魔都 京都⑩
次の話から戦闘はしばらくないと思います。
突如現れた銀髪の女性に蓮は困惑する。
(誰だ!?この女!?アルテリアやエリスみたいな銀髪だが顔は全然違うぞ)
困惑する蓮とは真逆に鬼門は目の前に現れた銀髪の女を見て感涙している。
「ああ!やっとお戻りになられたのですね、御前様!」
御前様という言葉を聞いて蓮は銀髪の女が誰かを悟るが困惑はますます深くなっていった。
(御前様だと?ポン太からは先代の彼岸の主は亡くなって代替わりしたって聞いてたぞ。偽物?いやあいつのあの態度からして本物か?)
蓮の困惑をよそに鬼門は神狐御前に話しかけ続ける。
「よかった!あの女は約束をちゃんと果たしてくれたんだな!貴女が生きていてくれればあんな小娘に忠義をはらう必要ももうなくなる!」
鬼門は瀕死にも関わらず喜色満面の顔で神狐御前に話しかける、しかし神狐御前の表情はかなり険しい。それにも気づかず鬼門は嬉しそうに話し続ける。
「貴女がいなくなってから私は生きる意味を失っていました。しかし、あの女が現れたことで一変したんです。貴女に復活の可能性があると聞いて忠実な貴女の友としてそれを叶えるために邁進してきました」
語り続ける鬼門は自身が瀕死であることも忘れているようだった。
神狐御前は鬼門の話を聞いている時もその表情は険しいままで、小娘という単語が出てきた時は憎悪の色さえ滲ませていた。
「もういい」
絶対零度の声が響く。
神狐御前の周りの空間が歪んでいく。
「妾の事を思ったつもりでお前は魔都に敵を入れて妾の娘を危険に晒したと言うんだな」
神狐御前は怒りのあまりに彼岸の構造を歪めてしまう。天地が反転し、魔都の建造物はひしゃげ巨大なゴミと化していた。
「仕方ない事だったのです!あの小娘に貴女の後継は荷が重すぎた!五行姉妹と翁が甘やかしすぎた結果、あの小娘には魔都の主になりうる力がなかったのです!」
自らの意見を主張する鬼門に神狐御前はゴミを見るような目で言葉をかける。
「妾はあの子のことを頼んだと言ったはずだ。お前は妾の尻尾から生まれた存在だから妾の遺志を叶えてくれると思っていたんだが、がっかりだ」
敬愛する神狐御前から失望されて鬼門は慌てて言い訳をする。
「た、確かに貴女からあの小娘のことを任されましたが、あの小娘では魔都を治めるには力が足りていませんでした。だから私は魔都のために貴女の復活を果たしたのです」
鬼門の言い訳を一通り聞いた神狐御前は俯き体が震えている。彼女は自身の中に燃え盛っている怒りをどうすればいいかわからなかった。
数秒ほど俯いていた神狐御前は顔を上げるとそこには笑みがあったがその笑みは貼り付けた様な冷たいものだった。
鬼門は神狐御前の笑顔を見て自分の意思が通じたと喜んでいるようだった。
「妾が間違っていた。ああ、妾が間違っていたよ鬼門」
「わかってくださったのですね、御前様」
「ああ、よくわかったよ妾は生み出すべきものを間違えた」
「はい!あんな人間の魔法使いなぞと子供を作ったのがそもそもの間違いだったのです!御前様はただそこにいるだけでよいのです。私が貴女をどんな脅威からも守るのですから」
噛み合ってない会話が続く。
蓮はその会話を当事者ではないのに、いや当事者じゃないからこそ冷や汗を流しながら聞いていた。
(おいおい、あいつ神狐御前が怒ってるのがわからねえのか!?ていうかあんなアホだったのか?戦ってる最中はあんなアホじゃなかったはずだが)
そんなことを思っている蓮を無視して2人の会話は続く。
「貴女が生きている限りこの魔都は不滅です。私は貴女の尻尾から生み出された身として貴女のために動いていたのです」
