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49番目の後継者  作者: ペンギンMAX
第三章 新たなる旅、ザルツ王国
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第三十九話 本日も通常運行です

 清々しい朝だ。

 『あた~ら~いい~朝が来た~希望~のあさ~が♪』

 とラジオ体操の音楽が聞こえそうなくらい、良い天気だ。


 ザルツ王国は今夏になろうという季節。

 やはり獣人だからか、シルビアがよく知っていた。

 前にザルツ王国の風土を教えて貰っていたんだ。


 ザルツ王国全体として年間を通して、気候は暖かく穏やか。

 木々も多く、ガイグン周辺には大森林が多く点在する。

 山々に囲まれ、湖も幾つか有り食料も豊富。

 獣人が生活しやすい基盤が良く揃っている。

 四季らしきものもあり、日本で言えば沖縄か九州といったところかも知れない。


 そんなザルツ王国の首都ガイグンを、窓を開け遠くに眺めながら上半身を起こす。

 心地よい風に体を撫でられながら、覚醒していく。



「ふ~そろそろかな・・・」



 いかん。

 つい独り言で呟いてしまった。

 あのバヴェルとの戦いで負傷を負った俺は、此処数日安静にしている。

 傷は魔法で癒えたが、ダメージまでは消えない。

 便利そうに見えて回復魔法にも欠点がある。


 まず病気には効果が無い。

 どれだけ高位の回復魔法でも治せないのだ。

 病気になれば必然的に魔法以外の回復手段が発達する。

 こっちの世界では、薬草を利用した漢方に近い治療方法が盛んだ。

 だが、こっちの漢方も完璧ではなく、病死も多いと聞く。

 この世界のルールのようなものかもしれない。


 それから怪我に付いてだが、傷は治せてもダメージは消せない。

 傷に付いては西洋医学も真っ青な効果で、跡形も無く直すのだが・・・

 その分、体中の細胞に負担をかけるのか物凄く疲労感が出る。

 もちろん傷ついた部分のダメーシは残ったままだ。


 この2重の疲労が為に、俺は只今絶賛療養中である。

 起き上がる事もままならない状態だったしな、仕方ない。

 まあ、竜だって怪我したら寝て治してるイメージがあるし当たり前なのかも。


 そうこうしているうちに、下の階から喧騒が聞こえ出す。

 これから毎朝恒例に成りつつある行事が始まる知らせだ。

 あああ・・・足音が聞こえてきた。

 階段を上り、廊下を走る足音が大きくなってくる。

 さてはて、今日はどんな騒動になるのやら。


 俺がげんなりしていると、勢い良くドアが開く。



「トシヤ~~~気分はどう?少しは良くなってきた?」


「トシヤ様!お加減は如何ですか?本日も腕によりをかけました!」


「お兄ちゃん!私の愛を受け取ってね~ん♪」



 ははははっは。

 乾いた笑いしか出ないよ。

 さっきまで爽やかな空気に支配されていた部屋には異臭が漂う。


 3人とも手には其々皿や鍋を持っている。

 毎朝、俺を看病すると言う名目の為、3人が常に競い合っているのだ。

 しかもお互いに刺激し合うのか、看病の仕方がエスカレートしていて手が付けれない程に過剰なのだ。


 そして始まる看病合戦。

 一応アデーレが諌めるが、その場限りで守った事がない。

 さあ、始まるぞ・・・

 まずは朝食からスタートだ。



「ト・シ・ヤ♪さあ今日も此れを食べて元気を出してね♪」



 イシュタルは、いの一番に俺の側まで走りより、自慢の料理を突き出してくる。

 グツグツと煮える鍋の中には、紫色の液体が沸騰している。

 液体の中には、正体不明の物体が煮込まれ異臭を放つ。

 俺は『解析』でイシュタルの料理を見る。

 

 【トシヤの為に作った最高の滋養強壮天界スープもどき】※但し味は激マズ


 ありがとう解説。

 ありがとう味の評価・・・

 前にお茶を鑑定したときは、既製品の為名前のみの表記だったが、手作り物はこうやって情報がある程度仔細に見えるのだ。


 イシュタルの料理は、本来超一流の腕前といっていい。

 なのに、この看病合戦になってから不味いを超して不思議な世界に逝ってしまっている。

 おそらく、周りに負けたくないと言う気持ちが、イシュタルを狂わせているようだ。

 それにしても何故毎日こんな物が出来上がるのか?

