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主人公はいつになっても冒険者ランクを上げない  作者: Patriot
邪神:二十七歳〜

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最終話

それからは早かった。


ヒロが敵の奇跡を完全に無力化。


その隙に各国の精鋭たちが所狭しと暴れ回った。


邪神教徒たちはなすすべなく倒れていった。


最後の拠点の制圧が完了し、部隊は解散となった。


各々惜しみながら別れ、そして再会を誓った。



荷馬車の中。


ヒロは両手で頭を抱えていた。


「……リリアさんに、なんて謝ろう。」


女将は腕を組み、呆れたように言う。


「あんたが悪いんだよ。」


ギルドマスターも鼻を鳴らした。


「黙って出てくのは、さすがによくねぇな。」


しばらく沈黙が流れる。


するとガレスが、ぽつりと呟いた。


「……なんか思い出すな。」


「王女助けに行った帰り。」


ヒロは顔を上げる。


一瞬きょとんとして――。


「あっ。」


思い出したように吹き出した。


「リリアさんに怒られるのが怖くて。」


「ギルドの前で、誰が最初に扉を開けるか譲り合ったよね!」


ガレスも笑い出す。


「そうそう!」


「ギルマスなんか。」


声色を真似しながら。


「『俺だって怖ぇんだ。』」


荷馬車の中に笑いが広がる。


ギルドマスターは頭を掻きながら目を逸らした。


「……うるせぇ。」


女将は呆れたようにため息をつく。


「みっともないねぇ。」


「大の男が揃いも揃って。」


荷馬車は、笑い声を乗せながら王都へ向かって進んでいった。



王都の城門が見えてきた。


荷馬車がゆっくりと速度を落とす。


その時だった。


「あ……。」


ガレスが小さく声を漏らす。


城門の前。


二つの人影が並んで立っていた。


セレナ。


そして、リリア。


女将は目を細める。


セレナの右手。


大切そうに、一通の手紙が握られていた。


女将は思わず口元を緩める。


「……そういうことかい。」


そして。


ガレスの背中を勢いよく叩いた。


バシッ!


「いってぇ!」


ガレスが振り返る。


女将はニヤリと笑う。


「気が利くじゃないか。」


ガレスは照れくさそうに頭を掻いた。


荷馬車が止まる。


ヒロはゆっくりと荷台から降りた。


その瞬間。


ギルドマスターが肩を組むように顔を寄せ、早口で囁く。


「いいか。」


「まずは謝れ。」


「とにかく謝れ。」


「言い訳はするな。」


「あくまで謝れ。」


「女は後が怖ぇ。」


「あの時なんか俺は――」


ゴンッ。


鈍い音が響いた。


ギルドマスターが頭を押さえてしゃがみ込む。


振り返ると、拳を振り下ろした女将が仁王立ちしていた。


「くだらないこと言ってんじゃないよ。」


ギルドマスターは頭をさすりながら小さくぼやく。



城門の前。


リリアが静かに立っている。


四か月ぶりだった。


今生の別れになるかもしれない。


そう覚悟して家を出た。


もし帰って来られたとしても。


自分には、彼女を抱きしめる資格などない。


そう思っていた。


一歩。


また一歩。


ゆっくりと歩み寄る。


リリアは何も言わない。


ただ、優しく微笑んでいた。


もう無理だ。


そう思った瞬間。


ヒロの体は勝手に動いていた。


気付けば、力いっぱいリリアを抱きしめていた。


「ひ、ヒロくん……。」


「ちょ、ちょっと!」


慌ててセレナが駆け寄る。


「そんな勢いで――」


リリアは小さく首を振る。


「いいの。」


そして、そっとヒロの背中へ手を回した。


「でも、ヒロくん。」


優しく、自分のお腹へ手を添える。


「少しだけ、優しく抱いて。」


ヒロの腕から力が抜ける。


「……え?」


視線がゆっくりと下りる。


初めて気付いた。


リリアのお腹が、少しだけ膨らんでいることに。


言葉が出ない。


震える手を、おそるおそる添える。


温かい。


確かに、そこに命があった。


涙が溢れた。


止めようとしても、止まらなかった。


「ごめん……。」


それしか言えなかった。


リリアは泣きながら笑う。


「おかえりなさい。」


その光景を見つめながら。


女将は肩を震わせて涙を流していた。


何も言わず、ギルドマスターがその肩をそっと抱き寄せる。


女将はその胸へ額を預け、小さく鼻をすすった。


少し離れた場所では。


ガレスが空を見上げ、歯を食いしばっていた。


嗚咽が、どうしても止まらない。


セレナはそんなガレスの隣へ静かに並ぶ。


そして、そっと腕を絡めた。


「……よく頑張ったね。」


ガレスは何も答えられない。


ただ、小さく頷くだけだった。

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