表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
主人公はいつになっても冒険者ランクを上げない  作者: Patriot
少年期:十歳〜十四歳

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/104

お祝い

その夜、『木漏れ日の酒場』はいつにも増して賑わっていた。


店内には笑い声が響き、ジョッキがぶつかり合う軽快な音が鳴る。


焼きたての肉。


女将特製のシチュー。


香ばしい匂いが酒場いっぱいに広がっていた。


「今日は貸し切りだ!」


ガレスが胸を張って叫ぶ。


「ヒロの十二歳の誕生日だ!」


「お前もだろ!」


女将が笑いながら頭を軽く小突く。


「それに、お前のCランク昇格祝いでもある!」


店中から拍手が湧き起こる。


「おめでとう!」


「最年少Cランクか!」


「大したもんだ!」


「まだ十二だぞ!」


「これからも無茶して帰ってこい!」


「いや、無茶はするな!」


笑いが広がる。


ガレスは照れくさそうに頭を掻いた。


「へへっ!」


「もっと褒めろ!」


「調子に乗るな!」


常連の拳骨が落ちる。


再び酒場が笑いに包まれた。



女将はカウンターの下から二つの箱を持ってきた。


「ほら。」


「誕生日祝いだ。」


ガレスは待ちきれず箱を開ける。


「おおっ!」


革製の携帯救急箱だった。


包帯。


止血剤。


消毒液。


小さな縫合道具まで綺麗に収まっている。


「すげぇ!」


ガレスは目を輝かせた。


「これでヒロが怪我してもすぐ治せる!」


店中が吹き出す。


「まず自分に使え!」


「一番怪我してるのお前だ!」


「あ。」


ガレスも笑った。


「そうだった!」


一方。


ヒロは静かに箱を開ける。


中には一冊の分厚い本。


『基礎魔法工学』


ページを開く。


魔力伝導。


魔法回路。


魔力導管。


どれも読みたかった内容ばかりだった。


「……ありがとうございます。」


それだけだった。


けれど、その笑顔だけで十分だった。


「良かったな!」


ガレスが嬉しそうに覗き込む。


「絶対それがいいと思ったんだ!」


「今日はお前の誕生日でもあるんだけどねぇ。」


女将が呆れる。


ガレスは笑って首を振った。


「俺はいい!」


「ヒロが喜んでる方が嬉しい!」


店中からまた笑い声が上がる。



少し離れた場所で、セレナは静かにその光景を見つめていた。


この二年間。


彼女は二人をずっと見てきた。


依頼の帰りが遅い日は、


「ヒロはまだ帰ってねぇのか!」


と真っ先に立ち上がるガレス。


ヒロが怪我をすれば、自分の傷など気にも留めず駆け寄るガレス。


誰かがヒロの仕事を笑えば、


「ヒロの仕事を馬鹿にすんな!」


と、本気で怒るガレス。


反対に。


職人たちがヒロを褒めれば、


「だろ!」


「ヒロはすげぇんだ!」


と、自分のことのように胸を張る。


そんな姿を、何度も見てきた。


セレナは小さく笑う。


(本当に。)


(ヒロくんのことが大好きなんだね。)


村で何があったのか。


二人は一度も語らない。


だから、聞こうとは思わなかった。


ただ、一つだけ思う。


(ガレスくん。)


(あなたも、もう少し自分を大切にしていいのに。)


その願いだけを胸にしまい、セレナは二人へ新しいシチューを運んだ。


「ほら。」


「今日はおかわり自由だから。」


「やったぁ!」


ガレスが子どものように歓声を上げる。


ヒロも小さく笑った。


その笑顔を見て、ガレスはまた嬉しそうに笑う。


それが彼にとって、一番のご褒美なのだと、酒場のみんなが知っていた。

お読みいただきありがとうございました!「続きが気になる」「面白い」と思っていただけましたら、画面下の「ブックマーク登録」や「★(評価)」で応援していただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