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魔女と俺の絶滅戦争  作者: あまあま
絶滅指定種『吸血鬼』
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7/28

雨守家にて

めっちゃ致命的な間違えしてたから直しました。

 蓮とエリスが雨守家の屋敷にきて5日目の夜を迎えていた。

 雫との修行はシンプル極まりない内容だ。それは雫との組手である。どんな手段を使ってでもいいからひたすら雫との組手をするとういもので1日100本行われている。2人の背中が床につく、もしくは雫の背中が床に着いたら一本となる。

 蓮とエリスは2人がかりで雫に挑み続けるが一度も一本をとれていなかった。


「生きてるかー。エリス」


 道場の床に仰向けになりながら自分よりもボロボロになっているエリスに話しかける蓮。

 エリスは息も絶え絶えになんとか言葉を絞り出す。


「な、なんとか。もう5日目なのにあの人から一本も取れねえなんて…」


「それが普通だ。雫母さんは腐っても人類最強の魔法使いだからな。むしろあの人と5日も組手をして、骨も折ってない自分を褒めるべきだぜ」


「腐ってもって、まだ私は腐ったつもりはないのだけれど」


 二人の会話に割り込んでくる声があった。


「エリスちゃん。そこの愚息の言う通りよ。この5日間あなたは私を相手に目立った外傷もなく戦え続けているのよ。反省の前に自分を褒めてあげないと不公平だわ」


 そういって雫はエリスのことを褒める。事実たった5日で雫の動きに対応しつつあるのでエリスは天才と呼ぶにふさわしい程のことをしているのだ。

 しかし、エリスの顔は晴れない。エリスは雫の攻撃を見て避けれるようにはなったが、蓮は雫の攻撃に合わせて自分も攻撃を仕掛けているからだ。

 


「だって、蓮は師匠に攻撃できてるのによ、アタシは避けるので精一杯なんだぜ」


 言うつもりがなかった言葉がエリスの口から出てしまう。

 それを聞いて蓮は呆れた。


「お前なぁ、俺はここで十年修行してるんだぞ。そんな俺がお前と同じことしかできなかったら殺されちまうよこの人に」


「その通りね。もし蓮が私の攻撃を避けることしかできなかったのなら勢い余って殺しちゃうかも」


「な?だからお前は自分を褒めりゃあいいんだよ」


 エリスはまだ浮かない顔をしているが、いつまでもウジウジしていたらダメだと自分に喝を入れた。

 そのエリスの顔を見てもう大丈夫と判断して雫は一旦道場から出て行った。


「ありがとよ。そういえば聞きたいことがあるんだけど、なんで蓮は魔法を使わないんだ?」


「あれ?言ってなかったっけ?」


「聞いてねえな」


 この5日間エリスは銀魔法を使わず身体強化魔法だけを使って雫と戦ってきたが、蓮からは一度も魔法を使った気配がなかったため彼女は疑問に思っていた。


「まあ、隠してることじゃないしな。俺は魔法が使えないんだよ。魔力がなくてな」


「は?魔力がない?なんで?」


 魔力とは魂がある限り生み出される力であり、つまり生きている物は多少なりとも魔力を持っている。


「えーっと全く無いわけじゃないんだけどただ魔法を使う為には全然足りないんだよ。」


「ふーん。お前の魂の質が悪いのか?」


「なかなかひどいことを言うなお前は。自慢じゃないが俺の魂の質は極上らしい、もう一人の母親がそう言ってたし」


 もう一人の母親という気になる言葉が出てきたがまずは魔力がない理由をエリスは知りたかった。


「じゃあなんで魔力がないんだよ」


「もう一人の母親いわく俺の魔力はどっかに流出してるらしい。で、俺本体にはその残り滓しか残らないんだと」


「あれ?お前彼岸で戦ってた時魔法使ってなかったか?」


 蓮は彼岸でジュリアーノと戦っていた時に衝撃波のようなものを右手から出していた。エリスはアルテリアとの戦いで足手まといになってたから、ジュリアーノの方に加勢しようとした時にそれを見ていた。


「なんだ見てたのか。あれはこの右腕の力だ。最初にここで修行する時に言っただろ、俺の右腕は"魔女の作品(ウィッチクラフト)"だって。こいつに俺は残り滓の魔力を蓄えてんだよ」


「なるほど。魔力を蓄えるとか"魔女の作品"はやっぱすげーな」


「それだけじゃないぜ。ドロシーは蓄えた魔力を増幅させることもできるんだ。まあ蓄えた時点で俺の魔力じゃなくなってるから俺には魔法は使えないんだけど」


「へえー。じゃあなんでお前の体あんなに頑丈なんだ?魔法で肉体を保護出来てないんだろ」


「あれもドロシーのおかげさ。俺の体がドロシーに適応したから肉体性能は雫母さんくらいあるんだぜ」


 そう言われてエリスは驚くと同時に納得した。蓮は確かに自分よりも長く雫の修行を受けてきた、しかし彼はエリスよりも苛烈に授業中雫から攻撃されていた。それなのに自分よりも生傷が少なかったのはそういう理由があったからだ。


