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魔女と俺の絶滅戦争  作者: あまあま
絶滅指定種『吸血鬼』
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18/28

魔都 京都④

次の話から一日おきに投稿します。

 "奥の院"に入った風花一行は神狐御前の友人といわれた三人と自己紹介をしあっている。

 三人は風花の顔を見て驚いていたが何も言うことはなく自己紹介をする。


「うちは無行(むぎょう) 五(いつつ)や。さっきはありがとなぁ、おかげで翁はんが命拾いしたわ」


 着物を着た長髪の女性が五と名乗る。彼女は先程の戦いでも老人を守る様に戦ってなお余裕があったのでこの中で最も強いと風花は判断する。

 五に続いておかっぱ髪の少女が自己紹介をする。


「わたしは無行 四(よっつ)です。五の妹です、本当に先程はありがとうございます!」


 真面目そうな印象の四。澪が助けた彼女は戦闘技能はあまり無いが珍しい結界魔法を使えるという。

 結界魔法が使えるといった四に風花は驚く。

 魔法は自分の頭にある想像を世界に再現する技術だが、実際参考にするものがなければ魔法の構築は困難だ。

 炎や雷などは映像や実際にその目で見ることが出来るため力を参考に出来る。

 しかし結界魔法は彼岸を参考にするためいまいちその力の本質が理解できない。

 風花もあまり上手く使えない結界魔法を使える四に澪が感心していると最後の老人が自己紹介をする。


「わっしは翁(おきな)とだけ呼ばれとる。自分の名前なんてとうの昔に忘れちまってのぅ。お前さんらも翁と呼んどくれ」


 自己紹介をした翁は戦闘で疲れたのか別室に帰っていく。

 風花一行の自己紹介も終わり、次は黄金姫に挨拶をすることになった。

 "奥の院"の中のかなり奥まった場所に黄金姫がいる部屋があった。

 風花たちは四に案内され黄金姫の部屋に入る。

 部屋に入った風花たちが見たのは狐耳が生えた金髪の少し幼い風花の顔をした少女だった。その少女の後ろには髪の色と同じ色をした尻尾が七本生えている。

 三人が驚いていると少女の方も風花の顔を見て驚いている。


「みなさまこちらが黄金姫。今の日本の彼岸の主であり魔都の主人です。姫様こちらポン太が呼んだ魔法使い様がたです。右から天風 風花様、雨守 雫様、エリス・イルレイン様です」


 風花が四に紹介されて黄金姫に頭を下げる。それにならって澪とエリスも頭を下げる。


「黄金姫様、ポン太さんから救援要請を受けてこちらにきた天風 風花です。あなたを魔都から脱出させるために全力をつくします」


 風花の言葉を聞き黄金姫も頭を下げる。


「頭を上げてくれ。お主たちがきてくれたからこそ四達が生きて戻れたと聞く、頭を下げるのは妾のほうじゃ。妾の大切な友人達を助けてくれて感謝する」


 黄金姫と風花は頭を上げて目を合わせる。二人は髪の色こそ違えど姉妹のように顔が似ている。

 色々と話したいことがある二人だったが割と切迫した状況なため、その事についてはお互い何も言わずに現状の確認をする。


「姫さま、私達は魔都には戦闘要員は五体しか居ないと聞きました。その内の一体はここに来る前に遭遇して、私の信頼する護衛が殿(しんがり)として残ったおかげでここに来れました。残るは四体だけだったはずでは?先ほどは鬼と思わしき存在が六体確認できました。強さにムラがあるようですがどういうことでしょうか?」


 蓮のことが気がかりな風花は詰め寄る様に黄金姫に質問をする。自分達をポン太を使って騙したのかと暗に問うている。

 詰め寄られている黄金姫は若干涙目になってたじろいでいると四が割り込む。


「鬼門の事についてはこちらにとっては助かっています。貴女の護衛に感謝を。ただわたしたちは貴女方を騙してはいません。確かに魔都の戦力は五体の鬼しか居なかったんです、さっきまでは。さっき戦った鬼たちは最後に現れた二体の鬼以外は鬼にさせられた妖なんです」


 鬼になった妖という言葉に何より驚いていたのはポン太だった。

 ポン太にとって鬼はあまり関わりがない存在だったので鬼門以外には関心がないが自分と同じ妖は別だ。自我が生まれて百年で二千体の妖は家族の様な存在になっていた。そんな家族達が鬼になっていると聞き呼吸が荒くなる。