 念の為、料理について聞いてみる。



「イシュタル、これ・・・スープかな?」


「いやんw~~~~~スープじゃないトシヤ。此れはね、絶対に体力が付く私の故郷の秘伝なのよ!昨日たまたま近い食材を見つけたから作ったの。大丈夫!絶対にトシヤを回復させるわ♪」



 故郷と来たか、確かに天界とは言えないわな。

 しかし天界の秘伝と言う所が嫌な予感しかしない。

 だってあの神の『魅惑の魔眼』で解るとおり効果が怪しすぎる訳ですよ。

 それに、俺がどうしても聞いて置かないといけないと思う謎の浮いた物体。



「はは、ありがとう・・・その浮いてるのはナニ?」


「これ?コレはね、故郷に良く居た『桃の実虫』っていう昆虫に似たもので、何かは解んない♪けど効果はあるはずよ♪似てるから~絶対体にいいわよ♪」



 満面の笑みを浮かべるイシュタル。

 その笑顔は出会った頃以上に、美しく慈愛に満ちている。

 心配が高じ、俺に何かと世話を焼きたいんだよね。


 うん。

 アナノ ソノ エガオガ コワイデ~~~~ッス。

 毎朝無茶言うなイシュタル!

 虫だよ虫!しかも何か解らんて!

 そんなの食えねーよ!