「なるほど。もう一つ聞きたいことがあるんだけどよ、お前のもう一人の母親って誰だ?嫌なら教えてくれなくてもいいけど」


 蓮との会話で度々出てきたもう一人の母親についてもこの機会に聞いておくことにした。


「うーん、別に言ってもいいんだけどな。あの人結構有名らしいから黙っておいてくれるか?」


「わかった」


 エリスが蓮の目を見て答える。


「ありがとう。もう一人の母親はドロテアっていう魔女だ。」


「はああああ!?どどど、ドロテア!?ドロテアってあの"原初の魔女"の!?」


「おう、そのドロテアだ」


 エリスは疲れ切っていたとは思えない大声で叫ぶ。


「昔、右腕を失ったらしい俺を拾ってくれたのがあの人だったんだよ。ドロシーもその時つけてくれてな」


 エリスはドロテアが蓮の母親という衝撃的な情報を聞き、それ以降の話は頭に入ってこなかった。

 エリスの頭が混乱の極みにある時に雫が道場に戻ってきた。


「戻ったわよー。あれエリスちゃんなんで頭抱えてるの?」


「ドロテア母さんについて話したらこうなった」


「なるほどね。欧州の出身だから魔女についても教えられてるわけね」


 エリスの様子に納得した雫は、混乱している彼女を風呂に入れる為に襟首を掴んで連れて行った。

 一人道場に残された蓮は久しぶりにドロシーに聞きたいことがあったのを思い出して彼女を起こすことにした。


「起きろドロシー」


 声をかけると蓮の右腕に幾何学的な模様が浮かび上がり姦しい女性の声が聞こえてくる。


『うーん久々にゆっくり話せるわねぇ蓮。あなたがワタシを戦闘じゃない時に呼び出すなんて何年振りかしらねえ?』


 嫌味ったらしくそう言ってくるドロシーに蓮は言葉を返す。


「いや、だってお前の声俺以外に聞こえないじゃん。なんでもない時に呼んだら独り言がヤバい人になるじゃんか俺が」


『それくらいどうでもいいでしょ。ワタシが楽しむ方が重要よ』


「はあ。嫌な姉だな」


『最高の姉でしょうが。こんな美人の姉がいっつも側にいるあなたが羨ましくてしょうがないわ』


 いつも通りのドロシーにやっぱり黙らせようかなと一瞬思った蓮だったが、聞きたいことがあるからそれだけは聞いておく。


「あー。はいはい。そんな最高のお姉様に聞きたいことがあるんですが。いいですか?」


『ええ!構わないわ。この世界最高のお姉様になんでも聞きなさい』


「じゃあ、なんでお姉様はあの吸血鬼を知ってたんだ?お姉様が俺の右腕になってから俺はあんな奴に会ったこと無かったのに」


 吸血鬼の貴族ジュリアーノと戦った際にドロシーは彼のことを知っている口ぶりだった。ドロシーと人生の大半を一緒に過ごした蓮はジュリアーノとはまったく面識がなかったにも関わらずだ。

 そのことがずっと頭の片隅に引っかかっていた蓮はドロシーに問いただす。

 それを聞いてドロシーはばつの悪そうな雰囲気をかもし出した。


『あーっと…ごめんなさい蓮。その事はドロテアお姉様から口止めされてるの。それ以外に何か聞きたいことはないかしら』


 まさかの返答拒否だった。しかもその理由がドロテアだと聞き蓮は渋々違う質問をする。


「なら、ドロシーが知っているあの貴族についての情報はどうだ」


『オッケー。それなら答えられるわ』


 そこからドロシーが知っているジュリアーノの情報を教えてもらった。

 ジュリアーノは吸血鬼の中でも最強だということと最初に真祖に血を吸われた吸血鬼だということを教えてもらった。

 案外知っている情報が少なくて、若干がっかりしている蓮にドロシーは知っている限りの吸血鬼の情報も教えてくれた。

 弟をがっかりさせたままでいさせたくない姉の意地だった。


『吸血鬼は真祖と貴族と雑魚吸血鬼の3つに分けられるんだけど、実は真祖と貴族の間にもう一つの階級があるのよ。大貴族って言って、貴族が真祖に血を吸われて生まれるのに対して大貴族は真祖から血を与えられて吸血鬼になったやつのことをさすの。でも階級が上だからって大貴族は貴族に対しての支配権は持たないんだけれどね』


