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魔女と俺の絶滅戦争  作者: あまあま
絶滅指定種『吸血鬼』
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雨守 蓮②

 彼岸に入るとそこは表の世界となんら変わりない風景が続いていた、ひとつだけ違うのは月明かりがある夜になったことだけだ。

 蓮は見慣れたその光景を気にすることなく、自分の前にいる風花に話しかける。


「で、その吸血鬼をどうやって探すんだ?なんか手掛かりとかあるのか」


 風花はこちらを見て笑う。


「手がかりがあったら私一人で解決しているわよ。あなたには索敵をお願いしたいの」


「お前なぁ…さっき俺はお前に離れないようにいったよな、索敵なんて出来るわけないだろ!」


 風花に怒鳴ると、彼女は蓮の方を向いて両手を広げている。何をして欲しいのか察した蓮は重いため息を吐く。


「最初っからそれが目的だったのか?」


「そうよ!私が歩いて吸血鬼を探すなんてするわけがないじゃない。ほら早く私を抱え上げなさい」


 風花は蓮の返答を待たずにレンの首の後ろに自らの手を回す。諦めた蓮は風花の肩と膝の裏に手を回して抱え上げる俗に言うお姫様抱っこだ。


「せっかく雨守家で鍛えたその体を有効活用しない手はないでしょう。それにあなた、人の100倍は頑丈なんだから」


「はいはい、じゃあ舌を噛まないように口を閉じてろよ」


 そんなことを言いつつ、蓮は自分の両脚に力を込めて地面を踏み砕いて高く飛ぶ。ドカンと地面から音がして蓮の体はすでに地上50メートルにまだ上がっていた。


「あははは!相変わらず人間離れしてるわね」


「口閉じてろっていったよな」


 そんなことを気にせず彼女は話し続ける。


「しょうがないじゃない楽しいんだから。足場も作ってあげるからキビキビ探すわよ」


 空中に鉄の箱が出現する。風花の魔法により作られたものだ。それを足場に蓮は街の方に向かう。

 吸血鬼の被害はほぼ全て表の世界の街中で起きている。その為、彼岸においても移動する必要がない街に吸血鬼がいると予想する。

 そうして何度か空中で足場を作ってもらい街に着いた。学校から街までは約3km程の距離があるが、蓮の全力移動ならおよそ30秒で到達する。

 街の中心部に降り立つと蓮はこちらを見る視線に気がつく。


「ずいぶんと相手さんは自信があるみたいだぜ」


「そのようね、全く貴族でもない吸血鬼風情が私をどうにかできると思っているなんて。不快ね」


 風花は顔を顰(しか)めながらもいつでも魔法を使える様に気を張っている。


「出てきなさい吸血鬼!お望み通り殺し合いをしてあげる」


 高らかに宣言すると1人の男が姿をあらわす。


「ようやっときたかよ魔法使い。お前らを誘(おび)き寄せる為に8人ほど人間をぶち殺したぜ」


 ニヤけながら吸血鬼はこちらを挑発する。


「あらあら、昨日までは必死こいて逃げていたくせに待っていたなんてどの口が言うのかしら。誘き寄せる為じゃなくて8人分の血を吸ってやっと戦えるようになったんでしょう?その小賢しさは流石はコウモリといったところかしら」