「いつ妾が不滅なんか望んだ!!」
恐ろしい剣幕で鬼門を問い詰める神狐御前。彼女にとって不滅という言葉はそれほど許せない言葉だったのだ。
「お前は妾の尻尾から生み出されたから知ってるはずだよな!?妾と同じ妖怪はもうこの世にはいないって事を!妾がこの500年どんな思いで生きてきたのかを!妖達が妾の友の姿を元に作られたって事も!妾はあの魔女に縛られていた、彼岸を安定させるための楔として利用されていた!自害も許されずに!そんな妾を救ってくれたのが黄金だ。人間との子供だったから彼岸に縛られる事もなく、妾もあの子を産むために自分の持てる力を全て使った。そうしてやっと妾は死ぬことが出来た。それなのにまさか妾の尻尾に裏切られるとは思わなかったよ」
神狐御前のまくしたてるような勢いに鬼門は何も言えないでいた。
蓮も彼岸の主だった存在が自らの死を望んでいたという事実に言葉を失っていた。
「お前を生み出した事は妾の一番の失敗だったよ。だからもうその失敗を終わらせよう」
鬼門に向かって歩く神狐御前。
「あ、貴女が死にたがってたなんて嘘だ!貴女は魔都に住む私達のために生きていたはずだ!」
自身の運命を悟った鬼門は神狐御前の情に訴えかけるように言葉を紡ぐ。
しかし神狐御前は鬼門の言っている事を無視して鬼門のそばまで歩み寄る。
「ああ、妾にとって魔都に住む妖達は大事だ。妾の旧い友を模した姿をしていたからな。だけどそんな奴らもお前が裏切ったから誰一人として生きていないんだろ?」
鬼門の目前についた神狐御前は最後に語りかけるように鬼門に告げる。
「妾にとってお前は友だったよ、妾の500年の孤独を埋めてくれた。だからこそ許せない、そんなお前が妾の心を何一つ理解出来ていなかったことが!だがそれもお前を生み出した妾の失態だ、だからお前はもう妾の尻尾に戻れ」
鬼門の姿が光の粒子となって神狐御前に吸い込まれて神狐御前の尻尾になる。そうして鬼門の姿がなくなると地面に黒いペンダントが落ちる。それは"オズ"の本体だ。
新たな尻尾を生やした神狐御前は近くにいた蓮の方を向いて歩き出す。
「迷惑をかけたね、少年。妾が主導権を握っているうちにここから出て「そんなことさせるわけないでしょう?」」
神狐御前の口から出ていた声が二つになる。
「少し気を失っていたら勝手な事して、わたしは悲しいわ御前様。でも鬼門を吸収したのはナイス判断よ。彼岸を繋げるためには少しでも力を蓄えておかないとね」
神狐御前の顔が変質していく。その顔は蓮も以前見たことがあるアルテリアのものだった。
「久しぶりね蓮くん。鬼門と戦って随分傷ついたみたいね。ちょうどいいわ貴方も見てなさい、イルレイン家随一の天才と言われたわたしの一世一代の大魔法を!」
そう言ってアルテリアの尻尾が3本その身から離れて濃密な魔力の塊となって魔法を発動しようとする。
普通魔力は目に見えないはずなのだがアルテリアが扱おうとする魔力は濃密すぎて風景を歪ませている。
「待ちやがれ!お前の好きなように俺がさせると思ってんのか?」
「すごんでも無駄よ蓮くん。貴方もうしゃべることすら全身が痛んでしょうがないでしょ。大人しくわたしのやる事を見ていなさい」
アルテリアの眼前にある濃密な魔力が徐々に形を作っていく。その形は蓮も何度も見たことがある彼岸の扉によく似ていた。
(くそっくそっ!目の前に敵がいるのに体が動かねえ!風花ですらここまで濃密な魔力を使うことは出来ないっていうのに、こいつはどこに繋がる扉を作ろうとしてるんだ!?)
