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49番目の後継者  作者: ペンギンMAX
第三章 新たなる旅、ザルツ王国
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第三十六話 魔族が戦いを挑んできたけど、ヤンキーみたいだった。

 王佐フィりポスは王宮の1室で渋い顔をしていた。

 前任者より引継ぎを受けてから、彼とは長い付き合いだ。

 ただし、彼を好ましく思った事は一度もない。

 彼の名はバヴェルと言う。


 黒い肌は見るものを嫌悪させ、頭には毛が無く、代わりに3本の角がある。

 目は赤く瞳は金色に輝き、大きな体格は鍛えられた筋肉で覆われている。

 誰もが一目見れば理解し、恐怖する姿。

 彼は魔族だった。


 何時頃から、この国に関わっているかは解らない。

 フィリポスが知る限り、王国の創成期からその名が文献に見られるほどだ。

 初代デリオス国王りファルト一世の御世から、影の部分を担当していた事も噂に聞く。


 国が出来き、繁栄して行くにはそれ相応の謀略が謀られる。

 騎士道や道徳だけでは、国は創れないし成り立たない。

 だからこそ誰にも言えない、汚く狡賢い仕事は幾らでもある。

 現在でも、王が知る知らないに関わらず、謀略は張り巡らされている。


 王佐はその暗部を仕切る役職でもある。

 王の補佐とは、王の影でもあるのだ。

 必然的に影に隠れる汚い仕事を多くこなす。

 そんな時、魔族の力は大いに役立つのだ。


 普段の暗躍は、ダークエルフなどの非正規部隊に行わせている。

 それでも、国に所属する部隊は部隊だ、足が付く事がある。

 他国に自国の謀略を気取らせるわけにも行かない。


 ましてや外交問題にすることなどもっての他だ。

 非正規部隊である事を理由に、惚ける事も出切る。

 だが、何の証拠も存在も疑われない事は、謀事では一番効率がいい。

 その点、足の付かない魔族は使い易く望み通りに事が運ぶ。


 時には、非正規部隊すら不要な時には切り捨てる。

 暗躍に携わった者たちを亡き者にする事は多い。

 口封じは有効な手段だ。

 そんな時も、バヴェルは重宝するのだ。


 もちろん、魔族を使えば当然見返りを要求してくる。

 その要求さえ呑めれば、魔族との協力関係は維持できる。


 魔族の要求は様々だが、今までずっと目を瞑れば良い範囲で収まって来た。

 金品、魔道書、武具に頼み事。

 国を強くするためには些細な出費だ。

 

 たまに条件を付けた人族や亜人を要求する事もある。

 それらは奴隷を差し出せば済むもの。

 魔族の要求は、今の所フィリポシのとって差して問題は無いものばかりだ。

 


「っち、やっぱ~しくじった様だな。」



 目を閉じ、座っていたバヴェルが吐き捨てる。

 彼は送り込んだダークエルフの監視をしていた。

 それが今日になって問題が起こりそうだと呼び出されたのだ。

 

 バヴェルはこの件を、事の他気にしていた。

 珍しく率先して行動している。

 どんな能力を持ち、どんな手段を持って監視しているのだろうか?

 それに此の件で、何か問題が生じたのだろうか?


 バヴェルはダークエルフの行動を掴んでいた。

 近況報告でも詳細な内容が聞ける。

 魔族とは実に不思議な存在だ。



「失敗か?」


 

 彼の言葉を聴き、問うて見る。



「バレて飛び出してきたな。仕方ねーな回収すっか。」



 今回の仕事は、些細なものだ。

 上手くいけば良い程度のもの。

 決して本気で勇者を篭絡する気などない。

 要は、あのような力を持つ人物を常に監視下における事が重要なのだ。


 監視すると言ってダークエルフに仕事させると襤褸が出る。

 故に、篭絡という手段により、ダークエルフを受け入れやすくしたのだ。

 なにせ、勇者は女に滅法弱い事が判明しているのだから。 

 上手くダークエルフが取り入れればそれでいい。


 それが失敗したのだ。

 だが、失敗したからといって此方が引く事もない。


 当然、バレた時の対処は決めてある。

 当初の手筈どおり、ダークエルフを引上げさせるべくバヴェルに動いてもらう。

 生かすか殺すかはバヴェルに任せてある。

 どちらでも何の問題も無い。


 早速、代わりの美女候補を考える。

 決まればまた、準備して送り込めば良いのだ。

 もちろん此方の動きを読まれていたとしても一考に構わない。

 最終的に勇者を継続監視出来れば良いのだ。


 運良く、送り込んだ女性が御手付きになるのも良い。

 その上、子が出来れば尚良い。

 そうやって勇者が気に入った女性を、あえて帰還させ人質にする。

 そうすれば彼は王都に、ひょこひょこ連れ戻しに来るだろう。

 どう転ぼうと、監視が出来、あわよくば此方に引き入る事が出来たら良いのだから。

 後はどんな方法を使っても懐柔すれば彼の力は此方のものだ。


 