 負けじと風花も挑発する。コウモリと言われて腹が立ったのか、吸血鬼は先ほどまだしていたニヤケ面を無表情にかえる。


「殺す」


 怒りを孕んだ声でそれだけを言う。


「こちらのセリフね吸血鬼。今からぶっ殺してあげる」


 そういって風花は右腕をあげると風花の周りに大小様々な刀剣が出現する。


「は?」


 吸血鬼は呆気に取られたような声を出す。その隙を逃さず風花の周りに浮いている刀剣は銃弾のような速度で吸血鬼の体を貫いた。

 一瞬だった。一瞬で勝負はついて、風花はまだ潰していなかった心臓と頭に剣を突きつける。


「あんなに挑発してくるんだから何か作戦でもあるのかと勘繰っちゃったじゃない。まさか何もないとはね、あなたみたいな間抜けな吸血鬼には初めて会ったわ」


 蔑む様に笑いながら風花は吸血鬼の頭と心臓を貫こうとすると、吸血鬼は大声で喚(わめ)く。


「な、なんでだ?!この街にいる天風は失敗作だって話だったのに!」


 その言葉は風花の怒りを即座に沸点まで到達させる。


「お前、誰にそんなことを言われた?私が失敗作なんてあり得ない情報を誰から吹き込まれた?」


 ドスの聞いた声で風花は吸血鬼に詰め寄る。吸血鬼は怯えながら自分の持っている情報を話そうとする。


「は、はなす!話すからその剣を俺に向けないでくれ!俺にその情報を教えたのは――」


 続く言葉は出なかったどこかから飛んできた炎が吸血鬼の体を包み込んだからだ。蓮はそれを察知して風花の体を吸血鬼から引き離して自分の身に寄せる。


「今のは!もしかして貴族までこの街にいるの!?」


 風花は戦慄した。ただの吸血鬼ならまだしも貴族を相手にするには準備が足りてないからだ。

 吸血鬼には3つの階級がある。1番弱いただの吸血鬼とそれを作った貴族、そして貴族を作る真祖だ。

 普通の吸血鬼なら風花が遅れをとることはまずないが、相手が貴族になるととたんに話が変わってくる。貴族はそれぞれ血の属性を持っていて、自らの血を媒介として魔法よりも強い力を行使できる為だ。

 今日はそこまでの強者(きょうしゃ)を相手をする気はなかった風花は焦り始める。天風家の者としてこの街に存在している人間を脅かすものを見て見ぬ振りは出来ないがそれでも、今から貴族を相手取るのは無茶だった。彼女は隣にいる蓮を見る。


「蓮…」


 不安そうな風花の顔を見て、蓮は彼女が何を言いたいかを察する。


「はぁ…わかったからお前はさっさと帰っとけ。いい加減に想定外のことが起こった時に魔法が使えなくなるくらいに精神が不安定になるのはどうかと思うぞ。せっかく無限に近い魔力を持ってるのにもったいない」


 そう、風花はまともに戦ったら吸血鬼の貴族にも勝てるほどのポテンシャルはある。ただしそれは、最初から貴族を相手どると知っていればだ。彼女は自分の想定外のことが起こると萎縮(いしゅく)して魔法も使えない精神状態になってしまうのだ。

 そういうわけで風花はもう足手まといにしかならないと蓮は判断して彼岸から帰るように促す。


「でも、私が帰ったらあなた彼岸から帰れなくなるじゃない」


「どこかに空いてる"門"でも探すから大丈夫だ。それよりもお前の方が帰れるのか心配なんだが」


 "門"とは彼岸と表の世界を繋げる天然の扉であり、出現場所はまちまちである。


「扉くらいなら使えるわよ」


「ならさっさと帰ってろ、俺も早く帰りたいからな」


 そう言って蓮は先ほど炎が飛んできた方角をにらむ。


「ちゃんと帰ってきてね」


「当たり前だろ」


 笑顔でそう告げて風花が扉を使い彼岸から出るのを見届ける。


――――――――――――――――――――――

 

「さて、とずっと待ち続けてくれている貴族様に挨拶しに行こうか」


 そう風花と話している間もずっと、蓮は何者かからの視線をもっとはっきり言うなら殺気を感じていた。

 相手は自信があるのか炎を放った場所から動いていない。


「慢心か何か知らないが好都合だ。さっさと終わらせて家に帰らせてもらう」


 相手が待っている場所に蓮は一息で移動する。そこは街にある最も高いビルの屋上だった。


「待たせたな」


 蓮は随分と待たせてしまった相手に声をかける


「いやいや、まさかここまで上がってくるのに10秒もかからないなんて思わなかったよ」


 金髪碧眼の男が返答してきた。


「お前が"炎血(えんけつ)の貴族か?俺が知ってる炎血は黒髪だったと思うんだが」


「ああ、それは老害の方の炎血だね。私は新しい炎血だよ。」


 吸血鬼の貴族に代替わりなんであったかと訝しむと


「私は自らの力でこの炎血に目覚めたのさ!あの老害の様に真祖から与えられただけのものとは違ってね」

 

 自慢気に話し続ける男に蓮はもう少し情報を聞き出そうと話を合わせる。


「そりゃすごい。そんなお前の力はどうやって手に入れたんだ?」


「ははは!言うわけがないだろう、今ここで死ぬお前なんぞに」


 どうせダメで元々の気持ちで聞いていたから構わないが、今までの話から真祖から与えられた力ではないように推察する。真祖の他に吸血鬼を作ることが出来る存在が新しくあるかもしれない可能性が出てきて蓮は舌打ちをしたくなる。