蓮の主人である風花ですら扱えきれないと思うほどの魔力を使って生み出される扉がどこに繋がるかなんて蓮には想像がつかない。
そうして蓮が何も出来ないただアルテリアの姿を見ること2分。それほどの時間をかけてアルテリアは人間1人が通れるほどの大きさの扉を作り上げた。
扉を作ったアルテリアはかなり集中していたのか、汗を滝のようにかいて肩で息をしていた。
「はあ〜、つっかれたぁ。だけどこれでやっと姫さまを迎えられる」
疲れているがやり切った表情をしているアルテリア。
蓮はアルテリアがここまで満足そうな表情をしていることで、新たに生み出された扉がロクなものではないと悟る。
扉が開く。そこから現れたのはまるで月明かりを束ねた様な美しさの銀髪の美少女だった。
「待っておりました姫さま」
「ええ、よくやってくれたわアルテリア。流石は私の子孫で最も天才と言われた子ね」
「ありがたきお言葉です。姫さま」
姫と呼ばれた少女の後ろから複数の人影が扉から現れる。
現れた人影は全員が尋常じゃない気配を漂わせており蓮は冷や汗が止まらない。
(なんだこいつら、あいつは一体何と繋げる扉を作りやがった)
人影の一つが身動きのとれない蓮に気づく。
「ねえねえ母様。あそこに死に損ないがいるよ、わたし達が殺してもいい?」
幼い少女の声が蓮の耳に届く。蓮が人影を観察すると姫と呼ばれた少女以外にも9体の存在がいた。そのうちの6体が幼い少年少女の見た目をしており、その中の誰かが先ほどの声の主なのだろう。
「あいつこっち見てるキモ」
「不快ですね!母様、僕にあれを殺す許可を!」
「お兄ちゃんばっかりずるぅい。あたちも殺したぁい」
「ぼ、ぼくは殺したくないです」
「おいらは早くこの街で遊びたい」
子供の姦しい声が蓮の頭に響き蓮は頭痛がしてきた。
頭痛に耐えていると姫と呼ばれた少女が手を叩いて子供達を黙らせる。
「はいはい、殺すことは確定事項だけど貴方達に任せるわけにはいかないわ。爺達にもね。彼はあのドロテアの息子だもの瀕死の状態でも何をしてくるか分からないわ」
そう言って蓮の目前にまで来た少女の右手には"オズ"の本体が握られていた。いつの間にかアルテリアが回収して少女に渡していたのだ。
「ふふっ、あの魔女の息子を"魔女の作品"で殺せるなんて最高ね」
嗜虐的な笑みを浮かべて少女は右手に"オズ"で作られたナイフを握り、蓮の首元に当てる。
「じゃあね、貴方の主人もすぐ後を追わせてあげるから」
その言葉を聞いて怒りが湧き上がってくる蓮だったがその怒りがあっても傷んだ体は全く動かすことは出来ずなす術もなく殺される寸前、蓮の後ろに扉が現れる。
ナイフを構えていた少女も扉の出現と同時に後ろに飛び退いて蓮から距離を取った。
(な、なにがおきた)
扉からとんがり帽子を被った紫髪の少女が現れる。
「契約は魔都を手に入れるまでだったはずだよね、エリーゼちゃん?」
蓮は聞き覚えがあるようなないような少女の声を聞く。
「"人装戦艦 オズ"を貸して魔都を奪う戦力にする契約だったよね?もう魔都の主は貴女の部下になったんだからこれ以上"オズ"を使うことは許されないなぁ」
とんがり帽子を被った紫髪の少女にそう言われてエリーゼと呼ばれた少女は苦虫を噛み潰した表情をする。
「ごめんなさいねアンビー、なら"オズ"は返しますのでその少年はこちらに引き渡してもらっていいですか?」
「イ・ヤ♡」
満面の笑顔で拒絶するアンビー。エリーゼの表情がますます険しくなる。
「今の状況わかってます?私が断然有利です。いくら貴女が魔女とはいえこの数の貴族相手に勝てるとでも?」
「そうね、確かにこの子を庇いながら戦ったらわたし一人じゃ勝てないわ、だけど別にわたし一人で来たって言ってないよね?」
アンビーの後ろから狐面の人物が現れる。その懐には妖刀が差されていた。
