表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
主人公はいつになっても冒険者ランクを上げない  作者: Patriot
少年期:十歳〜十四歳

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/131

冒険者登録と出会い

セレナに案内され、二人は冒険者ギルドの前へと辿り着いた。


王都でもひときわ大きな石造りの建物。


厚い木製の扉の向こうからは、多くの冒険者たちの笑い声が響いている。


ヒロとガレスは顔を見合わせた。


ヒロの瞳には、陽だまり村を失った日から変わらない決意。


ガレスの瞳には、頂点だけを見据える真っ直ぐな闘志。


互いに小さく頷く。


そして同時に扉を押し開けた。



酒場とは比べものにならないほどの熱気だった。


依頼書を眺める者。


酒を飲む者。


武器を手入れする者。


あちこちから笑い声が飛び交う。


十歳の子どもが現れたことで、ロビーの空気が一瞬だけ静まった。


「……ガキ?」


「こんな歳で冒険者か?」


視線が集まる。


だが。


二人の隣に立つセレナを見ると、誰も余計なことは言わなかった。


木漏れ日の酒場の看板娘。


彼女に絡めば、女将が飛んでくる。


この辺りでは有名な話だった。


「こっちよ。」


セレナは人混みを器用に抜け、受付へ案内する。


受付には何人もの受付嬢が並んでいた。


笑顔で冒険者と話す者。


冗談を言って笑わせる者。


その中で、一人だけ空気が違う。


黒曜石のような長い黒髪。


知的な眼鏡。


鋭い青い瞳。


受付嬢リリア。


彼女の前だけは静かだった。


冒険者たちは必要なことだけを話し、すぐに去っていく。


処理が速い。


無駄がない。


ヒロは迷わずその列へ向かった。


「え?」


ガレスが小声で聞く。


「なんであそこ?」


ヒロは短く答える。


「あの人が一番早い。」


「仕事が正確だし。」


「それに待ち時間も短い。」


「それだけ。」


「……なるほど?」


よく分からないまま、ガレスも後ろへ続く。


セレナはその様子を見て、少しだけ微笑んだ。


(やっぱり、この子らしい。)


「それじゃ。」


「私はお店へ戻るね。」


「頑張って。」


「ありがとう。」


ヒロが頭を下げる。


ガレスも大きく手を振った。


「また後で!」


セレナは軽く手を振り返し、そのまま酒場へ戻っていった。



「次の方。」


リリアの静かな声が響く。


ヒロが前へ出る。


「冒険者登録をお願いします。」


「年齢は?」


「十歳です。」


リリアの手が一瞬だけ止まる。


だが、それだけだった。


すぐに書類を差し出す。


「規定上、登録可能です。」


「必要事項をご記入ください。」


「はい。」


ヒロは迷いなく筆を走らせる。


綺麗な字だった。


内容にも無駄がない。


リリアは無言で書類を確認する。


問題なし。


受付印を押す。


「登録完了です。」


「初回クエストも受注しますか?」


「お願いします。」


「ご希望はございますか?」


ヒロは即答した。


「この街のインフラ整備に関わるクエストはありますか?」


その言葉に、リリアは初めて視線を上げる。


十歳の子どもが。


初仕事で。


討伐ではなく。


インフラ整備。


珍しい。


だが表情は変わらない。


依頼書を一枚だけ抜き出す。


「魔力導管整備補助。」


「こちらにしましょう。」


「ありがとうございます。」


ヒロは迷わず受け取った。


「次の方。」


ガレスが前へ出る。


「ぼ、冒険者登録を!」


一拍置く。


「……お願いします!」


ヒロが小さくため息をつく。


リリアは書類を差し出した。


「ご記入ください。」


ガレスは固まる。


「……。」


ヒロを見る。


「ヒロ。俺字書けねぇ」


「だから、勉強しろって言ったのに。」


ヒロが隣で代筆することになった。


ガレスは満足そうに頷いている。


リリアは眼鏡を少し押し上げた。


(……珍しい。)


兄弟ではない。


それでも息がぴったりだった。


「登録完了です。」


「希望するクエストはございますか?」


「討伐!」


ガレスは勢いよく答える。


「あ。」


慌てて言い直す。


「……討伐をお願いします!」


「派手なの!」


「……です。」


ロビーの冒険者が吹き出した。


リリアは淡々と依頼書を選ぶ。


「ゴブリン討伐。」


「三体。」


「こちらでどうでしょう?」


「よっしゃ!」


ガレスは拳を握る。


「暴れてくる!」


「ほどほどに。」


ヒロが苦笑する。



二人は依頼書を受け取り、受付を離れた。


「ありがとうございました。」


ヒロが頭を下げる。


ガレスも続く。


「行ってきます!」


二人はそのままギルドの扉へ向かった。


リリアは無意識に顔を上げる。


小さな背中が扉の向こうへ消えていく。


ほんの一瞬だけ。


視線が、その背中を追った。


「……。」


「次の方。」


いつも通りの声だった。


だが。


隣の受付嬢は首を傾げる。


「リリア?」


「どうかした?」


「……いえ。」


リリアは書類へ目を戻した。


「何でもありません。」


そう答えながらも。


彼女の視線は、ほんの一瞬だけ。


再びギルドの扉へ向いていた。

お読みいただきありがとうございました!「続きが気になる」「面白い」と思っていただけましたら、画面下の「ブックマーク登録」や「★(評価)」で応援していただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