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魔女と俺の絶滅戦争  作者: あまあま
絶滅指定種『吸血鬼』
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スカイタワー決戦②

 彼岸に連れてこられたアルテリアは澪と戦っていた。


「ちょ、ちょっと待った」


「待たない。お前をさっさと滅ぼしてわたくしは風花様の元に戻らないといけない」


 澪はアルテリアを圧倒していた。アルテリアの作り出す銀の武器をかわし、弾き、受け流してアルテリアに接近する。

 しかし、アルテリアも負けじと炎や雷を使うことで澪の接近を許さない。

 逃げるアルテリアと追いかける澪という状況が出来上がりそれを3分ほど続けて、いい加減焦れた澪が肉体強化の魔法の強度を上げてアルテリアから放たれる魔法を無視して一気に懐に入る。


「ふん!」


 全力の正拳突きがアルテリアの鳩尾に叩き込まれる。ドゴンと金属を殴った様な音が聞こえてアルテリアは吹き飛ばされる。相当な衝撃だったようでアルテリアは受け身もとれず地面に転がった。


(嘘でしょ。一応わたしの服も魔法で作ってるし中にも銀の膜があったのに、拳に傷一つついてないなんて)


 イルレイン家の魔法で作る銀は鋼よりも硬く金よりも軟らかい性質を持っている。そんなものを全力で殴りつければ、いくら肉体強化の魔法を使っていようが拳を痛める。

 しかし澪の拳は傷一つついてない。その小さな手は陶磁器のような純白のままだった。

 人間のものとは思えない澪の肉体強度にアルテリアは戦慄するが同時に笑みを浮かべる。


「化け物には化け物をね」


 アルテリアの言葉と同時に7つの人影が彼女に追撃を加えようとしていた澪に遅いかかってくる。

 突如現れた人影から襲われた澪だったが傷一つつけられることなく全てをいなした。


「なに、そいつら?お前たちは2人組だったと言われたのだけど?」


「ええ、数日前はね。この子達はわたしの夢に感銘を受けて自ら協力してくれたの」


 楽しそうに笑顔を浮かべながらアルテリアは語る。


「嘘でしょ、それ。そいつら自我がないし、この数日で仲間になったにしては連携が達者過ぎる」


 澪にそう指摘されたアルテリアはますます笑みを深めて、8人に命令を出す。


「あの女を引き留めておきなさい、わたしの召使い(メネストレル)たち」


 メネストレルと呼ばれた8人は一斉に澪に襲いかかる。

 5人が澪に近づき残る3人は中距離から炎を澪に放ってくる。


(こいつらが人造吸血鬼、確かにこの数の吸血鬼に血の属性があるとめんどくさい。ていうか、早くきて欲しいんだけどねえアッシュさん)


 澪は内心で舌打ちする。当初風花の作戦では澪とともに彼岸で敵に対応するのはアッシュだった。アッシュから人造吸血鬼は彼岸から出られないと聞いた為、澪が彼岸にアルテリアを連れて行ってそこに現れる人造吸血鬼をアッシュが倒すという作戦だった。

 正直澪は病み上がりでなくともアッシュが人造吸血鬼を倒せるとは思っていなかったため、最初からアルテリアと人造吸血鬼をまとめて相手するつもりだった。しかし人造吸血鬼を倒せるとは思ってなかったが多少は敵の気を引くのにアッシュは役に立つとは思っていた為、彼岸に来てから5分以上たっても現れない彼に澪の不満がつのる。


(ちっ、風花様が協力を約束したから逃げるつもりはないけれど、まさか協力を約束した相手がこないとは。はあ。めんどくさい)


「あらあら、誰か待っているのかしら?男の人?」


 笑顔でそう言ってくるアルテリアを睨みつける澪だったが彼女の口ぶりが気になった。彼女は澪がアッシュを待っているのをわかっているかのように話してくる。


「そうね。わたくし、ここでデートの約束をしていたんだけど、彼が浮気性のようできてくれないの」


「あらあら、そんな男とは縁を切った方がいいわよ。どうせ自分では何も出来ないから他の人に頼るような男なんでしょう」


 やはりアルテリアは澪がアッシュを待っていることをわかっていた。


「そうね。だけれどわたくしの一存では縁を切れなくて困っているの」


「大丈夫よ。その子たちがあなたの代わりに切ってくれたから」


 その一言でアッシュがこちらに居ない理由を澪は察した。確かにスカイタワー前広場から少し離れた位置で戦っていたが、それでも澪が入ったすぐあとに彼岸に入っていれば1分もかからずに合流できるはずだった、それなのにアッシュが来ないということはつまり彼岸に来ていないか来て直ぐに敵に襲われたかの二択だった。