新たな敵の登場にエリーゼから表情が抜け落ちる。
「わかったわ。だけど刺し違えたら私達はその少年を殺せる。見逃す代わりに貴女から譲歩をしてもらいたいわね」
「いいわよ。何かしら?」
「まず"オズ"の所有権を私に渡してもらう。それと二ヶ月間この場所に魔法使いを侵入させないようにする。この二つを約束してくれるのならその少年は見逃しましょう」
「うーん、二ヶ月間かぁちょっと長くない?」
「貴女の"病毒"なら簡単でしょアンビー?」
「まあ弟と妹のためだししょうがないか。いいわその条件で契約しましょう」
二人から剣呑な空気が無くなるが間で聞いていた蓮には何が起こっているのか全く分からなかった。
(なんなんだこいつら!俺達の戦いを勝手にまとめやがって)
自分達の命をかけた戦いの結果を参加してもいない第三者に勝手に決められて業腹な蓮だがどうすることも出来ない。
先ほどまで声を発する事は出来たというのにアンビーと呼ばれた女が現れてから、蓮の体は麻酔にかかった様に弛緩していたからだ。
「じゃあこれで終わりという事で!わたしはこの子を連れて外に出るからじゃあね」
「ええ、いま彼岸に残っている他の人間の事は関知しないという事でいいのよね?」
「好きにすればいいけど、この子がみんな回収しちゃったわよ」
蓮を肩に担いで右手で狐面の人間の背中を叩くアンビー。
エリーゼはあたりを見まわして魂を見つける事ができなかったため、アンビーの言った通り魔都には既に魔法使いが居なくなっている事を理解して顔をしかめる。
「優秀な子ね、その子。一体誰かしら?私もドロテアさんの彼岸には何度か行ったけど男の子なんて見たことなかったわ、弟?」
皮肉と共に正体不明の人物について探りを入れたエリーゼだったが、アンビーには笑って誤魔化される。
「わたし達に弟は一人だけよ。この子はドロテアお姉様の弟子みたいなものかしら」
それだけ言い残してアンビーは扉を作り出し蓮を担いだまま彼岸から出ていった。
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アンビーが出ていってしばらくするとエリーゼはアルテリアの方に振り向き笑顔を見せる。
「今回は頑張ったわねアルちゃん。これでやっと賢者共に邪魔されずに天風 源一郎を殺せるわ。本当にありがとね」
エリーゼの言葉にアルテリアは感涙する。
「勿体ないお言葉です姫様。わたしは貴女の為に生きてきたのですから」
アルテリアはアッシュと出会う前にエリーゼに出会っていた。その時に自分達魔法使いが滅ぼさなければいけない真祖だと理解していたが、そんな事よりもエリーゼの美しさに魅了されていた。
アッシュと出会ってからもエリーゼとは何度も彼岸で会っていて真祖の役割も教えてもらいそれを果たさせないためにアッシュを巻き込んで吸血鬼化の研究を始める事になった。
アルテリアは永く生きるために吸血鬼になりたいとアッシュに語っていたが真実は真祖を助けたいという思いから吸血鬼になりたかったのだ。
「姫様、このままこちらにいては魔城が賢者共に陥されます。それに貴女のお身体も万全ではないのですからお早く戻りませんと」
そうエリーゼに声をかけたのは大貴族であるセバスだった。
大貴族とはエリーゼに血を与えられて吸血鬼になった者のことで普通の貴族とは違った血の属性を持っている。
「わかってるわ、だけどカルヴァンを弔うぐらいの時間はいいでしょう」
そう言ってエリーゼは目を閉じて黙祷する。
カルヴァンはジュリアーノに次いで長い期間エリーゼに仕えていた貴族であった。強さは貴族の中でも最弱といってもいいほどだったが、ジュリアーノと共に長年エリーゼの事を精神面で支えてくれた忠臣なのだ。
セバスを含めた三人の大貴族とアルテリアはエリーゼと共に黙祷をカルヴァンに捧げるが他の6体の吸血鬼は何もしない。
