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主人公はいつになっても冒険者ランクを上げない  作者: Patriot
青年期:十四〜二十歳

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二十歳

それから五年の歳月が流れた。


王都の朝は、今日も変わらない。


焼きたてのパンの香りが路地を満たし、木漏れ日の酒場では女将が開店の支度を始める。


鍛冶工房からは規則正しい槌の音が響き、王都の地下では魔力導管へ今日も魔力が流れ続けている。


冒険者ギルドには朝早くから人が集まり、それぞれが今日の依頼を探していた。


王都は今日も平和だった。


十年前と何一つ変わらない、穏やかな朝。


けれど、その日常の中には、確かに変わったものもある。


ヒロとガレスは二十歳になっていた。


ガレスは討伐依頼を重ね続け、王都でも知らぬ者はいない若き実力者へと成長していた。


ランクはBランク。史上最強記録を更新していた。


首や腕には相変わらず数え切れないほどのアクセサリーが揺れていた。


討伐の記念。


仲間との約束。


子どもから贈られた編み紐。


どれも本人にとっては大切な思い出であり、一つとして外すことはない。


その一方で、ヒロは十年前と何も変わらなかった。


今日も地下へ潜り、魔力導管を点検し、橋を補修し、街灯を直し、人々の生活を支える仕事を黙々と続けている。


討伐依頼は、相変わらず一つも受けない。


冒険者ランクも、Fランクのままだった。


王都では有名な話である。


「Fランクなのに職人から指名される冒険者。」


「討伐はしないのに、誰よりも忙しい冒険者。」


そんな不思議な存在として、人々はヒロを知っていた。


木漏れ日の酒場も変わらない。


常連たちは今日も朝から他愛もない話で笑い合い、女将はいつものように大きな鍋をかき混ぜている。


セレナも変わらず働いていた。


ただ一つだけ。


ガレスを見る目だけは、五年前より少し熱を持ったものになっていた。


鍛冶工房も変わらない。


親方は今日も職人たちを怒鳴りながら槌を振るい、職人たちは文句を言いながらも笑っている。


ヒロが顔を出せば、「昼飯食ったか」と誰かが声を掛ける。


それが当たり前になっていた。


そして、冒険者ギルド。


受付には今日もリリアが立っている。


艶のある黒髪を後ろでまとめ、その髪には一つの髪飾りが静かに留められていた。


歯の欠けた歯車。


ねじ山の潰れたネジ。


役目を終えた鉄たちから生まれた、不恰好で世界に一つだけの髪飾り。


それは今日も、いつもの場所にあった。


受付嬢たちはもう何も言わない。


冒険者たちも何も聞かない。


それがそこにあることが、もう当たり前の日常になっていた。


変わらない日常。


変わった日常。


五年という歳月は、少しずつ人を成長させ、少しずつ景色を変え、それでも大切なものだけは変えずに残していた。


だから誰も気付かなかった。


この穏やかな日々が終わりを迎えようとしていることを。


そして。


ヒロとガレスの、本当の物語がここから始まることを。

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