「殺したの?」


「それがその子たち彼がわたしの元婚約者だからって殺さないで置いてくれたのよ。いい子たちでしょう」


 2人が話している最中も澪にメネストレル達の攻撃が襲いかかり続けているが、澪はそれを歯牙にもかけずいなし続ける。


「全く優しいいい子たちね」


 皮肉たっぷりの澪の言葉を聞いてアルテリアの笑顔はますます深くなる。

 増援が来ないことがわかった澪は全力を出すことにした。風花の元に早く行きたいというのは本音だったが、アッシュが来るまでは敵をいなしてなるべく体力を温存しようとしていたがアッシュが来ないとなると話は別だ。

 澪は多少のダメージは無視して自分に接近していた1人のメネストレルの顔面を掴み全力で地面に叩きつける。澪の全力を叩きつけられた地面はくぼむ、叩きつけられたメネストレルの心臓をそのまま全力で踏み砕く。唐突な澪の攻勢にアルテリアも残るメネストレルも動揺した。その動揺の隙を逃さず澪は近くにいたもう1人のメネストレルの心臓を貫手で貫き頭を拳で砕く。

 そこまでにかかった時間は一分程度だったが、その短い時間でアルテリアは動揺から立ち直っており銀の武器を澪の足元から生み出して牽制する。


「2体だけか、あと1体はいきたかったんだけど」


 自分が作ったメネストレルを一瞬で2体も殺されたアルテリアから笑みが消えて澪を睨みつける。


「こんな一瞬で2体も殺しておいてもう1体もなんて欲張りすぎよ、日本人は慎み深い種族ではなかったかしら」


「案外脆くて拍子抜けしちゃってね。ついつい欲をかいちゃったの」


 馬鹿にしたような笑みを浮かべる澪を見てアルテリアは苛立つ。ただ流石に苛立ちのまま澪に向かってくることはせず、冷静に残ったメネストレル達に命令をくだし遠巻きに澪を囲む布陣をとる。


(自らがわたくしと戦って、残りの人造吸血鬼どもに援護させるっていう一番めんどくさいカタチにしたね。本当にめんどくさい。さっさと風花様の元に向かいたいってのに)


 澪が相手の対応に内心で文句をいっているとアルテリアの立っている側の地面が盛り上がってきた。地面から出てきたのは巨大な銀の球体で、直径は3メートル程もある。


(なるほどあれがさっきの魔法の正体か。いつの間にあんなでかい球体を地面に詰め込んでたかは疑問が残るけど、風花様のように自分から離れた位置に銀の武器を出せた理由はあの球体から触手のようなものを伸ばしてその先端部分を切り離してたわけね。風花様には全く及ばないまでも相当な魔力量、イルレイン家における風花様と言ったところかしら)


 澪がアルテリアの魔法について考察しながらもアルテリアに肉薄する。なるべく周りの攻撃がアルテリアにも当たる様にする為の立ち回りだ。

 アルテリアも澪が近づくのは分かっていたようで銀の球体から尖った触手を伸ばしてつかず離れずの位置をキープしようとする。

 2人が戦っているその間にも周りの吸血鬼から炎が放たれ続ける。澪を狙った炎がアルテリアに当たりそうになるが彼女の横にある銀球がそれを防ぐ。

 澪は7人の敵からの攻撃をいなすが突破口が見つからず、攻勢に転ずることができなかった。


(あの銀の球体まさかとは思ったけど、中身もぎっしり詰まっているようね。あれをどうにかするっていうのはわたくしにも無理。だからといってアルテリア本人を狙おうにも銀の球体から出る触手に邪魔される。はあ、ホントにめんどくさい)