 俺がそんな感想を顔に張り付かせていると、今度はシルビアが料理を突き出す。



「イシュタル!また抜け駆けして。約束はどうしたのですか!!」



 そりゃそうだ。

 シルビアのお怒りもごもっともだ。

 看病合戦が始まるというか、アリスが来た事により2人の協定が崩れたようだ。

 仲良くはあるが順番とか今まで守れていたものが狂わされているもんな。



「もう、そんな風にするなら私だって負けませんよ!ささ、トシヤ様あんなスープより私の料理を食べて元気を出してくださいね♪」



 こちらも、イシュタルとアリスに負けまいと、自慢の料理を差し出してくる。

 イシュタルと違い料理としては様になっている。

 だって、肉しかないから・・・


 皿の上にはほんわかと湯気の立つ肉の塊がデーンと鎮座している。

 その周りには彩りよく野菜が添えられ、見た目は完璧だ。

 それに見た目同様、美味しい事は証明されている。

 だって食べたんだものイブロニアで活動していた時に何度も何度も・・・

 イシュタル同様『解析』で見る。


 【トシヤ様の為に狩って来たバランディの肉を煮込んだ至高の滋養強壮肉煮込み】※但し味は最高でも油ギッシュで胸焼け必然


 うん、何も変ってない。

 毎回『但し味は最高でも油ギッシュで胸焼け必然』はどの料理でも同じ解説表記だ。


 シルビアは基本何でもこなす。

 ザルツ王国に来てから特に、頼れる側近というか良妻というか、そんな感じだ。

 俺の手の届かない痒い所をさり気無くサポートしてくれる点が素晴らしいのに・・・


 料理だけは駄目だ。

 いや、駄目ではないか美味いんだから。

 でも、肉しか使わないよね・・・肉しか・・・


 肉料理一辺倒のシルビアの食事は獣人にとっては普通なのだろう。

 だが、俺は人族だし現代日本の料理で育った身だ。

 毎日肉だけでは胃もたれしちゃう。


 そして、お約束どおり看病の間に出されるシルビアの料理は肉だらけ。

 俺は臭い立つ油の乗った煮込み料理に無意識と胃を摩る。



「っふ、お前達は解ってないな。看病と言うのに兄上の事を考えておらんようだ。」



 俺の仕草に気付き、勝ち誇ったようにアリスは言う。

 このアリス、俺の妹兼奴隷となって数日だというのに素晴らしい観察眼による行動を発揮している。

 俺の気持ちをすぐさまに察知して、時には労り、時には諌め、時には甘えてと男を駄目にする小悪魔の如く振舞う。

 ただし本当に小悪魔かと言うとそうではない。

 妹として、俺を愛しく思うが故に、常に俺を自分だけのものにしようとしているのが解るので、真に俺を誑かそうとは思っていなのだから。

 そんなアリスの小悪魔チックさは、逆に可愛く見えるだよね。



 「さ、お兄ちゃん♪あんな人達は放って置いて、私の愛情料理で元気出してね♪今日はお兄ちゃんの体調を考慮した茸スープよ♪食べ易いから安心してね♪」



 相変わらず変わり身の早い事。

 イシュタル達に向けた凛々しい口調は何処へやら、一転甘えた猫なで声を出すアリス。

 その首には、バヴェルにより嵌められた首輪が目立つ。

 褐色の肌に浮き上がる黒いベルト。

 その中央に輝く黒真珠の如く輝く魔結晶が、アリスを奴隷として視認させる。



「ん?まだ気にしてるのお兄ちゃん・・・もういいのよ。私はお兄ちゃんの奴隷になった事喜んでいるんだから~フフ。それより早く食べて♪元気になっってね、エヘ♪」



 綺麗なお姉さんが可愛くすると引くかと思うだろ?

 アリスの場合、そんな普通の想像が吹っ飛ぶ位に愛らしいから吃驚だ。

 色気ムンムンは変らないが、綺麗なお姉さんが俺だけに見せる甘えた表情は、ぶっちゃけ破壊力抜群だ。


 ギャップ萌がこっちの世界で堪能できるとは思っても見なかった。

 愛すべき美しく可愛いダークエルフが其処に居るのだから。


 そっと労るように、ゆっくり料理を差し出してくる姿も男心が解っている。

 ただ・・・アリスの料理も・・・ね。

 もう絶対見なきゃいけないだろうと『解析』で料理を見る。


 【愛するお兄ちゃんの為に作った、ダークエルフの郷土料理を再現し最高の滋養強壮スープに見立てたカモフラージュスープで、森の幸をふんだんに使い主に茸を浮かせているが実はアリスを抱きたくなるようにする為の精力絶倫効果大な媚薬入り茸スープ】※但し味は美味しいけど薄味※のんだら3日は性欲MAX


 なっげーーーよ!

 名前なっげーーーーーーーー。

 しかも毎朝俺の体調に見合った感じの料理を作るんだが、その最後に絶対『精力絶倫効果大な媚薬入り』が付いてるんだよ!

 

 俺がスープを凝視して、訝しげな顔をしているとアリスは少し涙ぐむ。

 あざとい!

 だが、そのあざとさに色気が加われば俺としても突っ込む気が萎える。

 だってどうしようもなく愛しくなっちゃんだよ、主に下半身の欲望から・・・



「お兄ちゃん・・・食べて・・・くれないの?・・・」



 っぐ・・・そんな顔をしたら食べて襲いたくなるだろう・・・

 アリスの責めるような目にたじろぐ俺。



「な!なにアリスだけにそんな鼻の下を伸ばしているのトシヤ!」


「そうですよ!何でアリスだけ!」



 俺の姿にキレる2人。



「いや・・・ご・・・誤解だよ?」


「誤解も何もないわよ!トシヤ!私の料理を食べて、私こそトシヤの事を一番に思っていることを思い知って欲しいわ!さあ!食べるのよトシヤ。口をあけて?アーンしてあげるから。さあ、アーンしてアーンしてアーンしてアーンしてアーンしてアーンしてアーンしてアーンして・・・ふふうふふふふふ」



 あ、逝っちゃったよイシュタルが。

 いかん、こうなったらヤバイ!



「イシュタル!自重して。そんなんじゃトシヤ様も落ち着いて食べれないでしょ?ささ、まずは私の料理を食べて落ち着きましょう。」



 おいおい、シルビア。

 そこで抜け駆けするとは・・・



「んあ!邪魔するのシルビア?!ふふふうふふふううううふふふこうなったら強引に私が先に食べさせるわ!」


「あ。ちょっとイシュタル!?駄目よ私から!!!」


 

 2人は火花を散らし睨み合う。

 手に持ったスプーンを器用に使って、お互いの料理を掬う事を牽制し合っている。

 そんな2人の牽制の中、ついっと俺の口元に運ばれてくるスプーン。


 見るとアリスが2人の隙を付いて、『精力絶倫効果大な媚薬入り茸スープ』を飲ませようとしていた。

 アリスが小声で、甘えたように耳元で囁く。

 ぐあ!色気が!フェロモンが!!