「もういいか?そろそろ表の世界も夜になるからな、先程彼岸から出た天風の娘を殺しに行きたいのでな。お前をさっさと殺したいんだが」


 風花を殺すと言われ蓮は自分の意識を戦闘用に切り替える。最初に会った吸血鬼なら、風花を殺すことは天地がひっくり返ってもありえないが、目の前にいる男は風花を殺せる可能性が万に一つだがたしかにある。そんなやつが風花を殺すと宣言したからには、もうここで殺すしかないと決断する。

 蓮は無言で、瞬きひとつの間に相手の懐まで詰め寄り肘打ちを吸血鬼の心臓に放つ。

 炎血の吸血鬼は咄嗟に反応出来ず肘打ちをまともに受けて吹き飛ばされる。

 蓮は追撃をしようとまた踏み込もうとするも、炎の壁が自分の目の前に現れて踏みとどまる。


「がはっ」


(なんだあいつは?!心臓が潰れかけたぞ。魔法も使わずにここまでの威力の攻撃を繰り出せるなんてあり得ないだろ)


 炎血の吸血鬼は力を得るたまに多くの魔法使いの血を吸ってきた。魔法使いとの実戦経験はそれなりに積んできたし、魔法は発動するまでに少々のタメが必要なことも知っていた。それなのに目の前の少年が魔法を使わずに自分にダメージを与えたことに驚きを隠せない。炎の壁で相手の追撃を遮って、肉体の回復をしていると壁を突き破って蓮が飛び込んでくる。


「な、なに?!1000度以上の炎の壁だぞ!お前頭がおかしいのか!」


 驚愕している吸血鬼の顔面を蓮は右拳で撃ち抜く。


「残念だが、俺は人の100倍頑丈なんでな。こんな薄い炎の壁じゃあ止まらねえよ!」


 そのまま左手を貫手(ぬきて)の形にして今度こそ心臓を潰そうとする。しかし吸血鬼は自分の血を炸裂させてダメージを喰らいながらも距離を取る。


(こいつ、全く魔法を使おうとしない!それに今の攻撃でも傷一つ負ってないだと!?)


 蓮の体には少しの火傷の跡すらなく、真っ直ぐ吸血鬼を見据えている。

 距離を詰められる前に吸血鬼は炎で攻撃を加えるが、蓮は効いている様子を見せず歩いて距離を詰めてくる。


「なんなんだよ!お前っ!なんで私の攻撃で傷一つついていない!本当に人間なのか!?」


 目の前にいる少年を化け物を見るような目で見る吸血鬼。

 蓮は吸血鬼の目の前まで近づいて心臓を足で踏み潰す。


「お前に人間かどうか聞かれるのは心外なんだが…まぁ、人間じゃないと思われたまま死なれるのも嫌だし教えてやるよ」


 吸血鬼は痛みに耐えながら少年が何者かを知る。


「俺は小さい頃に死にかけてな。その時右腕を切り飛ばされたんだがな、そのあと魔女に助けられて新しい右腕をもらったんだ。そんで俺の体はこの右腕に引っ張られるように頑丈になったってわけだ」


 そんな説明を聞いても意味がわからない。吸血鬼は理解することもできなかった。


「まあ、とりあえず俺は一応人間なんだってわかってもらえればいいや。起きろ"ドロシー"」


 蓮の右腕に光る幾何学模様が浮かび上がる。そのまま右の手のひらに魔力が収束して、吸血鬼の頭に放たれた。

 こうして炎血の吸血鬼は滅ぼされた。

 

 



色々な設定

雨守 蓮

17歳 10人中7人がイケメンという顔立ち

黒髪黒目 髪の長さは耳にかからない程度

戦う時も学校の制服をきたまま戦うため替えの制服がたくさんある。


天風 風花

16歳

あと2年経ったら絶世の美女といわれるくらいには顔が整っている。

黒髪黒目

戦う時は自分の魔法で作った服を着ていた服の上に作る


最初に出てきた吸血鬼

年齢不明 顔はそこそこ整っている

黒髪黒目 髪はざんぎりになっている


炎血の吸血鬼

年齢不明 顔はかなり整っている

金髪碧眼 髪は坊ちゃんヘア

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