「母様ぁ、あんなおじさんが死んでもどうでもいいでしょ?わたし達の方が強いんだし」
空気を読まずに喋るのはここ10年ほどで産まれた吸血鬼達だ。彼らはアルテリアの研究の産物でありエリーゼの血液から産まれた人間を素体にしない新しい吸血鬼だった。
アルテリアは彼らを真性貴族と名付け普通の貴族とは格が違う属性を扱う事ができる。
「黙っていなさい貴方達」
「うるさいよおばさん」
おばさんと呼ばれたアルテリアは心にかなりのダメージを受けるがなんとか耐えて、真性貴族達への説教を続ける。
「姫様の気持ちも考えなさい。カルヴァンさんは長いこと姫様に仕えていたのよ」
「お、おばさんが連れて行かなければまだカルヴァンおじさんは生きてたんじゃないのかな」
痛いところをつかれたアルテリア。確かにカルヴァンをここに連れてこなければよかったかと思ってしまう。
「口を慎みなさい!」
エリーゼが声を張り上げる。
「カルヴァンがいたからこそこの地が私達のものになったのよ。そんなもしもを想像するなんてカルヴァンへの侮辱よ!」
滅多にエリーゼに叱られない真性貴族達はエリーゼの怒りを浴びて一気に縮こまる。
息を一つはくとエリーゼの顔は穏やかなものになる。
「もういいでしょう。カルヴァンへの弔いも済ませました。これよりこの魔都の管理はアルテリアに任せます。真性貴族とアーノルドはこの地に残ってアルテリアのサポートを、セバスとガリアは魔城に行き私と共に吸血鬼を増やします。決戦は二ヶ月後。アンビーの病が収まったと同時に始まるでしょう。殆どの魔法使いが攻めてくるでしょうからしっかりと準備をしておくように。この決戦を最初で最後の"絶滅戦争"にします!」
「「「はっ!!」」」
吸血鬼達の声が重なる。
この日から二ヶ月後世界で初めての"絶滅戦争"が始まる。
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アンビーが彼岸の外に出るとそこには雨守 雫が立っていた。
「そんなに心配ならついていってあげればよかったのに」
「黄金姫では彼岸の維持もギリギリだったもの、私が魔都に行ったら日本の彼岸が弾けてたわ」
雨守 雫と天風 源一郎が動かなかった理由は彼岸の安定のためであった。彼らの魔力のお陰で日本の彼岸はここ十年ほど安定していたのだ。
もし京都に風花ともう一人絶大な魔力を持った者が行っていたとすると日本の彼岸は弾けて、表の世界の日本を巻き込む大破壊が起きていた。
彼岸を消す方法は彼岸の主を滅ぼす以外にはないのだ。
「ふーん、まあいいわ。じゃあ蓮くんとドロシーの事は頼むわね?」
「言われるまでもないわ」
それだけの会話をしてアンビーは自分のいるべき場所に戻ろうとするが何かを思い出して雫に振り向く。
「そういえば貴女まだ蓮くんに彼の出自を教えてなかったの?過保護もいいけれど次の戦いは間違いなく"絶滅戦争"になるわよ。蓮くん本来の力がないと人類側の"勝ち"は無いわよ」
それだけ言ってアンビーは狐面の人間と共に姿を消した。
残された雫は蓮を両手で抱えながら沈痛な面持ちで呟く。
「わかっているわよ。だけど私はこの子の親なの、かたちだけでもね。自分の子供に人類の存亡を託すなんて恥知らずな事できないわ」
雫の呟いた声はどこにも届かず消えていく。
絶滅戦争
絶滅指定種との戦いでどちらか一方が絶滅しない限り終わる事がない戦争
カルヴァン
最弱の貴族、しかしエリーゼが最も信頼していた貴族。大貴族や他の貴族からの信頼も厚い
大貴族
エリーゼから血を与える事で吸血鬼化した吸血鬼で貴族とは違う血の属性を扱える。
三体しかいないため三大貴族と魔法使いの間で呼ばれている
真性貴族
アルテリアの研究によってエリーゼの血液から生み出された吸血鬼
大貴族のような特異な属性ではないが普通の貴族よりも数段出力が上の属性を扱える