「じゃあジュリアーノは大貴族より弱いのか?」


『それは違うわ。あいつは真祖の懐刀だもの。どんな吸血鬼それこそ真祖よりも強いわ』


 真祖よりも強いと聞いて蓮は驚愕と安心を同時に覚えた。

 驚愕はそんな真祖の腹心がこんなところにいることに対して、安心は貴族の全員があのレベルの強さではないことに対してだ。


「そうなのか。なんでそんな奴がこの国にきたのかは疑問だが、あいつを滅ぼせれば他の吸血鬼連中はあんまり怖くないってことだな」


『それはどうかしらね。あいつは最も古くて強いけど他の貴族連中も最低百年は生きてるし、どいつもこいつも厄介なのは変わらないわよ』


 ドロシーに自分の考えを正され確かになと蓮は納得した。

 ドロシーに聞きたいことも聞き終わった蓮に道場の入り口から声がかかる。


「お風呂上がったわよ蓮。ドロシーちゃんと話してたみたいだけど冷めないうちに入っちゃいなさい」


 雫から風呂が空いたと聞いて蓮はドロシーを眠らせ道場を後にした。

 そのまま雫の横を通り風呂に向かおうとする蓮だったが雫が話しかけてきた。


「蓮、あなたとエリスちゃんは一旦明日風花様の元に戻りなさい」


「なんで?雫母さんが修行を途中で取りやめるなんて、明日は槍でも降りそうで怖いんだけど」


「私としても本意じゃないわ。ただ、風花様からアッシュさんが目を覚ましたって連絡があったから、エリスちゃんの顔は見せたほうがいいでしょ?」


 アッシュが目を覚ましたと聞きホッとする蓮。

 ジュリアーノと共に戦った仲なのでこのまま死んでは寝覚めが悪いと思っていた。


「りょうかい。だけどなんで俺まで?いつもの雫母さんだったら、あなたには関係ないでしょうっていってたのに」


「その通りね。今回は風花様にあなたも帰ってきて欲しいと言われたからあなたも一緒に帰ってもらうのよ」


「風花…さまがそんなことを?」


「久しぶりにあなたに会いたいんでしょう」


 雫は風花の恋心を知っていた。蓮のことは愚息といつも言っているが自分が手塩にかけて育てた愛する息子なので、風花が蓮に矢印を向けていると知った日は普段全く飲まないお酒を酔うほど飲んだ。

 風花に対しても見る目があるなと感心していた。しかし、矢印を向けられている蓮本人は風花に対して重めの想いを持っているがそれは決して恋愛感情ではなく、あくまで主従的なものであると知って辟易とした。

 何より蓮は風花からの好意に気づいていないわけではないがそれを従者に対する信頼と受け取ってしまっている。その事実を知った時も自分の息子の朴念仁ぶりにお酒を朝まで飲んだ。

 今回の風花の帰ってこいという催促も恋心からくるものであったため雫は蓮を帰すことを決定した。

 雨守 雫は全くそんな態度を子供に見せないが案外子煩悩なのだ。


「まあ、確かに。あの愚妹が頼りにならないって気持ちはわかるしな」


 またこいつは馬鹿なことを言ってるなと雫は思っているが口に出さない。ただ、蓮と澪の不毛な争いがまだ続いていることには口を出した。


「あなた達…まだどっちが兄か姉かでもめてるの?どっちでもいいでしょうに」


 蓮と澪は同い年であり蓮の誕生日がわからない為どちらが兄か姉かは決まっていない。雫からしたら心底どうでもいいことだが、2人にとっては重要なことのようでしばしば言い争いをしている。


「どうでもよくない!あいつが俺の姉なんて認められない。俺が兄貴なんだ」


 よくわからないプライドを持っている蓮のことはもう無視して、雫は自分の話したいことだけ話す。


「とりあえずそういうことだから明日の昼頃にあなた達を風花様の屋敷に返すから、それまで修行してもらうからね。ちゃんと明日も早起きしなさいよ」


 それだけ言って雫は屋敷に戻っていく。

 蓮も正気を取り戻し風呂に入りに屋敷に戻っていった。


――――――――――――――――――――――


 蓮が風呂に入りに行った時と同じころ彼岸には2つの人影があった。


「ようやく揃いました、人造吸血鬼8体。考えてたよりも多くなりましたけど、いっぱい居て困ることもないしいいですよね」


「どうでもいい。で、今からあいつらを誘き寄せるのか?」


「もう深夜ですし多分誘き出せませんよ。前見たところ学生が多かったし寝てるでしょう」


「じゃあ明日やるのか」


「はい!明日の朝にやりましょう。日光に当たってもらうことになりますが大丈夫ですか?」


「誰に言っている。俺を雑魚と一緒にするな。日光ぐらいいくらでも浴びれる」


「さっすが貴族様、再生力もすさまじい。じゃあ、今日は寝ましょう」


「俺に睡眠は必要ないんだが」


「必要なくても寝ましょう。睡眠は精神のリセットボタンですよ」


「ふん」


 2つの人影は彼岸から姿を消した。


 翌日の朝、天風市のシンボルである巨大な電波塔が炎に包まれた。




ドロシーの声は基本的に蓮にしか聞こえません。ドロシーが他の人に伝えようと思ったら内蔵してある魔力を音波に変えて話すことも可能ですが。

アルテリアが支配できるのはイルレイン家が代々高めてきた銀魔法のみです。身体操作魔法のような基本的な魔法は支配できません。

魔法使いは基本的に自分の魂にあった魔法を使います。そして魔法は使えば使うほど魂にその魔法をうまく使いこなす癖のようなものがうまれます。だからイルレイン家のような魔法使い一族は一族が同じ魔法を得意な魂になります。

最後の電波塔は気にしないでください。何かしら派手な建造物が欲しかったから急に生えてきたものです。次話で壊します。

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