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曜日替わり能力  作者: 向風
121/125

甘いもの


探索を中断して休憩がてら昼食を取ることにした。


「…うーん、これだけだとちょっと寂しいな。」


今日は朝食で食べたパンの残りを女将さんが持たせてくれたのでそれを齧っているのだが昼食がこの堅パンだけというのは味気ない。


「贅沢言っちゃダメだよー。せっかく女将さんが好意でくれたんだから。モグモグ。」


イオルは俺の発言を嗜めるようにしながら、ちぎったパンを口に入れる。

地面に腰を下ろし、休憩ということで眼帯を再装備したイオルも昼食に付き合ってくれている。

もうあまり昼にも食事を取るということにも違和感を感じていないようだ。


「いやもちろん女将さんには感謝してるよ。ただ、ジャムでも買って来てたら良かったかなって思っただけでさ。…あ、ジャムってわかる?」

「ジャムって果物とお砂糖を煮詰めて作るやつのこと?」

「それそれ。町で買えるのかな?」

「もちろん買えるけど高いよ?」

「そうなのか? あ、砂糖使ってるからか!」


そういえば昔は砂糖は高かったと聞いたことがある。


「ちなみにどれくらいの値段がするんだ?」

「えーっと、確かこれくらいの大きさの入れ物に入ったやつがね」


イオルは一度言葉を止めると親指と人差し指を縦に開き5センチほどの大きさを表す。


「大銀貨2枚くらいかな。」

「…マジか。」


想像してたよりもなかなかいいお値段だったらしい。


「ちなみにこれ1番安いやつね。味とか時期によってはもっとするよ。寒い時期なんかだと今言った安いやつでも2倍くらいの値段になることもあるんだよ。」

「そ、そうなのか…」


ジャムがそんなに高いとは…。もしかしたら前世でも探せばそれくらいの高級ジャムはあったかもしれないが高くても1000円くらいのジャムで満足していた身としては衝撃である。


「その、寒い時期だと値段が上がるのはどうしてなんだろう?」

「それは寒くなると材料の果物が取れなくなるからでしょ? だから寒い時期でも果物が食べられるように考えて作られたのがジャムなんじゃない?」

「あー、保存食の意味合いもあるのか。なるほどね。うーん、でもちょっと手を出しにくい値段だなぁ。」

「ジンさん、そんなにジャム好きなの?」

「あ、いや、別にそこまででは。ただ今みたいに冒険の合間に外で食事を取るなら便利かなって思っただけなんだ。エネルギー…、身体を動かすのに必要な活力を得るのに甘いものは良いらしいからね。」

「へー、なるほどね。確かに甘いもの食べたら元気出るもんね! あー、話してたら何か甘いものが食べたくなってきちゃった。」

「わかる。でも甘いものなんて今はないしなぁ。お菓子とか、あとは果物、果実…。」


果実…?


「あるな、果実。」

「あるね、果実。」


どうやらイオルも俺と同じことに思い当たったらしく、地面に下ろした背嚢に同時に目を向ける。

俺は食べていたパンの残りを口に押し込むと背嚢を開けて中から皮袋をひとつ取り出し、同じくパンを食べ切ったイオルが近づいて来て見ている前で皮袋から中身を取り出す。


「イオル、これ食べたことある?」

「ううん、無い。でも甘くて美味しいって話は聞いたことあるよ。」


皮袋の中身。仙人掌の実を前にして話し合う。


「でもさ、これ依頼品だよね? それもちょっと時期が早いから今のところ10個ちょっとしか見つけれてないし。」

「そうだな。それに依頼内容は出来るだけたくさん欲しいってことで個数指定は無し。あるだけ買い取るっていう昨日のユキノシタの採取と同じで美味しい依頼だ。小ぶりで成長し切っていない実以外はできるだけ持って帰りたいところだな。」



イオルとも意見は一致している。この実は持ち帰るべきだろう。



「「…でもさ。」」

「……。」

「……。」

「ジンさんからどうぞ?」

「イオルの話から聞くよ?」

「いやいや…」

「そんな遠慮せずに…」

「「………。」」

「じゃあ同時に言う?」

「そうだな。そうしよう」

「じゃあせーので言うよ? せーの」


「「食べたい。」」


やはりイオルと意見は一致していたようだ。


「じゃあ切るなー。多分4分割したら食べやすいよな。」

「うんうん。そうしよっ! わー、すごい色!」

「おー、紫色かー すごいな。お、けっこう種があるみたいだな。これ種ごといけるやつか?」

「まあ多分食べて見たらわかるよ。それじゃいただきまーす。」

「いただきます。おお、甘い! これ結構しっかり甘いぞ!」

「ん〜!! 甘くて美味しい! あ、でも種は結構硬いね。」

「そうだな。出した方がいいかな?」

「えー、私、それはちょっと恥ずかしいかも…。ごくんっ。うん、これくらいなら飲みこんじゃった方がいいかな。」

「ごくん。別に恥ずかしがることはないと思うけどな。でもイオルがそうするなら俺もそれに習うよ。確かに飲み込めないほどじゃ無いしな。」

「あ、もう一切れもらうね。」

「どうぞどうぞ。一応実にも多少トゲがあるからそれだけ気をつけてな。」

「了解! んー、美味しい。これ町じゃ出回らないのかな? こんなに美味しいのに売ってるの見たことないんだけど。」

「栽培するのは難しいってことなのかもね。それか置いてもあんまり売れないからとかかもだけど。」

「あー、確かに見た目はちょっと敬遠しちゃうかも。見た目じゃ味の想像つかないし。」

「まあ冒険者の特権ってことで良いんじゃないか? また見つけたらその時食べたら良いし。」

「そだね! あ、でも今もうちょっと食べたいんだけど…ダメ?」

「ダメだよ、数少ないんだから。」

「もう1個だけ! それで我慢するからー!」

「…うーん、わかった。じゃあ1人1個ってことでもう1個だけ許可します。」

「やったー!」


で、結局もうひとつを2人で分けて食べた後、まだイオルが欲しがったので仕方なく切ってあげたらまるまる1個をイオルが1人で食べてようやく満足してくれたようで昼食を終えた。




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