オーディション
やっと理解が追いついてきた光。そして同じ状況に陥っているのは力声もだった。
俺の目の前に、魔法少女が現れた。
そう魔法少女だ。
しばらくして、周りからのお気持ち程度の拍手が送られる。
「いくわよーマジカル——」
とまだ続きをしようとする。
光はその空気に耐えられず、魔法少女に声をかけた。
「いやもういいだろ」
「え?」
まだ魔法少女が抜けきらないのか、魔法少女(力声)の声はまだ高い。
「え?ていうか、なに?よくそんなノリノリで出てこれるな。しかも爆弾でどっかんって、魔法少女じゃなくてもはや爆破犯じゃねーか」
すると、魔法少女は光の肩にポンっと片手を乗せた。そして、今度は裏声を無くして、いつもの声に戻る。
「——光。こういうのはな、やっとけば恥ずかしいもなにもないんだ。やったもん勝ちだよ。何もやらない方が空気に耐えきれない」
と真面目な顔をして、必死に言葉をかけてきた。
「お、おう」
力声の圧に光も思わず声が漏れる。
「て、ことで……よしいってこい」
「へ?」
力声が光をくるんと晶子たちの座る椅子の方へと向けて、トンっと背中を押す。
向けられる視線。考えずとも、なにを考えているのかがわかってしまった。
「………………っ」
ひきつった顔を必死に堪えながら、力声が何も言わずに差し出してきたステッキを勢いよく手にとった。
数秒ステッキと見つめ合うと、光は意を決したように口を開いた。
「……ぴ、ぴゅあらぶハートでロックオン。悪を滅する、魔法少女参上!」
ステッキを振ってそれっぽく動いてみた。
(ああ……死にそう……)
心の中でそう思った。もはや気絶してしまいたい。
すると、力声の時とはまた違った反応が返ってくる。
「おぉー」
目の前に座って見ていた者たちは、声を揃えてそんな声を上げたのだ。
すると同時に、拍手も送られた。力声とは違うお気持ち程度の拍手ではなく、称賛の拍手だった。
中でも熱烈に拍手している男。おそらく隊員であろう者が語り始めた。
「いい……いい!その隠しきれてない恥ずかしさが逆にいい!そういう魔法少女もいるからね、なりたての魔法少女って感じでかわいいーーっ!」
彼の様子から嘘を言ってるのではないだろうが、眼科に行くことをお勧めしたい。
「ああ、とても可愛いよ」
晶子が優しい笑みを向けながら、そう言ってくる。
「なんか俺のときと反応違いすぎない?!」
力声が不満そうに訴える。
「あーっはっはーいいねーとてもよく似合っているよ」
藤子島が手を叩きながら愉快そうに笑う。絶対面白がっている。
光はなぜかそんな藤子島にイラっとくる。
「大隊長、サンドバッグになりたい時ってありますよね」
今魔法少女にも関わらず、光は拳を見せてそう言う。
「ごめんごめん、いや君たまに恐ろしいこと言うね」
藤子島はやはり面白いというのが顔に出ていた。
「すまないね。突然なことで、頭が混乱しているだろう」
晶子が口を開いた。そして腕を組むと、背もたれに背を預ける。
「安心してくれ、ちゃんと理由はある」
晶子の言葉に、なにを安心すればいいのかわからないが、理由なくこんな格好にさせたなら、さすがの晶子でも光は恨むかもしれない。
「理由?」
「ああ。この間、二人には秋葉原に行ってもらっただろう?あの少女の依頼の件さ」
光たちは確かに秋葉原へ行き、その少女の望みを聞いた。しかしそれは想像を超えるもので、確か……魔法少女になりたいと言った。
だが、このコスプレとも呼べないひどい惨状の姿とどう結びつくのだろう。まさか、はい!これが魔法少女です!なんて言うのだろうか。かなり無理がある。
「そう。これが俺たちにできること。彼女の望みを叶えるには、これが必要不可欠なわけ」
力声がいつもの口調で晶子の言葉に付け足す。
だが、それだけではわからない。なぜ必要不可欠なのか。やはり無理のある行動にでるのか。
まだ理解しきれていない光の姿に、晶子は説明を始める。
「今回の依頼、つまり望みは魔法少女になりたい……だっただろう。可愛い衣装に、魔法。そして肝心なのは体だ。霊には当然出歩けるような体はない。私たちには見えているがね。そんな彼女の望みを叶える、一つの方法がある」
「方法……?」
「ああ、君も実際に体感したことがあるだろう?その方法こそが——憑依さ」
「憑依……」
晶子の言葉を改めて自分で口にすると、確かに光は憑依というものを体感した覚えがある。
霊というものに関わることになったきっかけ。人に憑依し、自殺に見せかけるという悪行を働いた霊。光もそれに体を乗っ取られ、危うく死にかけた。力声が助けられなければ。
そして光は悟った。その方法を聞いて、なぜこんなファッションショーのようなものが行われているのか。
「あの……えっと……もしかして、それって……」
光は言葉にするのが恐ろしく、なかなか結論を言うことができない。
「もうわかっただろう。何をしようとしているか」
ああ、わかった。わかりたくなかった。
「だから君たちになってもらうのさ、魔法少女に」
ニコッと微笑んだ晶子を目の前に、光はとにかく逃げたい気持ちでいっぱいになった。
(絶対にいやだ!)
意味不明な展開かと思いますが、あたたかい目で見てあげてください。光たちが一体どんな姿をしているのか、想像するのは、自己責任でお願いいたします。
(私の想像では意外と可愛いです)