「お・に・い・ちゃ・ん♪今のうちよ♪食べて♪そして、わ・た・し・も・ね♪」



 アリスがそう言って俺の耳たぶを甘噛みする。

 ゾクゾクと背中に快感が襲い、アリスの言う通りにスープを飲みそうになる。

 駄目だ俺!それを前に一口飲んだら、テントが納まらず1日処理に困っただろ!!

 ああああ!止まれ俺!今ここで大量に飲んだら目も当てられない状況になるぞ!!

 状態異常耐性があるとはいえ、アリスの色香と媚薬を意識する効果は俺を異常に興奮させるんだから!


 意識は俺の行動を止めようとするが、アリスの色香に俺は止まらない。

 やばい!

 あと一歩でスープを啜る所まで来た俺を、止めたのはシルビアだった。



「ちょ!何してるんですか!」


「っち、邪魔をするな!兄上は私のものだけにするのだ!」



 本音がでちゃったよアリス・・・

 アリスも加わり、3人のバトルが展開される。

 ああ、またかよ・・・


 毎朝の恒例行事に半ば諦めていると、タイミングよく聞こえる効果音。

 それは、この状況を見かねたかのように大きな音を出す。


 バァァァァァン!!


 突然、ドアが勢い良く開けられる。

 毎朝の事だが、この音で3人の熾烈な戦いは一旦止まる。

 ドアを見れば、ここ数日天使に見える姿があった。

 ワゴンを押し、静かに佇む2人。


 あ!オタスケマンが来てくれたよ!!


 俺は心の中で叫ぶ。

 そう、そこにいるのはリリィとアデーレだ。

 この状況に困っている俺を、毎日救ってくれる神光臨!キタ~~~~~!

 

 看病が始まり、最初の頃は3人が喧嘩をしながらも俺の世話を焼いていた。

 だが、数日前位から3人の過剰さに呆れたリリィが、アデーレを仲間にして助けてくれるようになったのだ。

 料理が乗っているであろうワゴンをゆっくり押して来るアデーレ。

 その横にぴったりとくっ付いて入って来るリリィ。


 2人は俺達側まで来て、固まっている3人を凝視する。

 そして始まるお説教タイム。



「またですか!お嬢様方。何度も申し上げているのにこの有様とは・・・旦那様を殺す気ですか?」



 アデーレの言葉は酷く冷たい。

 眼差しも厳しく、非常に怖い。

 その体からは見えないけど、闘気が立ち上り俺達に襲い掛かってくるよう幻覚見るくらいだ。

 実際、部屋の空気は張り詰め緊張感が漂っている。

 バヴェルよりも怖いかも知れないほどに。



「え・・・えっとねアデーレこれは・・・」


「っは!アデーレその私達は・・・」


「・・・お兄ちゃんにね・・・その・・・元気にね♪」



 3人とも弁解に必死だった。

 それ程までに怖いのだ、アデーレの雰囲気が。



「はぁ~~、まったくどうしようもありませんね。ささ、皆様に代り、お食事はリリィ様がご用意なさいました。今日も諦めて下さいまし。」



 アデーレが言うリリィの料理とは、本当に病人食のことをさす。

 だから3人とも悔しさもあるが納得するしかなかったのだ。

 もちろん此処で反省して、同じように料理を作れば良いのに、必ずそうならなくなる。

 どうしてもキッチンで3人が同時に料理するので、相手を負かそうとあれこれ過剰になってしまう為だ。


 

「でも・・・きょ・・・今日は力作なのよ?大丈夫だと・・・思うのだけど。」



 なかなか諦めきれず引き下がれないイシュタル。

 


