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主人公はいつになっても冒険者ランクを上げない  作者: Patriot
戦後:二十歳〜二十七歳

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二人の夢

ドワーフの里から帰ってきてから。


ヒロの技術は、誰の目にも分かるほど向上していた。


地下での魔力導管整備では、職人たちが逆にヒロへ教えを請うようになる。


「ヒロ。」


「ここはどうしたらいい?」


「この角度なら、魔力抵抗が減ります。」


「なるほど……。」


「ああ、そういう考え方か。」


いつしか、職人たちはヒロを囲み、話を聞くのが当たり前になっていた。


その様子を見ていた親方は、苦笑する。


「……師匠の拳骨がチラつくな。」


ヒロは首を傾げた。


「?」


「なんでもねぇ。」


親方は照れ隠しのように鼻を鳴らした。






その日の仕事を終えると、ヒロは工房へ向かった。


作業台の上には、ガレスの大剣。


十五年間。


ガレスと共に戦い続けてきた相棒だった。


ガレスは腕を組み、静かに見守っている。


ヒロは肩に掛けていた工具箱を下ろした。


ゆっくりと蓋を開く。


一本の工具を手に取る。


その姿を見た瞬間。


ガレスの脳裏に、十五年前の夕焼けがよぎった。


あの日。


森の帰り道で交わした約束。


ヒロは大剣へそっと手を添える。


「今日から。」


静かな声だった。


「今日から、君の装備は、僕がすべて整える。」


工房から音が消えた。


ガレスは何も言わない。


ただ、小さく笑った。


十五年前。


陽だまり村で止まってしまった約束が。


ようやく、動き始めた。





その夜。


工房から木漏れ日の酒場へ続く夜道。


二人は肩を並べて歩いていた。


ガレスは仕上がったばかりの大剣を抜く。


月明かりを受けた刀身が、美しく輝く。


そのまま夜空へ高く掲げる。


「よし!」


「最高ランク冒険者を目指す!」


勢いよく叫んだあと、首を傾げた。


「……で。」


「最高ランクって、なんだ?」


ヒロは思わず吹き出した。


「ふっ。」


「SSSだよ。」


「ちなみに君は、今Aランクね。」


戦争参加の処罰で一度Bランクに降格していたが、しっかりとランクを戻していた。


ガレスは目を丸くする。


「まだ上あんのかよ!」


「あるよ。」


「あと三つ。」


二人は顔を見合わせ、声を上げて笑った。


笑い声が静かな夜道へ溶けていく。


しばらく歩いたあと。


ガレスがぽつりと呟いた。


「……ありがとな。」


ヒロは前を向いたまま、小さく頷く。


「うん。」


また少し歩く。


ガレスは夜空を見上げたまま、小さく笑った。


「嬉しかったんだ。」


「ただ、嬉しかった。」


月明かりを受け、一筋の光が頬を伝う。


ヒロは、その横顔を見なかった。


いや。


見られなかった。


二人は何も言わず、静かな夜道を歩き続けた。


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