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魔女と俺の絶滅戦争  作者: あまあま
絶滅指定種『吸血鬼』
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10/28

スカイタワー決戦③

今回は彼岸の戦いです。雫の戦いはもう少し後になります。


 雫がジュリアーノと対峙した時丁度彼岸でも動きがあった。

 6体の人造吸血鬼プラスアルテリアと戦い続けていた澪だったが、疲れによってできた隙をつかれて銀の触手により右脇腹を貫かれる。


「ぐぅぅっ」


 低いうめき声を出し倒れかける澪だったがなんとか持ち直して、トドメを刺しにきた吸血鬼の頭を左腕を振ることで吹き飛ばしそのまま心臓を蹴りで貫く。なんとかもう一体人造吸血鬼を滅ぼした澪だったがそこが限界だった。

 体力の消耗に加えて脇腹を刺された状態で激しい動きをしたことによる出血もかなりあり意識が朦朧としてしまった。


(まさか、あの愚弟よりも先に死ぬことになるとはね。風花様申し訳ありません、澪はここまでのようです)


 澪が死を覚悟した次の瞬間だった。


「ブラスター!」


 どこからか放たれた光線がアルテリア達に襲いかかるがアルテリアが銀球を使って光線を防ぐ。しかし、その間に澪をエリスが抱えてそのまま光線が放たれた場所に移動する。

 澪は意識が朦朧としながらも自分を助けた人が誰かわかっており、苦虫を噛み潰したような顔をしている。


「ええっと、澪さん…アタシなんかしちゃったか?」


「あ、ごめん。助かった。この顔はあなたにしているわけではないの」


「そ、それならよかった」

 

 澪がエリスに弁明している間にエリスが光線の放たれた場所に着く。そこに居たのは澪の想像通りの人物だった。


「おいおい、愚妹。なに死にかけてんだ」


 蓮は澪の姿をみてニヤニヤした笑顔でそういってくる。その薄ら笑いに隠された感情を知っている澪は何も言おうとしない。


「そんな様子じゃあ風花の護衛は俺一人で十分か?」


「そんなわけないでしょ愚弟。わたくしこそが風花様の護衛に相応しいわ」


 売り言葉に買い言葉といった様子で澪が蓮に反論する。自分に反論してきた澪を見て蓮はホッと息を吐く。


「なんだ元気だな。だけどあいつらの相手は俺に任せてもらうぜ。久々だから風花の役に立たないといけないしな」


「ふん。好きにしたら。母(かか)様に鍛え直されたあなたの実力をわたくしが測ってあげる」


 蓮は澪の言葉を聞いてアルテリア達のもとに向かう。30メートルほど離れていた距離を一息で詰めて人造吸血鬼の一体を殴り飛ばす、そのまま戦闘が開始された。

 蓮がアルテリア達の方に行ったのを見届けて澪はエリスに質問する。


「あなた達は一体どうやってここまで来たの?雨守家からこの街まで相当な距離があるけれど」


「えっと、確か師匠とゆうごって人が魔法を使って、彼岸にある天風家に一瞬でこれたんだよ」


 ゆうごという名前を聞いて納得する。確かにあの魔法使いと母が力を合わせたら瞬間移動の真似事くらいは出来るだろう。


「なるほどね。ならもう一つの質問現状をどこまで理解してる?」


「表にあるスカイタワーが炎に包まれてるっつうのをテレビで確認しただけで、全くだ」


「ならかいつまんで説明する」


 澪が自分たちの作戦とそれに伴いアッシュもこっちにいるはずだがいないことも話した。アッシュがいない理由も向こう側が言っていたことだが話す。アッシュがどうなったかを知ったエリスの顔が曇る。


「そうか。兄さんはもう」


「あいつらが言っているだけだから、わたくしもアッシュさんがどうなったかは確認できていないわ」


「いや、この後に及んで希望的観測は出来ねえさ」


 そういってエリスは自分が何をすればいいか澪に指示を仰いでくる。


「母様は表にいるのよね」


「ああ」


「なら、あなたは人造吸血鬼を何体か受け持って。流石に蓮でも7対1じゃあ分が悪いし。わたくしのことは気にせず早く援護してきて」


 そう言われてエリスは蓮の援護に向かった。

 

 蓮と戦っているアルテリアだったがかなり苦戦している。右腕に幾何学模様が浮かび上がっている蓮に通用する攻撃がなかったからだ。人造吸血鬼の炎も蓮には軽い火傷以上の手傷が負わせられず、アルテリアの銀の触手も蓮の体を貫通させられず、蓮を近づかさせないように戦うしかない。

 戦場を変えながら戦い続けているアルテリア達と蓮だったが、苦戦しているのは蓮も同じだった。最初に吹き飛ばした人造吸血鬼も既に再生しており、頭であるアルテリアを倒そうにも6体の回復する肉壁がいるため近づけない。澪と同じでつかず離れずの位置にいられると決定打が無くなるのが蓮の欠点だった。