「そうですよ、その前は私達の料理で・・・その・・・大丈夫だったのだから・・・」



 前はそのお陰で俺は酷い想いをしたのだが、当の本人達は看病出来ていると思う不思議。

 シルビアもイシュタル同様、お願いする。



「私は・・・お兄ちゃんに尽くすだけだから・・・」



 曖昧な所がアリスらしい。

 イシュタルとシルビアに同調も出来るし、リリィとアデーレに任せるとも取れる。

 実に上手い言い草だ。

 だが、そのモジモジする姿がアリスを嫌な子と俺に思わせないのが策士だと思う。

 

 

「駄目です!ささ、今日も諦めて下さいませ。旦那様に何かあったら私どもメイドも路頭に迷うというものです。ここはリリ様にお任せしてください。」


「「「・・・ふぁい・・・」」」



 3人はアデーレの威圧に押されてシュンとする。

 そんな3人を差し置き、アデーレはリリィと共にワゴンに乗っているクローシュを取る。

 クローシュを取ると、小さな小鍋があり、其処からはなんとも懐かしい香りが俺の鼻をくすぐる。

 


「さあ旦那様、此れをどうぞお召し上がりください。リリィ様特製の玉子粥でございます。」


「ん・・・美味しいよ・・・」



 なんと!粥だと? 

 この世界に来て初めて見た。

 リリィの作る料理は、母親の影響か質素でシンプルなのだが栄養も考えたものが多く、今の俺にはとても食べやすいものばかりだ。

 最も印象的だったのが、野菜スープのパンリゾット。

 これは、米がなくとも雑炊にする発想が素晴らしかった。

 最近だと、南瓜スープに塩茹での温野菜は、本当に胃に負担がなく考えられた献立だ。


 そんな素晴らしい数々の病人食。

 その中でも、とっておきが今回のこのお粥だろう。

 どこから米を調達したのか謎ではあるが、お粥自体が作れたことも更に驚かさせる。



「リリィ、お米なんてどうやって?」



 俺は質問せざる終えなかった。

 今後の俺の食事に影響する可能性が大なのだから。

 


「将棋しながら・・・前に・・・言ってた・・・だから・・・探した。」



 将棋、将棋・・・あああ、思い出した。

 ドワーフを探しに言ったあの時か。

 確かに将棋を指しながらの雑談で、お米の話をしたっけな。

 色、形、炊き方、触感をどんなのか話したな~

 良く探し出したものだ。



「探すの大変だったろ?」


「ん・・・ザルツ・・・あった・・・ちょっとだけど・・・幾つか・・・村で。」



 マジか?!

 ザルツ王国に来てよかった!!!

 これ、栽培している所と、元気になったら交渉だな、うん。



「早く・・・食べる・・・冷める・・・不味いよ。」


「ああ、ありがとうリリィ。ありがたく食べるよ。」


「ん・・・」



 俺はベットサイドテーブルをアデーレに用意してもらい、そこに玉子粥を置き、レンゲで掬って食べ始める。



「「「あ!・・・ぁ」」」



 俺が玉子粥を口に含むと、残念そうにする3人。

 俺としては、申し訳ないと思う傍ら、リリィの作ったお粥を食べたい気持ちの方が勝ってしまっているのだ。

 玉子粥を満足そうに食べる俺を見て、リリィは嬉しそうにする。

 そして、あろう事かアリスに向って誇らしげにニヤリと笑う。


 ん?

