表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
主人公はいつになっても冒険者ランクを上げない  作者: Patriot
青年期:十四歳〜二十歳

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/107

始まり

いつもの朝。


ヒロは依頼書を手に、いつものようにリリアの受付へ並んでいた。


「おはようございます、ヒロくん。」


「おはようございます、リリアさん。」


変わらない挨拶。


違うのは、そのやり取りが二人にとってすっかり日常になっていることくらいだった。


リリアは依頼書を受け取り、内容へ目を通す。


「今日は地下導管の点検ですね。」


「はい。午後は西区画の保守も見てきます。」


「分かりました。」


判を押し、依頼書を返そうとした、その時だった。


ギルドの扉が勢いよく開く。


「ヒロー!」


聞き慣れた大声がギルド中へ響き渡る。


討伐帰りのガレスが、そのまま一直線に受付まで駆けてきた。


「街に行くぞ!」


「王女が来てるらしい!」


ヒロは依頼書を受け取りながら、小さく首を傾げる。


(……十年か。)


初めて王女アンと出会った日を思い出す。


今となっては、どこか懐かしい記憶だった。


ガレスは興奮した様子で身振り手振りを交えながら続ける。


「十年経って、すんげぇ美人になってるんだってよ!」


「見に行こうぜ!」


ヒロはあっさりと言った。


「どうでもいいね。」


「僕は毎日リリアさんに会ってるんだ。」


「それで十分。」


受付の向こうで、リリアの動きがぴたりと止まる。


ほんの少しだけ頬が赤く染まった。


周りの受付嬢たちは顔を見合わせ、声を押し殺して笑う。


ガレスはそんな空気など気にも留めない。


「それだけじゃねぇ!」


「剣聖も来てる!」


「執事、兼、現剣聖セバスチャン!」


ヒロは肩を竦める。


「ますます興味ないね。」


「僕は剣より魔法工学の方が好きだから。」


そう答えながらも、心の中では王女暗殺未遂事件を思い返していた。


(あの時の執事……。)


(剣聖だったのか。)


(どうりで、あの気配だったわけだ。)


ガレスは拳を握り締める。


「決めた!」


「剣聖に決闘を申し込む!」


「勝ったら今日から俺が剣聖だ!」


ヒロの顔色が変わる。


「馬鹿!」


「そんなことしたら死罪になるだろ!」


しかし、その時にはもう遅かった。


ガレスは大笑いしながらギルドを飛び出している。


「待て、ガレス!」


ヒロは慌てて振り返る。


「すみません、リリアさん!」


そう一言だけ残し、ガレスの後を追って駆け出した。


リリアは遠ざかっていく二人の背中を見送り、小さく笑う。


「……いってらっしゃい。」


その声は、慌ただしく飛び出していった二人には届かなかった。

お読みいただきありがとうございました!「続きが気になる」「面白い」と思っていただけましたら、画面下の「ブックマーク登録」や「★(評価)」で応援していただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