「嘘だ…妖が鬼になるなんて!四さん嘘ですよね」


 四に向かって声を荒げたポン太だったが四が首を横に振るのを見て絶望する。さっきの戦いで消滅した四体の鬼が家族の誰かであったと理解して項垂れる。


「今のわたし達の敵は千体以上の鬼たちです。さっきの戦いで貴女方が来るまでに二百体以上は倒しましたが、妖の数は二千体。その全てが鬼にさせられたとなると敵の戦力は跳ね上がっています。貴女方が来てくれて絶望的な盤面に希望が生まれました。鬼門がいない今こそが千載一遇なのは変わりませんがわたし達も全員消耗しています。一時間後に大手門までの活路を開きます。貴女方には姫様の護衛についてもらって構いませんか?」


 四の提案を受け入れる風花だが黄金姫が抗議する。


「ダメじゃ!お主達を犠牲にしてまで妾は生きとうない。爺もお主達姉妹も妾には必要じゃ!」


「わたしと五姉さんは姫様の友人ですが、御前様から姫様を託されてもいます。姫様の命をこの身に代えてもお守りするのがわたしと五姉さんの役割です。どうか姫様わたし達の命を無駄にしないよう長生きしてください」


 これ以上話すことはないらしく四は部屋から退出していった。

 残された黄金姫は瞳に涙を溜めて誰にはばかることなく大泣きする。

 風花達は黄金姫のそんな様子にどうすればいいのかわからず、また泣いている少女を一人にすることもできずに部屋に黙っていることにした。

 数分たって泣き止んだ黄金姫は風花達に向き直ってお願いをしてくる。


「助けてくれたもの達にこのような願いをするのは申し訳ないんじゃが、どうかあの者達もお主達も生きて妾とともにこの魔都から脱出してくれ。謝礼は妾の尻尾一本をやるからお願いする」


 風花達の前で土下座をする黄金姫。

 少女に土下座をされているというのがいたたまれず、風花は黄金姫に顔を上げてと頼む。しかし黄金姫はお願いを聞いてくれるまで上げないと言う。

 全員の命の保証なんて全く出来ない現状では黄金姫のお願いを安請け合いすることも出来ず、途方にくれている風花だったが思わぬ人が黄金姫のお願いを請け負った。


「アタシに任せな。姫様の大事な友人達は必ず生きて姫様の元に連れて帰るさ」


 エリスのその言葉に黄金姫は顔を綻ばす。輝くような笑顔とはまさにこのことであった。

 だが反対に風花の顔は曇っていた。

 黄金姫も泣き止んだので風花達は退出するとすぐに別の部屋に入り、風花がエリスに詰め寄る。


「どういうつもり?今の状況であの人達の命も守るなんて絶対無理よ。それに彼女たちだって覚悟をしているでしょうに」


 風花の言葉を聞いてエリスは呆れ笑う。


「あんたがそれを言うのか風花。蓮の覚悟を無駄にしようとしてたあんたが。言っておくがアタシだって安請け合いしたつもりはねえ。確かに敵は多くて厳しいが、氷河さんが言っていたあんたの魔法とアタシの魔法があればそこまで難しい話じゃないだろ。蓮とルカぎ一番強いやつを止めてくれてる今ならその作戦で行けるはずだ。あいつらの覚悟も分かってるが、姫様はまだ子供(ガキ)だ。大切な人との別れはもう少しあとでいい」


 エリスの反論を聞き風花の口が噤む。

 確かに風花のミサイル魔法とエリスの銀魔法があれば包囲網を突き破れる可能性は高いからだ。

 澪もエリスの意見には概ね賛同するが、一つだけどうしても見過ごせない点がある。


「アルテリアが来たらどうするのエリス。彼女は貴女の魔法を無効化出来るって話だけど。魔都が誰に襲われたか忘れてはいないわよね?」


 アルテリアがここにいる可能性をすっかり失念していたエリスは目を点にする。


「あっ」


 ここに来るまでに色々あってなおかつ敵が鬼だと言われたため、ポン太から貰った情報を忘れていたエリスは頭を抱える。


「そう言えば元々アイツをぶっ殺すために来てたんだったぁ。アタシとしたことが忘れてた」


 頭を抱えながらどうすればいいのか必死で考えるエリスだったが答えが思いつかない。

 そんなエリスの様子を見て風花は決心する。


「エリス。私がどうにかする」


 どうにかすると言った風花にエリスは疑いの眼差しを向ける。彼女の精神の弱さを嫌というほど今日知った為なんとかすると言われても信用できないからだ。

 そんなエリスの疑いの眼差しを受けても風花は前言を撤回しない。


「私があなたの魔法を再現すれば解決するわ」


 風花のその提案を聞きエリスは何言ってるんだこいつという顔をする。魔法を再現するなんて話聞いたことがない、魔法は他人の魔力、魂に紐づいた技術なのでそれの再現をするのは他人の魂の片鱗を理解することになる。そんなことが出来るわけがない。