「お?追いかけてきたぞ、奴はアレを気に入っていたのか?」



 バヴェルの言葉に、フィリポスは気色ばむ。

 思っていた以上に好色家だったようだ。



「ほほ~それはある意味好都合だな。」



 期待していなかった案件が、思った以上の効果を引き出しそうだ。

 その事にフィリポスは満足げになる。



「あれが勇者か~おもしれ~やってみてーなー、此処に来たら手合わせしてーなー待ってた甲斐があったぜ!やっと暇潰しも終わるな~」



 一瞬にしてフィリポスの顔は凍りつく。

 折角、勇者が此方に来て懐柔策を弄するだけと思っていたら、バヴェルが馬鹿な事を言い出すからだ。

 魔族と勇者が此処で戦えば、被害は甚大になる。

 ただでさえ、こいつら魔族のお陰で2回も化け物騒ぎで王都は傷付いているのに。



「此処は王都だぞ、自重しろ。」


「ああああん?何言ってんの。俺に指図するのか?!」



 勇者がダークエルフを気に入った事も以外だったが、バヴェルの言葉にも驚く。

 普段こんなにも感情を出した事がない。

 むしろ興味なさげに、此方の仕事を手伝っていたのに。 

 何が彼を駆り立てるのか?


 このまま勇者と鉢合わせたら、2人の戦いが現実味をおびて来る。

 フィリポスはバヴェルの気迫に押されながらも彼の真意を聞こうとする。



「バヴェル、本気か?勇者を懐柔する事に積極的だったのは此の為なのか?」


「あ!?本気も本気~こんな楽しい事は500年ぶりか?!待ってたんだよ、俺が本気で戦える相手が見付かるのをよ~」


「5・・・百年・・・まさかお前はそんなことの為に我らに加担していたのか?」



 まさかの爆弾発言。

 フィリポスはバヴェルの言葉を信じきれない。


「ずーっと待ってたんだよ俺が暴れるに値する奴があらわれるのをよ~。まあそう言っても俺達にゃ時間は有り余ってるからよ~暇つぶしには良かったぜ?この国のお守り。それにな~ダーラムもいたしな~楽しめたんだがな~。そのダーラムが殺されたって言うじゃない、その勇者ってのがさ~」



 ダーラムか!

 フィリポスは彼の研究も後押ししていた。

 獣人を使って強力な兵士を作り出す、そう聞いていた。

 だから私も懸念はあったが国益も考え容認していたのだが・・・

 

 実態はただ我々には制御不可能な化け物を生み出しただけ。

 勇者により殺害され、私はホッとしていた。

 余計な心配の種が減り、ダーラムが死んで要らぬ心配をする事がなくなったからだ。

 

 それに彼の為に、王都は既に被害を被っている。

 このまま、また魔族の暴走を許せば同じ結果が見えている。

 御し難い魔族は要らないのだ。



「バヴェル、我々は協力関係だ。ずっと王国は魔族に便宜を図ってきたつもりだ。ここは引いてはくれまいか?」


「あああん?おめーにゃあ解らねーよ。500年、何も出来ない悔しさなんてよ。上の連中は頭使って何かしようとしてるみてーだがな。俺には退屈なだけだ。やっとおもしれー事が起こりそうなのに、俺の邪魔をするんじゃねえ!」



 今までの従順さが嘘のように、引く気のないバヴェル。

 コイツは何を言っているんだ?



「王都での戦闘など許さん!」


「ああ!!ん!テメーいい気になってんじゃねーぞ!」


 

 一気に魔力を纏い威圧してくる。

 フィリポスは戦慄した。

 


「俺はクソつまんねーお前達のお守りをずっとやってきたんだよ!もう面倒くせー!上の考えとか、お前らの国なんぞ知ったものか!邪魔するな!」


 

 どうしてこうなったのだ?

 今まで魔族と上手く行っていた筈なのに。

 ダーラムといい勇者が現れてから、おかしな事ばかり起こる。

 関わらなければよかったのか、勇者に?


 バヴェルも何故言う事を聞かない?

 私の代で、王都を何度も魔族に破壊されるのか?

 私が魔族との交渉に失敗しているのか?

 


「そうだ!欲しいものは何でもやる!王都での戦闘は避けてくれないか?」



 今度はバヴェルに餌をチラつかせてみる。

 威圧ではなく下手に出てみればどうか?

 フィリポスはバヴェルに媚びてみた。

 そうする事で事態の収拾がはかれるなら土下座でもしよう。

 しかし、バヴェルには全く効果がなかった。



「もう何もイラねーよ。俺は戦って楽しみたいだけなんだよ~てめえの餌なんか屁でもねえ。」



 もはや止める事はできそうにない。

 フィリポスは魔族を止めるべく行動に出ようとする。

 兎に角、バヴェルを止めなければならない。

 

 今から衛兵を集めるか?

 いや、それとも破邪の結界を使うか?