 最近、リリィは事ある毎にアリスに対抗しているのは薄々感じていたのだが。

 こういった俺の困った状況を掬ってくれるときには、しなかったのに。

 俺が不思議に思っていると、リリィは満足したのか素に戻る。


 だが、リリィの態度に素のままでいられない人が居た。

 そう、アリスだ。


 俺が見る初めての対戦カードが今始まる。



「っく・・・リリィ、どうしても私を敵視するのか?!」



 アリスはリリィに向って苛立ちげに言う。

 まあ、あんな『小馬鹿にした笑み』を向けられたら我慢できないかもな。



「っふ・・・アリス・・・偽妹・・・私・・・本物・・・」


「なんだと!私こそ本物で、リリィは妹でも何でもないだろ?!」


「妹・・・違う・・・確かに。でも・・・仲間・・・妹的存在・・・譲らない・・・」



 ああ~何となく納得した。

 そうか~リリィにとって俺は仲間で、更に俺の妹的なポジションを気に入ってくれていたのか。

 そうかそうか~

 ん~トシ兄は満足でちゅよ~

 つい、赤ちゃん言葉になる俺・・・反省。


 しかし、アリスが来たことで微妙になったのはイシュタルやシルビアだけではなかったのか。

 リリィもまた葛藤してたんだな~

 俺はリリィの心境を少し知ったことが嬉しかった。



「っふ、妹的存在だと笑わせるな!私以外に兄上を妹として喜ばせることなど出来んわ!」


「・・・やってみる・・・私・・・勝・・・」


「ほおう、自信たっぷりだな。ならやってみるが良い。私以外は有り得んがな。」



 どうやらリリィには勝算があるようだ。

 この発言は、イシュタルとシルビアは勿論の事、アデーレまで驚嘆させる。

 だってリリィがアリスのように俺に甘える事は無いのだから。

 どうやって妹として勝つのか、皆興味津々なのだろう。


 皆の目がリリィに集中する中、アリスは徐に口を開く。

 それは俺以外全員の心を鷲掴みにする破壊力があった。



「と・・・トシヤお兄ちゃん・・・ううん・・・トシ兄。早く食べて・・・元気なって・・・ね。」



 ぐっは~~~~

 何子の可愛い生き物。

 頬を染め、照れながら『トシ兄』といってくれるリリィ。

 しかも妖精の血が入っているせいか、かわゆいのだ最大に。

 愛くるしさと恥かしさが、リリィを愛おしくさせる。

 更に、初々しさが合い間って萌る事間違いなし。


 俺の感想を肯定するかのように全員リリィにデレデレだたった。

 そんなデレデレ雰囲気の中、アリスだけが最初に気を取り戻す。



「んな!そんな馬鹿な・・・有り得ん!認めんぞ!・・・こんな可愛い生き物!!」



 ああ、アリス認めてるよそれ。

 アリスの狼狽は、リリィも解った様で、照れ臭さはまだ残ってはいたが、振り向きアリスに向ってドヤ顔を見つける。

 その際、胸を張って手を腰にして、ふんぞり返る仕草がまた可愛い。



「・・・どう?トシ兄は・・・喜んでる・・・鼻の・・・下・・・ノビノビ・・・」



 そう、リリィの指摘どおり俺はデレデレで鼻の下伸びまくリングだ。

 だって、やっとリリィが『トシ兄』と呼んでくれたんだよ?

 前に頼んで、断られた時はかなり凹んだのに。

 今目の前で、願いが叶っているんだもの。


 あんぐりと口をあけていた面々も徐々に正気に戻る。

 イシュタルは『負けた・・・悔しいけど・・・あああ、ロリのがいいの?ロリのが』とブツブツ言っている。

 シルビアは『あの破壊力・・・トシヤ様はやはりロリ属性が・・・』などと相変わらずの設定萌を拗らせている。

 そしてアリスは・・・



「う・・・うう・・・こんな子にデレるなんて・・・お兄ちゃんの・・・お兄ちゃんのバカ~~~~~!!」



 と叫んで部屋から出て行った。

 流石に泣かれたのが以外だったのか、リリィも申し訳無さそうな顔になっている。

 俺もまさか泣くとは思っていず、アリスの意外なメンタルの弱さに驚いた。

 昼にでもフォローしておくか。

 アリスも悪い子ではないからな。

 

 こうして朝の喧騒が終わり、また1日が始まった。

 この後も色々と看病合戦はあるが、今はゆっくりしたい。

 また今後、未来の何時か、思い出した時に懐かしく思えば良い。


 朝食も終わり、一旦皆も引き上げていく。

 料理は勿体無いので、こっそり全部食べました。

 もちろん状態異常耐性により事なきを得たが、興奮は俺の下半身を直撃している。

 1人で何とか耐えないと・・・


 昼も同じ様にまた騒がしいのかな?

 それでも看病してくれる人がいることに感謝して眠りに付く。



「ルビさん、俺幸せだろ?ありがとう。」



 生き返る時、久しぶりに聞いたあの声の主ルビさんに感謝する。

 ルビさんも一緒だったらな・・・

 そんな無理な事を考えながら、意識を手放した。

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