ランク昇格!?
季節は巡り、ヒロとガレスが王都へ来て二年が過ぎていた。
二人は十二歳になっていた。
王都での暮らしは、すっかり日常になっている。
朝は『木漏れ日の酒場』を手伝い。
昼は依頼へ向かい。
夕方にはギルドへ戻る。
それが二人の毎日だった。
◇
「ただいま、リリアさん。」
「……おかえりなさい。」
ヒロは今日も迷わずリリアの窓口へ向かう。
その隣では、ガレスがいつもの受付嬢の前へ立っていた。
「おかえりなさい、ガレスさん。」
受付嬢は微笑みながら、一枚の書類を差し出す。
「今日は依頼書より先に、こちらを。」
「ん?」
ガレスは首を傾げながら受け取る。
その瞬間。
近くの冒険者たちがざわついた。
「おい。」
「また最年少更新か。」
「十二でCランク……。」
ざわめきは、あっという間にロビー中へ広がる。
ガレスが冒険者登録をしたのは十歳。
半年でEランク。
一年でDランク。
そして十二歳でCランク。
ギルド史上最年少での昇格だった。
もっとも。
登録から昇格までの期間だけを見れば、過去にもっと速い冒険者はいる。
それでも。
十二歳でCランクへ到達した者は、ギルドの歴史にも存在しなかった。
ガレスは書類をしばらく眺める。
そして。
「……ヒロ。」
「これ何だ?」
当然のように差し出した。
ヒロは一目見る。
「Cランクへの昇格打診だね。」
「君なら当然だと思う。」
「お前、もっと驚けよ!」
ガレスが笑う。
ヒロは首を振った。
「驚く理由がない。」
「討伐依頼は全部成功。」
「失敗も撤退も一度もない。」
「実力だけ見れば、もっと早くてもよかったくらいだよ。」
周囲の冒険者たちが苦笑する。
「相変わらず容赦ねぇ。」
「でも、一番評価してるのもあいつなんだよな。」
ガレスは照れくさそうに頭を掻く。
「よーし!」
大剣を肩へ担ぐ。
「最高ランクまで一直線だ!」
ヒロは笑った。
「まだCランクだけどね。」
「細けぇことはいい!」
ギルド中に笑いが広がる。
◇
少し離れた窓口。
リリアは静かに二人を見つめていた。
ガレスは嬉しそうに笑っている。
そして。
その隣で。
自分のことのように嬉しそうに笑うヒロがいた。
その笑顔を見た瞬間。
自然と口が動く。
「……おめでとうございます。」
「え?」
振り返ったのはヒロだった。
リリアは少しだけ目を伏せる。
「……いえ。」
眼鏡を押し上げる。
「何でもありません。」
そう言って書類へ視線を戻す。
ヒロは少しだけ首を傾げた。
それでも、小さく頭を下げる。
「ありがとうございます。」
その返事を聞いて。
リリアは誰にも気付かれないほど小さく微笑んだ。
(やっぱり。)
(あなたは、自分のことより。)
(ガレスさんのことを喜ぶんですね。)
その優しさが。
少しだけ、嬉しかった。
「……次の方。」
いつもの事務的な声が、静かにギルドへ響いた。
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