 エリスがそんな風に考えていると澪も風花の提案を後押しする。


「エリス、風花様の言ってることは本当よ。風花様は魔法や魔力で作られたものや現象なら、自分の魔力を通すことで完璧に再現できるの」


 澪の言葉を聞き驚くエリスだったがそれでも納得がいかない。


「じゃあそれはいい。だが問題は風花の精神だろ。戦う上で不測の事態が起こることなんて珍しくねえ、そんな時にこいつの魔法が解けてこいつ自身も置物になられちゃあ、守れたものも守れなくなっちまうだろうが」


 エリスの指摘は正しい。風花は黙ってしまう。

 最初のエリスの作戦ならば矛を風花が盾をエリスがすることになるので風花に何かあってもエリスの魔法でどうにかなる可能性はあった。しかし今の作戦では全てを風花の魔法に頼ることになる。そんな作戦で風花の精神が崩れて魔法が解けたら一網打尽になってしまうからだ。


「だからと言って代案はないのでしょう?元はと言えば貴女が請け負ったお願いですよ。貴女の落ち度で風花様の魔法頼りになっていると理解していますか」 


 アルテリアのことを失念していたエリスは何も言い返せない。

 澪も風花に対するエリスの態度がいい加減気に障ったのか丁寧な言葉の裏に怒りが滲んでいる。

 澪とエリスの間で不穏な空気が流れているなか、黙っていた風花が覚悟を決めた目でエリスを見つめる。


「エリス、貴女の言っていることは正しいわ。だけど私はあえて言うわ。私を信じて。天風家の最高傑作である私を」


 迷いのない風花の声にエリスは圧倒され、何も言えなかった。

 そんな風花を眩しいものを見るようにみつめる澪。


(風花様、ご立派になられましたね)


 風花はエリスへの対抗心と蓮から離れたことなどで精神的な成長の真っ最中であった。その中には自分とよく似たあの少女を助けたいという気持ちもあるのだろう。


「…わかった。確かに今のお前の目からは迷いが無くなってる。お前を信じてやるよ風花。ただ次にあの時みたいにウジウジしたらグーでいくからな」


 風花は苦笑をしてエリスと握手をかわす。

 作戦決行まで残り30分。


 "奥の院"のある部屋で翁と名乗る老人が一本の刀を手に取る。


「なんでさっきはそれ使わんかったん?一応あの時も決死やったはずやけど?」


 いつの間にか部屋に入ってきた五から質問されるも翁は笑って誤魔化す。


「ふーん。言わへんのね。ま、ええけど。やけど翁はん、今は姫様のために戦っとるのを忘れんといてな」


 言いたいことだけ言って部屋から出ていった五だった。

 翁は五の言葉を繰り返し呟く。


「姫様のために、か。わっしがこの刀を御前様から賜ってもう八十年、あの方がいなくなってからこの刀と共に死ねる戦場を求め続けた。今日ようやく叶う。すまんな五。わっしは姫様のためには刀をふるえん。一時間もしたら必ず鬼門は帰ってくる。その時こそこの刀が輝くときじゃ」


 翁はそう言って左腰あたりに刀を差す。

 老兵は主人が居なくなってから死に場所を探し続けて、この日遂に見つけた。

 その死に場所は老兵とともに主人を支え続けた親友との決戦であった。


 四は"奥の院"の結界の調整をし続けていた。

 "奥の院"の入り口は一定時間ごとに場所を変え特定させないようにしていたのだが、この数日でそのパターンを完全に理解されて結界そのものの解析をされ続けている。


(解析だけして敵を送り込んで来ないなんてどういうつもり?もうほとんど解析出来ているはず、それなのにどうして)


 結界の解析を済ましているであろう相手が全く攻めてこないことに関して不安を覚えるが、攻めてこないならと開き直って違う結界の構築をする四。

 彼女は神狐御前がいなくなる直前に魔都の結界の全てを一任され、今回の一件に対して深い責任を感じている。そのため命を捨てることになんの躊躇もない。


「姫様、無行 四はあなたの為に死にます」


 四にとって神狐御前と黄金姫は自分達姉妹を救ってくれた神様のような存在になっている。そんな彼女の為に命を捨てることが出来る今に幸せすら感じている。


 五は翁の部屋から出て一人で廊下に居た。


(うちも覚悟を決めんとなぁ。死ぬのはいいけど犬死だけはごめんやわ。お客人達に頼り切りなのは癪やけど、うちらだけじゃあ姫様を守りきれんしなぁ)


