表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
主人公はいつになっても冒険者ランクを上げない  作者: Patriot
幼少期:〜十歳

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/104

魔法との出会い

それから、しばらく経った。


陽だまり村は今日も穏やかな朝を迎えていた。


村人たちへ挨拶をし、鍛冶場を手伝い、木こりの爺さんの仕事場で汗を流す。


そんな日々が当たり前になっていた頃。


「ヒロ、ガレス。村長がお呼びだ。」


二人は顔を見合わせ、そのまま村長の家へ向かった。


小さな家の中で、村長は穏やかに笑っていた。


深く刻まれた皺が、いつもより少しだけ優しく見える。


「お前たち、冒険者を目指すそうじゃな。」


「おう!」


「はい。」


二人は同時に頷いた。


村長は静かに机の下へ手を伸ばす。


取り出したのは、厚い革表紙の古びた本だった。


「昔、この村へ立ち寄った旅人がな。」


懐かしそうに目を細める。


「世話になった礼じゃ、と置いていった物じゃ。」


ヒロは息を呑む。


村長は本を両手で持ち、大切そうに差し出した。


「貧しい村じゃ。」


「立派な剣も、立派な鎧も用意してやれん。」


「じゃが、知識だけは荷物にならん。」


「持って行きなさい。」


ヒロは両手で受け取った。


表紙をそっと開く。


そこに描かれていたのは、魔力の流れ。


魔法陣。


属性。


魔力循環。


すべてが図解付きで丁寧にまとめられている。


「……!」


目が見開かれる。


(すごい……。)


ただ呪文を覚える本じゃない。


魔法がどういう理屈で成立しているのか。


その”理”が書かれていた。


夢中でページをめくる。


一ページ読むたびに、新しい発見がある。


「ありがとうございます。」


自然と声が漏れた。


「これなら……もっと強くなれます。」


その隣では。


「あー……。」


ガレスが大きな欠伸をしていた。


「剣の本じゃねぇのかよ。」


鼻をほじりながらぼやく。


「魔法なんて頭がこんがらがるだけだ。」


ヒロは苦笑する。


「ガレス。」


「これはすごい本なんだよ。」


「魔法がどう動くのか全部書いてある。」


「君の戦いにも絶対役立つ。」


「へぇー。」


返事だけはする。


だが目は完全に泳いでいた。


「読んだ?」


「読んでない。」


「読め。」


「やだ。」


即答だった。


ヒロは思わず吹き出す。


「仕方ないな。」


本を大切に閉じ、胸へ抱えた。


ガレスが剣を振るうなら。


この本は、自分が使いこなせばいい。


そう思った瞬間、不思議とその一冊が、自分に託された役目そのもののように感じられた。


村長はそんな二人を見て、小さく微笑む。


「行ってこい。」


その短い一言には、村中の願いが込められていた。

お読みいただきありがとうございました!「続きが気になる」「面白い」と思っていただけましたら、画面下の「ブックマーク登録」や「★(評価)」で応援していただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