↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/123

彼女の愛

 私は幸せ。

 だって、愛する人に出会えた。

 愛する人と結婚できた。

 子供だって産めた。

 2回の出産で3人産んだの、すごくない?


 誰かが私のことを不幸だって言うのなら。

「わかってないなぁ」って笑いたい。

 26年しか生きられないと、不幸なの?

 違う。

 26年で、できることを全部やった。

 全力でやりきった。

 人にも恵まれて、みんな私を支えてくれた。

 だから私は、幸せ。


 メイランと、世界中のあちこちを巡った。

 最初は足で。後には竜で。

 どっちも最高だった。メイランが隣にいるから。

 婚礼の日、私はメイランに「天地の果てでも」ついていくって言った。

 あれ、結構本気で言ったんだけど、信じてくれてるかな。

 ただの決まり文句で言ったんじゃないんだけど。


 あんなに強いメイランを、投げ飛ばす技だって覚えた。

 影嵐(エイラン)さんの教え方は、とても上手かった。

 残念だけど、メイランよりも。ずっとね。

 技を覚えた頃には、体が本格的に弱りはじめていた。でもあの技は、そして影嵐さんは、そんなことを問題にしなかった。

 ついにメイランを投げられた時、私は思いっきりはしゃいだし、メイランは悔しがりながら笑ってたね。

 投げられたって報告したら、影嵐さんは、寝た状態からでも投げられるって言って、実演までしてくれて。

 見た時、本当にびっくりした。

 最低限の力さえあれば、どんな体勢からでもいけるんだって。

 私はさすがに、そこまではできなかったけど。

 でもきっと、影嵐さんは私の子供たちの誰かに、教えてくれると思う。

 その子が、寝た姿勢から投げられるようになるんじゃないかな。


 ねえザフィル、あなたにもお礼を言わなくちゃ。

 ずっと、支えてくれたものね。

 私が動けるように、全身を魔法で補ってくれた。

 あんなに長い間動けたのは、あなたのおかげ。

 動けなくなってからも、苦痛を和らげる方法を考えてくれた。

 試してくれた方法、100種類は軽く超えたでしょ。

 ありがとう。


 あとね、あなたは本を残すべきだと思う。どうかな。

 ヴェンツェルさんのために書いてる本とは別に、ザフィルの名前で。

 もっと自由に。

 だって、本当にすごいから。あなたの魔法の技術と知識は。

 もちろん魔法と関係のない本でもいいけど、興味ないよね、きっと。

 でも気が向いたら、そういうのを書いたっていいし。

 書いた本が世に出るのが嫌なら、村に置いておけばいい。

 ここにあれば、みんな読むんじゃないかな。私の子供たちは読むだろうし、メイランだって、かわいい弟の本なんだから、一度は挑戦しそう。

 メイランでも読めるような本を書くのも、いいかもね。


 あなたは村のみんなの仇だけど、メイランの愛する弟で、私の恩人。

 こうやって並べると、すごく複雑。いっそ面白いぐらい。

 私はあなたに愛を抱かないけれど。

 大切な人にはなった。

 ねえザフィル、あなたも幸せになって。

 恋をしろなんてつまらないことを言う気はない。でもあなただって、幸せになっていい。

 自分は幸せになるべきじゃないなんて、思ってない?


 私の愛する子供たち。

 あなたたちの成長を見られないのは残念だけど。

 でも、心配はしてない。

 メイランがいる。青嵐(せいらん)の人たちもいる。ザフィルだっているし、ヴェンツェルさんもたまに来る。

 世界中を見渡しても、そういないような人たちばかりなのに。

 あなたたちは、彼らを振り回してる。

 すごすぎて笑っちゃう。


 ねえ、あなたたちの思い通りにならないことなんて、あるのかな。

 私の記憶には、ないんだけど。

 これだけ愛されてるんだから、あなたたちはみんな幸せになる。

 これは決定。絶対に揺らがない。

 安心して、自信を持って人生を歩んでほしい。


 ねえメイラン。

 あなたに言いたいこと、あまりないかも。

 すねないで。愛しのメイラン。そうじゃない。

 毎日毎日、あなたには愛と幸せをもらっていて。今だって、幸せで。

「愛してる」と「幸せ」は、もう聞き飽きちゃったんじゃない?

 でも、それ以上に表現する言葉を、私は知らないの。

 だから、もう一度言わせて。

 私はメイランを愛してる。

 私は世界一幸せ。

 不満なんて、どこにもない。


 出会ってくれて、ありがとう。

 愛してくれて、ありがとう。

 幸せをくれて、ありがとう。


 全部全部、伝えたい。

 伝わってるかな。


 ああ、声が出ない。

 耳は聞こえるんだけど、目もよく見えないし。

 体はとっくに動かない。

 でも痛みはないの。だから安心して。

 苦しくもない。だから泣かないで。

 お願い、笑って。私も笑うから。

 泣き顔よりも、笑顔を見せて。


 ねえ。

 メイラン。

 ねえ。

 私の子供たち。

 ねえ。

 みんな。



 愛してる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。