 今の状況では自分には勝ち筋がないことを悟り澪はため息をつく。


(この状況を打開するには表の世界から誰か増援がきてくれるのを待つしかないか)


 貴族を相手にしている風花たちが澪の援護にきてくれるのを待つしかないが、貴族を相手にした後にそんな余力を持っているとは思えず、そんな3人を待つしかない状況、守るべき風花に頼るしかない状況というのに心底自分に落胆しながら澪は希望の小さい持久戦を始める。


――――――――――――――――――――――


 澪が持久戦の覚悟を決めた頃に丁度表の世界では風花のミサイルが炸裂していた。

 破壊の嵐が巻き起こったスカイタワー前広場だったがその破壊の嵐は広場の外には一切漏れず広場の中だけに収まっていた。これは風花がコントロールした結果だった。ミサイルの爆風も全て風花の魔力で出来ていて尚且つ風花の魔力コントロールの熟練度によっての神業だった。

 風花がコントロールした爆風だったが威力を抑えたわけではなく爆風の範囲を圧縮しただけなので爆心地である広場は見る影もなくなり、爆発の中心にいたジュリアーノもいくら最強の貴族でもミサイルの直撃を喰らっては原型も残らない、爆風が吹き荒れている為ジュリアーノがどうなったかは確認できない。

 ジュリアーノがどうなったかを確認するため風花は爆風を消し去る。さっきまでの爆風が嘘のように晴れるが、地面はまだ高熱を保っており先程までの爆風がどれだけ凄まじかったかをものがたっている。

 広場には何も残っておらずジュリアーノの姿もなかった。


「この程度で終わるなら、真祖にも私一人で勝てそうね」


 風花がボソリとそう呟くと地中から熱線が風花めがけて放たれる。それを風花は半歩横にずれるだけで避けて、熱線が出た地中に向けて魔法で作った手榴弾を投げ込んだ。その手榴弾の爆発を待たずして地中からジュリアーノが飛び出してきた。その発言だけは許せないと憤怒の表情を顔に貼り付けて。

 地中から飛び出したジュリアーノだったがその体はひどい有様だ。右腕は千切れて、体からは臓物がこぼれ落ち、顔の左半分も抉られていた。それでも風花を見る眼差しは凄まじく、普通の人なら睨まれただけで気絶してしまうだろう。しかし、覚悟が決まっている風花はジュリアーノを睨み返す。不意打ちには弱いが相手が強者だと知っていれば風花の心は動揺することはない。

 ジュリアーノと睨み合いながらも風花は追加の魔法を構築している。多種多様な銃が風花の周りに生み出され、傷を再生させないように波状攻撃を仕掛ける。

 目の前に数十丁の銃が生み出され銃弾が射出されるのをジュリアーノは冷静に見ていた。風花の発言に頭が沸騰した彼だったが、自分を滅ぼせる可能性が目の前に現れたため逆に頭が冷えたのだ。

 何百年も生きてきたジュリアーノにはそれ相応な回数の命の危険があった。大半は別の絶滅指定種によるものだがそれでも何度かは魔法使いによる命の危険があった。ここ百年ほどは命の危険とは無縁だった彼だったが、濃密な死の気配を前に冷静になったジュリアーノは巨大な熱線を全身から放出して風花の周りにあった銃を消し飛ばす。


「調子にのるなよ、人間!」


 ジュリアーノから放たれた熱線を風花は避けるが、熱線は繁華街の方にあるビルを何棟か貫通する。


「ちっ!コウモリ風情が私の街を!」


 風花は自分の街を傷つけられたことに怒り、ジュリアーノの周りに数十本の剣を作りだし一斉に襲い掛からせる。

 ジュリアーノはかわすが、剣は避けても追尾して彼にあたるまでは止まらなかった。何本かの剣がジュリアーノに刺さる。体の回復が追いついていないジュリアーノにとって深くまで刺さった剣は致命的で動きが鈍る。