 三人の中で最も優秀な五は、死ぬ気はないが死ぬことになるだろうと冷静に分析していた。

 妖のほとんどが鬼になったと考えると戦力差はそこまででもないが物量差で押し切られる。そんななか黄金姫を守りながら戦えるはずなく、本来の自分達の役目である黄金姫の護衛を助けに来てくれた風花達に任せるのに不甲斐なさを感じていた。


「ま、ええな。二十と少しも生きたんやし、あとはこの命を御前様に返すだけやなぁ」


 どうあっても自分達が死ぬだろう戦いになるだろうと悟った五は、せめて神狐御前への恩を返すために戦うことを決意する。


 黄金姫の思いとは裏腹に京都の三人はそれぞれの死への覚悟を決めた。

 そうやって覚悟を決めた三人に風花が作戦を伝える。覚悟に水を差されたかたちになった三人だったが本心はともかく全員がその作戦を了承する。

 二十分後の作戦決行時間まで各々の時間を過ごすのであった。


――――――――――――――――――――――


「いい加減鬼どもも暴れたがってるみたいだが?」


 魔都で最も高い建物の上で大男が銀髪の女性に話しかける。

 その言葉に銀髪の女性アルテリアが微笑みながら応える。


「鬼じゃなくてあなたがでしょうカルヴァン?あと少しよ、彼女たちも鬼門がいない今が最大のチャンスと考えているはず。もうすぐ出てくるわ。わたしの予想ならエリスちゃんの銀魔法で作った乗り物で出てくるだろうし、それをわたしが支配したらあなたの出番よ。期待してるわ"鉄血"のカルヴァンさん」


「ああ、その期待にはこたえよう。奴らが銀魔法を使わなかった時はオレはオレの判断で動く。鬼どもにもそう伝えておけ」


「了解よ。じゃああの子達がでてくるのを待ちましょうか」


 アルテリアは"奥の院"の結界を完璧に解析しているがそれを破壊することはしなかった。結界を破った場合に風花達がどのように動くのか予想がつかないからだ。それなら相手のペースで出てきて貰った方が都合が良いと考え、結界の出入り口を自分達の都合がいいところにするだけにとどめた。

 アルテリアがいる建物の下には鬼たちが集っている。

 アルテリアの考えなど知らない四体の鬼たちは早く黄金姫を殺したくて仕方がなかった。


「さっさと姫様をぶち殺してえのに、何を日和ってるんだ、あの魔法使いは」


「あの大男と鬼門さえいなければあんな小娘に従うこともないのにね」


「鬼門はいないんだし、あの大男一人なら我らでも出し抜けれるだろう。あんな小娘にいつまでも従っている我らではない」


「さんせえ。雑魚鬼達はぼくらが使えるんだし、もうあんなやつ関係なくやっちゃおうよ」


 四体の鬼がそれぞれの意見を言って筆頭である醜赫(しゅうかく)が話をまとめる。


「よし!なら俺たちだけでさっさと黄金姫をぶち殺す。"奥の院"の出入り口はすぐそこだ。苦黄なら開けられるだろう。雑魚鬼も連れてさっさと終わらせる、俺たちは魔都から解放されるぞ!」


 醜赫の言葉に他の三体の鬼は首を縦に振り、風花達の作戦決行15分前に"奥の院"の結界は開かれた。

奥の院は昔の日本の貴族のお家のような造りになっています。中庭もあってそこそこの広さです


人物紹介

無行 五  (むぎょう いつつ)

身長165センチ前後

艶のある黒髪をベースとした長髪で赤、青、金、緑、茶の5色の髪が一房ずつ混じっている

はんなりした美人だが京都三人組の中では一番優秀

過去に妹とともに神狐御前に救われた

23歳前後

無行 四  (むぎょう よっつ)

身長150センチ前後

おかっぱ髪の艶のない黒髪

真面目な優等生タイプ

姉と自分の命を救ってくれた神狐御前に絶対の忠誠を捧げており、その娘の黄金姫にも忠誠を捧げている。ただしその忠誠は狂信と紙一重であるため主人の思いを勝手に決めつける時もある

17歳前後

翁 (おきな)

本名不詳の老人

165センチ前後

ざん切り頭の総白髪

神狐御前からある刀を託された唯一の人間

鬼門とは親友でありその付き合いも長い

100歳を超えている


京都の三人組は普段は魔都におらず表の世界の京都市にいる。これは神狐御前から頼まれて表の京都市の治安維持をしているから。ポン太が京都の戦力が5体だけと言っていた理由はこの3人を全く知らなかったわけではなくアルテリアに攻めこまれた時点で彼らが魔都におらず、大手門以外から魔都に入ることの出来ない状態になっていたため来ないと思っていたから。普段からあまり魔都に来ない3人だったが結界魔法の達人である四が異変に気づいたことで魔都に入った。


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