「くそっ!啖呵を切った割には結局すぐにぶち殺さないし、今の俺クソダサくないか?」


『まあ、くそダサいわね。澪ちゃんが傷つけられて頭に血が上ってたのはわかるけど、せめてどう戦うか考えてから飛び出して欲しかったわ』


「わかってるよ。ああ、くそ。移動しているから澪に見られてないだけましか」


 ドロシーと蓮は言い合いをしながらも戦い続ける。アルテリアと人造吸血鬼は中距離から攻撃を繰り返し、蓮を近づけさせない。


『どうするの?ブラスターする?それともオーバードライブ?』


「新婚みたいなやりとりだな。だがどっちも却下だ。ブラスターじゃあいつらを滅ぼすには火力不足だし、オーバードライブで対処するには数が多い」


 決め手にかける蓮にはどうしようもなかった。そう思っていたその時、助けがやってくる。


「アタシが2体受け持つ!」


 銀の大鎧を纏ったエリスが人造吸血鬼の1体を吹き飛ばし、近場にいたもう1体を鎧から伸ばした銀の鎖で縛って最初に吹き飛ばした1体の元に連れて行く。

 エリスがアルテリアから最も離れていた人造吸血鬼を連れて行ってくれたおかげで、蓮からアルテリアへの勝ち筋が生まれる。


「ナイス過ぎるぜエリス!行くぞドロシー!」


『ええ!属性は?』


「風で頼む。オーバードライブ!」


『"風(ウィンド)"』


 蓮の体の内側に魔力が巡り、その身体に風を纏う。

 風を纏った蓮は今までと比べものにならない速度でアルテリアに近づく。その様子を人造吸血鬼たちは黙って見ていることはなく、蓮とアルテリアの間に立ち塞がろうとする。しかし風を纏った蓮は手刀をつくり人造吸血鬼たちの身体を切り裂く。

 1体目は右手で心臓を貫き、そのまま風を纏って切れ味がよくなった手刀で頭まで切り裂く。

 2体目は左手を爪をたてる形にしてそのまま振り抜き、心臓と頭を含めた身体の大部分をズタズタにされる。

 3体目は、先に2体を対処していて時間が生まれたため、収束した熱線を蓮に向かって放つ。その熱線は常の蓮の身体であったなら皮膚を貫き肉まで届くほどの熱だったが、風を纏った蓮に弾かれる。そのまま蓮は左足で蹴りを放ち心臓を切り裂き、蹴りの勢いを殺さず体を一回転して右足による後ろ回し蹴りを放つ。

 最後に残った4体目はアルテリアのそばから離れずその身を盾にしようとしたが、蓮の手刀により首を切られ心臓を貫手で貫かれる。切られた首を掴んだ蓮はそれをアルテリアに向かって投げつける。投げつけられたアルテリアだったが、銀球から盾を作り出して防ぐ。4体目の頭は銀の盾にあたり砕け散った。

 この間15秒ほどの出来事だったが、一部始終を目にしていたアルテリアの顔に絶望が張り付く。


『あと5秒』


「十分だ!」


 アルテリアは空中に飛び退いて銀球の中に逃げ込むがそれを蓮は許さない。空中を蹴り加速してその勢いを殺さず右拳から魔力を発して殴りつける。


「インパクト!」


 拳の威力プラス魔力の衝撃波によりアルテリアの銀球が弾ける。そのまま中に逃げ込んだアルテリアの顔を掴んで地面に投げ落とす。

 地面に衝突したアルテリアは頭から血を流し、手足の半分が折れていた。そんな彼女は信じられないものを見たような顔をして、降りて来た蓮を見上げる。


「う、嘘でしょ。ジュリアーノにも破られなかったのに」


「じゃあ、俺の方が強かっただけの話だろ。そのままそこで寝てろ。お前には色々聞きたいことがあるからな」


 それだけ言って蓮はエリスの援護に行こうとするが、それは銀色の炎によって止められる。


「はぁ!?」


 これ以上敵が来ることはないとふんでいた蓮はまた現れた敵に驚き、その姿を見てもう一度驚かされた。


「アッシュ?!」


 蓮を襲ったのはアッシュだった。そのままアルテリアの元に来た彼には右腕があり彼女を庇うように蓮に相対する。


「何のつもりだ!アッシュ!お前、そこに立つっつうことは殺される覚悟があるんだろうな!」


 蓮からの言葉に何の反応を示さず、アッシュはアルテリアに向かって優しく話しかける。


「アルテリア、わたしたちの夢まであと一歩だ」


「ああ、アッシュ!よかった。これでわたしの薬は完成したのね」


「これが僕の血から抽出した最後の薬だ。今飲むと彼に対処できなくなるから離れてから飲んでくれ」


「なんの話をしているんだ!」


 アッシュ達の元まで近づいた蓮は地面に倒れているアルテリアの頭を足で踏み砕こうとするが銀の炎に阻まれる。銀の炎は質量を持った炎で燃え盛りながらも物理的な壁となって全てを遮る。


