第11話 配信魔法の一端
「フンフンフフーン♪」
自室のベッドの上で。
僕はとても上機嫌に鼻歌を歌っていた。
初配信が大・大・大・大・大成功だったからだ。
「よしっと、これでオッケー」
空中をスワイプして魔法画面を操作する。
初配信を見た人達のリアクション動画を選択して、それをワクワクしながら再生した。
「ぶはっ! この人腰抜かした! 良いリアクションするなぁ!」
いくつも展開した魔法画面の一つを指差し、声を上げて笑う。
「こっちのおじいちゃんは驚き過ぎて背骨がシャキッとしてるーっ!? あははははははっ!」
ヒィヒィと腹を抱えてベッドの上を転げ回る。
「ヤ、ヤバッ! このおばちゃん気絶しちゃった! アンチが湧いちゃう!?」
ムンクの叫びのポーズで焦る。
──初配信を見た人達のリアクションを録画していた理由は、初見のリアクションを見逃すのが惜しいと思ったからだ。
正直初配信よりも、こっちを見るのが楽しみでしょうがなかった。
『初見さんからしか得られない栄養がある』って言葉もあるように、素のリアクションは大変貴重だから保存食にもなる。
やっぱり一瞬の場面を記憶に残すのも素敵だけど、こうして記録に残すと何度も見返せるから、お得だよね!
「はー……、楽しかった」
魔法画面を消して、大きく伸びをする。
リアクションが面白そうな人達をピックアップしたとはいえ、さすがに星の数だけあるリアクション動画を全部見る事は出来ないから、キリのいいところで終わらせる。
「王様達のリアクションもいいけど、同じ物ばかり食べてると飽きちゃうからねーっ!」
──僕は世界に嘘をついた。
正確に言えば嘘はついていないんだけど、皆からすれば『嘘をつかれた』って思うと思う。
僕は国民達に対し、配信魔法は〖その時、その瞬間を、産地直送でお届けする魔法〗だと言った。
当然、これは嘘じゃない。
僕は王様達に対し、配信魔法は〖遠くの場所を見れたり、声を聞いたり、それを皆で共有して楽しめる魔法〗と言った。
当然、これも嘘じゃない。
じゃあ何が嘘なのか。
僕は皆に、伝えていない事があったのだ。
簡単に言えば「このゲーム機はゲームが楽しめます!」とは伝えたけど「実は映画も見れたり、音楽も聞けたり、そういう機能もあります!」とは伝えていなかったって事。
悪どいと思う?
僕は思わんッッッ!!!
「女神アモレーヌ様の敬虔なる信徒として、正直にお答えいたします」とは言ったけど「全部教えます」とは言っていないしね!
それに。
配信魔法の面白いところは、まだまだこんなものじゃない。
「でも、この【録画】の素晴らしさは皆に教えてあげたいなぁ。なんてったって満足度が違うんだよ、満足度が」
ライブ配信にはライブ配信の良さがある。
毎日配信はライブ配信だから出来る事だし、旬の映像を新鮮なままお届け出来る。
ただ、人の人生は1日だけで完結しない。
人の人生は、毎日の積み重ねで生まれる長編ドラマなのだから。
「それなら……」
録画機能は早めに披露しておこう。
そっちのほうが、2倍楽しめるし!
「基本はライブ配信で、1週間に1回録画配信にしよう。面白そうな人がいたら何日間か追いかけて、見やすいように編集して、配信する」
第2のとある計画もある。
あれを成功させる為には、こんなところでゴロゴロしてる場合じゃない!
「そうと決まれば早速ターゲット……違った、主人公を探さないと!」
ベッドから跳ね起きて、消したばかりの魔法画面を起動させる。
バッと両腕を広げると、壁一面を埋め尽くすほどの巨大な魔法画面へと変化した。
「ほいほい、ほいっと!」
そこにデザートアマインの全体地図を表示する。
地図上には、星屑のようなまばゆい光が無数に点在していた。
「ふぅ……ヘェッ! 集中、集中!」
深く息を吐いて、目を閉じる。
手には魔法で用意した小さなダーツ。
「君に決めたーッッッ!!!」
カッと目を見開いて、ダーツを投げる。
ダーツはたちまち地図へと突き刺さり、先端を見てみると一つの光が強く輝いていた。
僕はその光へとゆっくり手を伸ばし──
「君は一体、どんな人生を見せてくれるかな?」
──ニコリと笑った。




