安全地帯
引き続き岩場の探索をしているとたくさんの背の低い木が生えている場所を見つけた。
「お、木が生えてる。こんな岩まみれの場所でも生長できるなんて根性あるなぁ。」
「だねー。えーっと、葉っぱの形からしてこの木は…油木かな?」
ギルドで借りた植物やキノコなどで調合すると薬にできるものをまとめてくれてある冊子を捲り、該当するものを探す。書いてあることと採取物を照らし合わせていく。これがなかなか楽しい。
「何々、『油木 乾燥した土地でも生長できる低木で種には毒がある。毒のある種からは油を採取することができ、石けんやロウソクの材料として使える。その他、下剤や解熱剤としても調合が可能。』また毒かぁ。」
「なんか毒があったりトゲだらけだったりなのが多いねー。」
「自衛のためにそういう風に進化したのかもね。っと、それじゃあこれも一応薬になるみたいだし採っていこうか。」
「うん。あ、薬に使えるのは種だけだよね? 実から取り出した方がいい?」
「そうだな、…いや、実のままにしよう。実にも使い道があるかも知れないし、毒があるんなら素人判断で余計なことはしない方がいいと思う。」
「なるほどね、りょーかい! じゃあ手分けしてやっちゃおう!」
皮手袋を装備して油木の実を摘んでいく。
身長差もあるから俺はなるべく上の方から採るようにして下の方はイオルに任せた。
「結構生ってるね。大きい実だけ採ったんでいいよね。」
「そうだね。採りすぎるのも良くないと思うし、必要なのは種だから、大きい実の方が種も多いかもしれないからね。ところで魔物の反応は無いまま?」
「全然。この辺、ホントに魔物いるの? ってくらい反応無し。」
質問に首を振って否定するイオル。
「そうか。まあ採取に集中できるのはありがたいんだけどここまで出会わないとはね。うーん、ツノトカゲの捕獲の方は失敗になるかもな。」
この岩場で採取を始めて結構時間が経つのだが未だ魔物との遭遇はしていない。
イオルも何度も能力で探ってくれているのだが全く引っかからないとのこと。
普段なら耳の良い魔物は高音の超音波を嫌がって逃げていく、というのもあるらしいのだがそれすら無く、全く掠りもしないのだとか。
「ええ…、パーティ組んだばっかなのに依頼を失敗するのは嫌だなー。」
「それは俺もそうだよ。ただ、考えようによっては最初のうちに失敗を経験するってのも良いかも知れないよ? 毎回成功してたらもっと難しい任務になった時に無理してでも成功させようと思っちゃうかも知れないし。」
「えー! じゃあもう諦めちゃうの!?。」
「いや、諦めるってわけじゃ無いよ。ちゃんと依頼を受けるときにユーンさんにもこの辺りにもツノトカゲがいるって確認したわけだし、それに急ぎの依頼じゃなかったからもし今日見つからなかったとしても明日以降に探しに行っても良いわけだし。」
「それはそうだけどさー。」
お喋りしながらも採取は進み、大きい実はあらかた採り終わった。
もうそろそろ良い時間だと思うし少し休憩にするべきだろう。
「イオル、一度休憩にしない? だいぶ動き続けてるし、イオルは能力も使い続けてるから疲れてるだろ?」
「でも…、ツノトカゲ見つかってないし…。」
イオルはツノトカゲの捜索を続けたいようだがだいぶ能力による負担がきつい筈。ここらで休まないと帰りにへばってしまうだろう。
「まあまあ、焦っても仕方ないって。休める時に休んでおくのも大事だよ? 多分だけど、ここ安地みたいだしさ。」
「…安地? って何?」
聞き馴染みの無い言葉にきょとんとした顔をするイオル。この表情がまた可愛いと思う。
「ああえっと、安全地帯の略。多分ここあんまり魔物が寄り付かないんじゃ無いかと思うんだ。」
「なるほど? え、でもなんで分かるの?」
「いやこの油木なんだけどさ、葉っぱにも木にも何かに食べられたような跡が無いんだよ。多分なんだけど毒があるから動物が近寄らないんじゃないかな? で、魔物たちは主食は肉らしいけどエサになる動物がいないんならここには来ないんじゃないかっていう予想を立ててみた。」
確証は全然ないけど案外当たってるような気がしてる。
「あー、言われてみたら仙人掌はあんなトゲだらけなのに所々齧られたような跡があったのに油木にはそんな跡ないもんね。全然気づかなかったや…。」
「たまたまだよ。まあ、そういうわけだから今のうちに休憩にしようって提案なんだけどどう?」
「…うーん、そうだね。わかった。ジンさんの言うとおりにする。…言われてみたら結構疲れてる気がするし。」
休むと決めたら急に疲れが来たようだ。時間的にも昼は過ぎているだろうし、本日も遅めの昼食としようじゃないか。