「アルテリア、君はもう逃げろ。わたしたちの夢を叶えてくれ」


「ええ、ええアッシュ!必ず!」


 アルテリアは銀の球体の中に入りそのまま彼方へと飛んでいく。


「逃がすか!」


 後を追おうとする蓮だったが銀の炎がドーム上に蓮の周りを包み込む。


「蓮、ここまでだ。彼女の後は追わせない」


 敵対する意思を隠そうともしないアッシュに蓮の怒りが沸騰しそうになる。


「てめぇ、ぶち殺『蓮!』!」


 ドロシーの声が聞こえて蓮は少し冷静になる。怒りは収まらないが聞く耳は持ったようだ。


『あなた、オーバードライブを使ってもう肉体が限界でしょう!これ以上戦うことなんて出来ないでしょ!』


 蓮のオーバードライブはドロシーに溜め込んでいた魔力を体内に直接流して、ただでさえ常人離れした蓮の肉体性能を5倍ほどに高めるものだが、人間(魔法使いも含めて)の肉体には魔力を物理的に流す経路など存在しない。その為、もともと肉体にある血管や神経を通して魔力を流すが、異物である魔力をなんの代償もなく流せるはずもなく効果時間に応じた損傷が発生する。

 今回蓮がオーバードライブを使った時間は20秒だけだったが、それでも蓮の肉体は立ってるのもやっとなほどの損傷があった。


「関係ねえ!こいつは風花を裏切ったんだ!ぶち殺す!」


『蓮!』


 風花を裏切ったアッシュを許せず、蓮は無謀な攻撃を仕掛ける。それをアッシュは銀の炎で形作った剣で迎撃する。


「"銀の炎剣(レーヴァテイン)"」


 数十秒ほど戦った2人だったが、結果は火を見るより明らかだった。蓮の全身は銀の炎剣により切り裂かれ焼かれ地面に倒れ伏す。


「クソが!」


『蓮!もう私が出る!』


「やめろ、ドロシー!俺はもう負けたんだ。だから後は頼むぞエリス」


 巨大な銀の獣が銀炎のドームを突き破りアッシュに襲いかかる。それを銀の炎剣で受け止めるも質量差でアッシュは吹き飛ばされる。

 その巨大な銀の獣は、エリスが雫に一発入れる為に考案したもので結局一発入れることはできなかったが、その方向性はいいと雫に褒められた魔法だ。

 アッシュを吹き飛ばしたエリスは蓮の方を見ずにそのままアッシュの方に向かう。


『あの子に任せるの?もしあの子も裏切っていたらどうするの?』


「あいつは裏切ってないさ。自分の一族の仇を討つっていうモチベーションでもないと雫母さんの修行に素人がついていけないしな」


 蓮の元から離れたエリスはアッシュと向かい合っていた。


「兄さん…本気なんだな。本気でアタシと戦うんだな!」


「お前がアルテリアを追うというのならな。どうだエリス、わたしたちと一緒に永遠に生きないか?もう薬は完成目前なんだ」


「いつからだ!いつからアイツに協力していた!?」


 エリスは泣きながらアッシュに問いただす。


「いつから?そんなの最初からに決まっているだろう。彼女とわたしは同じ夢に向かっているんだから」


「じゃあ、一族が滅んだ時にアタシを助けた時もか!」


「ああ、そのことか。お前を助けた理由は被験体が欲しかったからだ。アルテリアに近い血族のものに適合すればその薬は彼女にも適合する可能性が高いからな。だがまさかわたしが被験体になるとは思わなかった。ジュリアーノにわたしのことは言ってなかったとはいえ数日気絶させられるとは思わなかったよ。まあ結果オーライだ」


 自分を助けてくれた心優しい兄が虚像だったと知りエリスは言葉を失う。そんなエリスにアッシュは話しを続ける。


「お前がきてくれれば彼女も喜ぶ。お前はアルテリアに特に懐いていたからな。さあ一緒に永遠を生きよう」


 アッシュの言葉を聞きエリスの心は一つの感情に支配される。


「黙れ…魔法使いの誇りを忘れ、ただ永く生きようとするお前達の言葉なんてアタシには雑音だ。これ以上生き恥を晒す前にアタシがお前達を滅ぼしてやるよ」


 エリスに残ったのは憎しみだった。自分が慕っていた2人が醜悪な精神を持っていて自分を裏切った憎しみがエリスを支配する。

 銀の獣がエリスの憎しみに応じて姿を変えていく。巨大な狼の様な姿だったものが体中から刃物のようなものを生やす。

 エリスの言葉を聞いたアッシュは呆れていた。


「魔法使いの誇りだと?30にも満たない年で死ぬことか?それとも何も出来ない人間(クズ)たちの盾になって死ぬことか?本当におめでたい頭をしている。洗脳ここに極まれりだな」


 アッシュも怒りを滲ませて銀の炎剣をもう一振り作り出す。2本の銀の炎剣を構えエリスと相対する。

 血を分けた兄妹の血で血を洗う悲しい決戦の火蓋が切って落とされる。



アッシュとエリスの戦いも書きたかったけどちょっと文字が多くなりそうだったのでやめました。次の話にアッシュとエリスの戦いを書いて、その次の話に雫の戦いを書いてスカイタワー決戦は終わります。

次の話は多分少ない文字量になると思います。

追伸

最近のソシャゲのガチャ運が悲しすぎる

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