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主人公はいつになっても冒険者ランクを上げない  作者: Patriot
戦後:二十歳〜二十七歳

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新章

ガレスは重い足取りで酒場へ戻った。


カラン。


扉を開く。


女将。


セレナ。


ギルドマスター。


三人が一斉に顔を上げる。


その視線はすぐにガレスの後ろへ向かった。


誰もいない。


その瞬間。


三人は何も聞かずに察した。


セレナが駆け寄る。


「ガレス……。」


そっと抱きしめる。


ガレスは抵抗しなかった。


女将が静かに口を開く。


「あんたでも、止められなかったんだね。」


ガレスは俯いたまま、小さく頷く。


ギルドマスターは深く息を吐いた。


「……リリアになんて言ってやりゃいいもんか。」


長い沈黙。


やがて、ガレスがか細い声を絞り出した。


「……俺から言うよ。」


唇を噛み締める。


「俺が止められなかった。」


拳が震える。


「……怖かったんだ。」


その一言に。


セレナはゆっくりと顔を上げた。


信じられなかった。


いつも大声で笑って。


誰よりも自信満々で。


どんな相手にも真っ直ぐ向かっていくガレスが。


「怖かった」と口にした。


ガレスは震える声で続ける。


「多分……。」


「止めたら、殺されてた。」


誰も言葉を返せない。


ガレスは目を閉じる。


「あいつを見て……分かっちまった。」


涙が一滴、床へ落ちた。


「もう……。」


声が震える。


「友達じゃ、ねぇんだって。」





その日。


ようやく王都にも、一連の事件の詳細が伝えられた。


犯人は――邪神教徒。


各国へ送り付けられた犯行声明には、こう記されていた。


『先代勇者による邪神の封印が解かれるまで。』


『我らは殺し続ける。』


王都は騒然となった。



各国首脳会議。


重苦しい空気の中、最初に口を開いたのは皇帝だった。


「勇者は何をやっておる。」


低く響く声。


「噂によれば、聖剣を砕いて打ち直したと聞く。」


鋭い視線が国王アルバスへ向けられる。


「本当に勇者としての資格があるのか。」


国王アルバスは表情一つ変えない。


「勇者が邪神教徒を追い詰めた。」


静かに答える。


「だからこその凶行じゃろう。」


腕を組み、小さく笑う。


しかし、その唇の端には血が滲んでいた。


「これを機に、炙り出せるわい。」


すると、別の国の王が机を叩いた。


「人民を餌にしているようではないか!」


怒りを露わにする。


「変わっておらんな、アルバス!」


会議室の空気が一気に張り詰める。


「やめよ。」


皇帝の一声で、全員が口を閉ざした。


皇帝は全員を見渡す。


「とにかく、勇者だけでは手が足らん。」


「各国の強者を集め、一気に叩く。」


その提案に、各国の王たちも静かに頷く。


アルバスが最後に口を開いた。


「そのためには。」


「まずは情報収集じゃな。」


机の上の資料へ目を落とす。


「過去の事件を洗い。」


「敵のことを掴むのじゃ。」





酒場の二階。


セレナは、長い口づけをようやく終えた。


名残惜しそうに少しだけ離れる。


ガレスは照れくさそうに頭をかき、壁に立て掛けてあった赤い工具箱を肩へ担いだ。


その重みに苦笑する。


「まったく。」


「アクセサリーにしちゃ、大きすぎるな。」


セレナは、その姿を見てふふっと笑う。


「行ってらっしゃい。」


そして真っ直ぐガレスを見つめる。


「必ず、連れて帰ってきて。」


ガレスは力強く頷いた。


「おう。」


胸を叩く。


「任せろ!」

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