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主人公はいつになっても冒険者ランクを上げない  作者: Patriot
戦後:二十歳〜二十七歳

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旅立ち

その頃。


王都中が騒然としていた。


いや。


王都だけではない。


各国から、次々と不穏な報せが届いていた。


街道沿い。


森の入口。


国境付近。


まるで見せしめのように、人々の遺体が発見されていた。


どれも一目で分かる異様な有様だった。


残虐な手口。


明らかな殺害。


そして、誰かへ恐怖を植え付けることだけを目的としたような痕跡。


人々は口々に噂した。


「戦争が始まるのか……。」


「魔族の仕業か?」


「いや、盗賊じゃない。」


「こんなことをする連中がいるのか……。」


不安は瞬く間に各国へ広がっていった。


街には重苦しい空気が漂い始める。


誰もが、何か大きな災いの前触れではないかと恐れていた。



夜明け前。


自宅。


ヒロは工具箱を静かに床へ置いた。


何も言わず、その蓋をそっと撫でる。


そして寝室へ目を向けた。


ベッドではリリアが穏やかな寝息を立てて眠っている。


ヒロは小さく微笑んだ。


「……行ってきます。」


誰にも聞こえないほど小さな声。


起こさないように、ゆっくりと扉を閉める。


まだ誰も歩いていない王都の道を、一人歩き始めた。



王都城門。


門柱にもたれ掛かっていたガレスが、ゆっくりと顔を上げる。


「……行くのか?」


「ああ。」


短いやり取り。


ガレスはヒロを見つめたまま続ける。


「敵討ちのつもりかよ。」


ヒロは立ち止まらない。


ただ一言だけ返した。


「やられたら、やり返す。」


その声には感情がなかった。


「全員、同じ目に遭わせてやる。」


ガレスの背筋を冷たいものが走る。


村の一件で壊れかけたヒロは。


王都で出会った人々の優しさに触れ、少しずつ立ち直っていった。


ガレスは、そう信じていた。


違った。


壊れていた。


最初から。


壊れたまま。


ただ、その破片を必死に繋ぎ合わせて笑っていただけだった。


エリックの死が、その繋ぎ目を砕いてしまった。


ガレスは何も言えなかった。


止める言葉が見つからない。


ただ、小さくなっていくヒロの背中を見送ることしかできなかった。

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