会議
ガレスと勇者一行は、会議室の扉を開けた。
重い扉がゆっくりと開く。
その瞬間。
部屋中の視線が、一斉に五人へ集まった。
まるで品定めをするような視線。
歓迎の色はない。
値踏みするような空気だけが漂っていた。
ガレスは部屋を見渡す。
各国から集められた高ランク冒険者。
歴戦の将軍。
騎士団長。
名だたる強者ばかりだ。
そして、その中で。
ガレスはSランク。
それでも、この場では最もランクが低かった。
グラムは部屋を見回し、小さく呟く。
「……こんだけか。」
セシリアは静かに首を横へ振る。
「仕方ありませんよ。」
「邪神教徒たちの犯行は、常軌を逸しています。」
悲しそうに目を伏せる。
「人民は恐怖しています。」
「その恐怖を払拭するには、各国とも守りを固める必要がありますから。」
「精鋭を全員送り出すわけには、いかないんです。」
その言葉に、ガレスは黙って頷いた。
オズワルドは重たい空気など気にも留めず、ずんずんと会議室の中央へ歩いていく。
用意された席へ腰を下ろした。
勇者一行とガレスも、それに続く。
部屋は静まり返っていた。
誰も口を開かない。
オズワルドは椅子へ深く腰掛けたまま、面倒そうに手を振る。
「ほれ。」
「始めんか。」
中央席に座る一人の男が静かに立ち上がる。
SSSランク冒険者、ヴァルク。
オズワルドへ一礼すると、すぐに資料を開いた。
「では、報告を始めろ。」
挨拶もそこそこに会議は始まった。
被害報告。
邪神教徒の推定拠点。
構成員の特徴。
使用する奇跡について。
次々と報告が続く。
だが。
ガレスの頭には、何一つ入ってこなかった。
(邪神教徒って、なんだ?)
(奇跡?)
(何もわかんねぇ……。)
俯き、小さく息を吐く。
(こういう時、ヒロがいたら。)
(呆れながら教えてくれるんだろうな。)
その姿を思い浮かべ、寂しそうに目を伏せた。
その時だった。
「王国領内にて発見された冒険者の惨殺遺体、その現場近くにおいて――」
報告官の声に、ガレスの耳が反応する。
「邪神教徒の拠点壊滅を確認。」
ガレスは勢いよく顔を上げた。
部屋の空気が変わる。
報告官は一枚資料をめくる。
「発見された邪神教徒ですが……。」
言葉が止まる。
ヴァルクが低い声で促した。
「……どうした。」
「続けろ。」
報告官は唾を飲み込み、震える声で続きを口にする。
「一連の被害者と……同じように惨殺され。」
顔色を青くする。
「その……。」
「見せしめのように、全員。」
資料を握る手が震えた。
「地面に突き立てられた棒へ……串刺しにされていたとのことです。」
ガレスの背筋に、冷たい汗が流れた。
――全員、同じ目に遭わせてやる。
王都を去る朝。
ヒロが残した、あの言葉が脳裏によみがえる。
会議室は一気に騒然となった。
「拠点壊滅だと?」
「そんな大規模な部隊が動いたなんて聞いてないぞ!」
「あの周辺に軍は配置していなかったはずだ!」
報告官は慌てて首を横に振る。
「い、いえ。」
「それが……。」
資料を握る手が震える。
「死体の傷と、その場に残された魔力の残穢から判断して……。」
一度唾を飲み込む。
「実行犯は、一名かと。」
会議室からどよめきが起こる。
「一人でやったっていうのか!?」
「馬鹿な!」
「そんなことが……。」
別の席から苦々しい声が飛ぶ。
「それにしても、やり過ぎだ。」
腕を組み、眉をひそめる。
「行き過ぎた報復は味方の士気を下げる。」
「逆に敵を逆撫でするだけだ。」
さらに別の将軍が資料をめくる。
「そこまで強いとなれば、名の知れた者だろう?」
「調べれば、すぐに分かりそうなものだが。」
混乱する会議室の中。
ヴァルクがゆっくりと手を上げた。
それだけで。
ざわめきは静かに消えていく。
全員が口を閉ざし、その姿へ視線を向けた。
ヴァルクは部屋を見渡し、静かに口を開く。
「とにかく。」
「まずは、邪神教徒の拠点を一つずつ確実に潰していく。」
誰も異論は挟まない。
「その際。」
少し間を置く。
「もし、その犯人と思しき者を発見した場合。」
ヴァルクの声がさらに低くなる。
「殺すな。」
部屋中の視線が集まる。
「必ず、生け捕りにしろ。」
「敵ではない。しかし、やり方は許すことは出来ない。」
お読みいただきありがとうございました!「続きが気になる」「面白い」と思っていただけましたら、画面下の「ブックマーク登録」や「★(評価)」で応援していただけると励みになります。