「"紫電破城砲"!!」


「"白氷穿通槍"!!」


 風花のミサイル魔法の攻撃範囲から、逃れていた氷河とルカがジュリアーノに追撃を加える。

 ジュリアーノはその攻撃を避けることは出来ずどちらも直撃して、体の3分の2が吹き飛ばされ虫の息になる。

 ジュリアーノの状態を見て風花がダメ押しのミサイルを放つ。

 2発目のミサイルは威力を抑えていたが、瀕死の吸血鬼を滅ぼすには十分な火力だった。爆風があたりを包みこむ。

 そうして5分経ってから風花が爆風を晴らすとそこには傷一つないジュリアーノが立っていた。


「は!??」


 なぜジュリアーノが生きているのか全く理解できなかった風花は固まってしまう。その隙を逃さずジュリアーノが攻撃を仕掛けてくるが、氷河が作り出した氷壁によって遮られて、ルカが風花を抱き抱えてその場から離れる。

 あれほどの魔法をくらって無傷どころか全身が再生しているジュリアーノの様子に氷河とルカは動揺を隠せない。

 

「兄貴、あれどういうことっすかね。確かに自分の魔法直撃していたはずなんすけど」


「わからん!わからんしどうやら体力も回復しているみたいだぞ!確かによってたかって攻撃するというのは好みじゃなかったが、まさかあれほど追い詰めたあとに回復されるとはな!笑うしかないな!」


 氷河はそういって苦笑している。戦闘狂の雷家だったが、流石に追い詰めた相手が何事もなく復活すると喜んでいられないようだ。

 2人が話している最中、ジュリアーノは自分の体を確認していた。まるで自分の体がいきなり変化したような様子だ。


「なるほど。ジュっくんがここまで追い詰められるなんていつぶりかな。それも魔法使い相手なんて、ジュっくんぶちぎれてるだろうなぁ」


 いきなり口調が女性のようなものに変わり氷河は何が起こっているのか分からず固まるがルカは関係ないと言わんばかりの雷撃をジュリアーノに放つ。


「なんだかよくわかんないっすけど、ぶっ飛べ!」


 雷がジュリアーノに向かい体を貫く。しかしジュリアーノの体には傷一つなかった。服は焼け焦げているため確かに当たったが尋常じゃない再生速度で再生したようだ。


「ふーん、なるほどね。源一郎の子供か。それにそこの2人は雷神の家系ね。それでもジュっくんが遅れをとるとは思わないけど。まさか科学兵器を魔法で再現するとはね」


 独り言を言っているジュリアーノに向けて何度も雷撃を放つルカだが全く効いている様子がない。


「なんで効かないんすか!」


 自分の魔法が効いていないことに納得できないルカはジュリアーノを怒鳴りつけた。


「効いていないわけじゃないのよ。ただ俺(わたし)が今この肉体の核だから私(・)本(・)体(・)をどうにかしなきゃダメってだけで」


 聞いても意味がわからずルカはジュリアーノに向かって雷を放ち続ける。


「ジュっくんがやりたかったと思うけど、まあ子供の後始末は親の役目よね」


 ジュリアーノの体を乗っ取っている何者かはそう言って巨大な炎の球を作り出す。

 その炎の球に見覚えがあった氷河は急いでルカと風花を抱えてその場から離脱しようとするが間に合わない。


「"炎球・焔弾き"だったかしら」


 気の抜けた声とともに炎の球が爆発した。前にジュリアーノが放った時の数倍の威力の炎球はスカイタワー前広場だけでなく周りのビルも破壊する。攻撃範囲を抑えていないそれは風花のミサイル魔法の2倍の範囲を破壊し尽くした。

 その破壊を見ていたジュリアーノだったが何かに気付いて口が裂けそうなほど笑みを深くする。


「へえ、あなたの魂の気配は全く感じなかったのだけど、どうやってここまできたの?雫」


 ジュリアーノの目の前、氷河たちを庇うように立っていたのは人類最強の魔法使い雨守 雫だった。


 

前回の後書きで風花の魔力が特別だから遠隔で魔法を構築できると書きましたが、それなら最初に戦った時のアルテリアがルカとエリスを囲った時のあれはなんなんだよと思った人もいると思います。

アルテリアのあれは自分の手元で魔法を構築してそのまま相手の周りに配置して時間がくれば自動的に射出されるという感じだったと後付けさせてください。

作者の頭が悪すぎるため頭の悪いバトル展開やストーリーになっていますが、どうかお付き合いいただけたら幸いです。

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