぴら』が置かれていた。
「あの、食べても?」華厳がすでに箸を持ちながら言う。
「あぁ。」俺が言うと、華厳はもちろん、ムーニャやエム達、厨房で働く者達も加わり、一瞬で消えた。
「あぁ、捨てていたものも、このように活用できたのですね。」華厳が何かを感じながら言う。
「俺たちは、いったいどれだけ無駄にしてきたんだ!」厨房で働く者たちも同様に声に出す。
「ベカスカの孤児院時代に、どんだけ無駄にしてた?」
「教えてあげないと。」
「他にも絶対あるよね。」
「あるにゃ。」
なんだか、皆考えているようなので、俺は元の作業に戻った。
「おぉ、良い状態に煮えてるな。」卵の鍋のコンロを止めながら言う。
鍋を魔法で冷やし、卵の殻を剥いていく。
「よし、40個剥き終えた。」俺は卵を全て剥き終わり、笊に乗せた。
ふと、ダイコのコンロを見ると、良い具合に煮えていた。
「おぉ、ダイコも良い具合だ。」そう言ってそのコンロも止める。
俺は、ダイコを笊に空け、冷水を魔法で作ってかける。
コブを入れていた鍋も良い状態なので、コンロを起動した。
「主様、また説明なしに行動してるにゃ。」
「今見てたよな。」俺が言う。
「ダイコを煮てた鍋からダイコを取り出し、冷水で占めたにゃ。」
「それだけだ。」
「コブの鍋は?」
「俺は説明したぞ。」
「にゃ、そうだったにゃ。」
「コブは水に漬けて、その後温めて沸騰する前に取り出す。」
「にゃ、何で沸騰する前にゃ?」
「えぐみがでるからな、で、ここで取り出す。」そう言ってコブを取り出し、コンロを止める。
「で、さっきの卵とダイコを鍋に入れる。」そう言いながら、卵をいれ、ダイコは並べて入れる。
「で、これだ。」俺は港町で手に入れた練り物を取り出す。
「にゃ~、これ何にゃ?」
「初めて見ました。」
「ケイジ様これは?」
「あぁ、港町で売っていた、魚をすり身にして揚げたものだ。」
「初めて見たにゃ。」
「コブの出汁を取った鍋に、酒と蜜酒を1カップ、糖を大匙5いれて、色付けに醤をダイコと卵の近辺に少しいれ、練りものを入れる。」そう言いながら、入れようとして気付く。
「新作が出来ているんじゃないか?」
「え? 主様?」
「紫炎、港町の練り物屋の前に。」
「はい。」俺はそこを潜る。
「主様、ここは?」
「おぉ、ムーニャもついて来たのか。」
「はいにゃ、主様にはついて行った方が面白いにゃ。」
「あぁ、そうか。」そう言いながら店の中に入る。
「邪魔するぜぃ。」
「お! ケイジさんじゃないか、お見限りだったな。」店のおやじが俺を見て言う。
「ちっ。」
「おやじ、新作は出来たのか?」
「あぁ、あの時教えてもらった物は全部できているよ。」
「見せてくれ。」
「あぁ、そこにある。」
「おぉ、ごぼう巻き、イカ巻き、ウズラ爆弾、つみれ、完璧だな。」
「へへへ、どうだ?」
「全部貰う。」
「お、おぉ、相変わらず豪勢だな。」
「決済してくれ。」
「その前に、他のネタはないのか?」
「ネタか。」
「あぁ。」
「白身魚をすり身にして、それに味をつけて、木の板に盛って蒸したものはどうだ?」
「なんだそれ?」
「其れと、バク粉の豆の青い状態の物を茹でて、混ぜたり。」
「おぉ。」
「チチバハローの乳で作ったチーズを入れるのはどうだ?」
「よく解らないが、色々聞いてみるぜ、と言う事で、全部持っていけ。」
「おぉ、悪いな。」
「わはは、ケイジさんが教えてくれた物はすごく売れているんだ。」
「へぇ?」
「今回も、期待しているぜ。」
「いや、期待していると言われてもなぁ。」
「紫炎。」
「はい。」そこにあったものが消える。
「主様?」
「うん、帰ろうムーニャ。」
「はいにゃ。」
「あ、戻ってきた。」
「どこに行ってたんですか?」
「あぁ、具材の仕入れにな。」
そう言いながら、俺は具材を取り出す。
「よし、鍋に投入だ。」そう言いながら練り物を鍋に規則正しく並べ入れる。
「コンロ起動!」そう言ってその鍋を乗せたコンロを起動する
「後は煮るだけだ。」そう言いながら次の作業に移る。
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「コブは細切りにする。」そう言いながら、俺はコブを細切りにした。
「で、シータのへたを取って、飾り切りにしておく。」
「にゃ、手伝うにゃ。」
「あぁ、頼む。」
「で、へたは石附を切って細く切る。」
「やります。」
「おぉ、エル、任せた。」
「で、細切りにした出汁を取ったコブは、酒と蜜酒に糖と大匙3の醤を加え、水を入れて煮る。」
「あぁ、シータの傘の方も細切りにして入れるか。」
「やる。」
「あぁ、エヌに任す、4個ぐらいで良いぞ。」
「うん。」
「あたしは?」エムが言う。
「白菜を取ってきてくれ。」
解った!」エムが畑に走っていく。
「コブの佃煮は出来そうだな。」
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「よしよし、で、今晩のご飯だ。」
「え? あそこの料理じゃないのにゃ?」
「おでんは一晩寝かせるのがセオリーだ。」
「せおりー?」
「あぁ、其れが常識だな?」
「で、別の鍋に、水を張ってコブを入れる。」
「にゃ、今から?」
「あぁ。」
俺は取り出した鍋にコブを入れる。
「エヌ、白菜を4等分したら、指の第二関節ぐらいに切ってくれ。」
「解りました~。」
「飾り切りにしたシータをくれ。」
「はいにゃ。」
「オークのバラ肉を薄切りにする。」
「やります!」エルが言う。
「おぉ、任せる。」
「エヌ、白菜はいくつ採った?」
「2個です。」
「う~ん、ぎり足りるか?」
「足りなかったら、もう一回作ればいいか。」
「これは?」
「オークと白菜のミルフィーユ鍋だ。」
「みるふぃーゆにゃ?」
「あぁ、白菜、オーク肉、白菜、オーク肉と重ねて、鍋に横にして入れる。」
「お~。」
「「「「やる。」」」にゃ。」
「あぁ、任せた。」
「「「「出来た~」」」にゃ!」
「お~、綺麗に並べられたなぁ。」白菜とオーク肉は、鍋を5周していた。
「で、ここに酒を入れる。」ダバダバと酒を入れていく。
「コンロをつけて暫くは、酒精が蒸気になって出るから、酒飲めない奴は離れろよ。」
「で、シータと醤を適量入れて、コンロを起動する。」
暫くすると、ふつふつ煮えてきた。
俺は出てきた灰汁を丁寧にとる。
「さぁ、もう良いだろう。」と言って周りを見ると、作業を終えて手を洗った孤児たちが、その手に器をもって待ち構えていた。
「よ~し、順番によそえ~。」
「「「「「「「「「「「「「「は~い。」」」」」」」」」」」」」」」
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結局、あと2回、鍋を作った。
「うむ、よく食べて、元気なことは良い事だ。」そう言いながら、俺も鍋をつついた。
「明日のおでんも楽しみにゃ。」
「う~ん、40人前ぐらい作ったから、足りるよな?」
「主様、フラグ?」
「いやなこと言うなよ。」