 可能性のある全てを考える。



「止めておけ、無駄だ。」


 

 だが、その思考すらもバヴェルに読まれる。



「そうは行かん!私の・・・私の代で失策などありえん!」


「そうか。」



 バヴェルが手を翳した瞬間、王佐フィリポスは闇に飲まれ消え去る。 

 己が魔族を利用していると思い込み続けたフィリポス。

 連綿と続く王国と魔族の協調関係に、本来の魔族に対する畏怖と懐疑を忘れていたようだ。

 フィリポスが消えた空間を一瞥しただけで、バヴェルは部屋を出て行く。

 

 

「ゲートか、何処に出るかも見えるな。」



 バヴェルはトシヤの向かう先を予見していた。

 久々の戦闘に身震いするバヴェル。

 ようやく楽しみが出来た事にバヴェルは喜んでいた。


 500年前、自らの全力をだしても届く事の無かった竜の姿。

 魔族でも適う相手が居無いほどに強いと自負していた自信を木っ端微塵にしてくれた存在。

 初めて味わう敗北と屈辱。

 だが、同時に沸き上がる羨望と嬉しさ。

 戦う事が面白いと感じたあの瞬間。


 バヴェルにとって、あの日は忘れる事のできない日々。

 だから、ずっとあの日の再現を待ち、常に力あるものに戦いを挑んできた。

 その為に、魔族の上の指示に従いデリオス王国の暗部を助けてきた。

 人族の謀は面白いし役に立つ。

 力ある者を知るにも挑むにも重宝していた。


 バヴェルはここ数日の監視で、ダークエルフの目を通して観察していたのだ。

 彼の能力は『投影の魔眼』と『託宣の眉目』だ。

 『投影の魔眼』は生まれ持った固有スキルで、対象とした人物が目で見るものを、己も見る事が出来るというもで、『託宣の眉目』は目を閉じ眉間に魔力を集中する事で、ある程度の先の未来を見通すものだ。

 もちろん意識し集中しないと効果が出ないし、見える未来も数時間先までだ。

 なので、戦闘には不向きで役に立たないが、だがこういった場合には相手の行動を知るのに便利なのだ。


 バヴェルはずっと、ダークエルフの目を通して勇者を見続けた。

 だから確信を持って動いたのである。

 奴はもしかするとあの竜と同じく、何か特別な力を持っている。

 今までの奴らと違い、命令に背いてでも戦う価値がある。

 そうバヴェルを駆り立てるのだ。


 

「さって、行くとするか~」



 間延びした台詞と共に闇の中に消えるバヴェル。

 向かう先は、勇者の向かう屋敷。

 バヴェルの心はもう戦いの事で一杯だった。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 俺が王都内のランドルフィ卿邸宅に着いた時、そいつは居た。

 邸宅は破壊され、瓦礫の散らばる中、奴は立っていた。

 その巨躯と風貌から好戦的な性格だと知れる。


 魔族の横には、何処をどうやって来たのか羽持ちの魔族が控えている。

 しかも、アリスまで連れてだ。

 『ゲート』を使った俺よりも早く来た事が、魔族の底知れなさを感じさせる。



「よう~待ってたぜ~」



 なんとも緊張感の無い声で魔族は声をかけてくる。



「アリスと屋敷の人は無事なんだろうな?」



 俺は地面に横たえられているアリスの無事を確認し、更に破壊された屋敷の状況からランドルフィ卿家族の安否が気になった。



「あああん?アリス?ああ、このダークエルフか。無事っちゃー無事だがな今のところ。屋敷は邪魔なんでぶっ潰しただけだ。人族なんぞ知らんわ。」



 バヴェルは屋敷を破壊した事など気にする風もなく答える。

 屋敷の残骸から見るに、人が巻き込まれた可能性を捨てきれない。

 


「アリスを帰して欲しい。そうすれば俺は何もせずに帰る。」



 魔族と事を構えると何時も碌な事がない。

 だから大人しく返してくれるなら、そのままザルツに引き返すつもりだ。

 デリオス王国の事は、正直もうどうでもいい。

 あんまり良い印象が無いからな。

 人で無しっぽくも聞こえるが、正直な俺も気持ちだ。



「おかしな奴だなーダークエルフがそんなに良いのか?確かに綺麗だが卑しい種族だぜ?こんな女にご執心なんざ変わってやがるな~」



 ゲラゲラと大笑いする魔族。

 俺は異世界から来た。

 だから卑しいとか種族とかそんな些細な事はどうでもいい。

 逆にこの世界の住人が、俺にとってどれだけ素晴らしいか解ってない!

 俺は、無意識のうちに魔族に向って叫んでいた。



「馬鹿かお前は!ダークエルフっていやー定番も定番、おっぱいとお色気を担当する最高のキャラだろ!!」


「・・・あ?おめえ何言ってるんだ?」



 俺の魂の叫びに魔族は唖然とする。

 だって言ってやりたかったんだよ。

 異世界に憧れる誰もが好きな種族。

 エルフ・獣人(特に耳!)・妖精・ダークエルフ・・・

 賞賛しかないだろ!

 

 俺は魔族を睨み、興奮して鼻息を荒くする。

 俺の態度の変貌に、ペースを乱される魔族。



「ああ~っまあいいや。俺はバヴェル、魔族だ。お前と戦いてーんだわ~」



 ペースを戻しながらバヴェルと名乗る魔族は言う。

 俺と戦いたいだと?

 棒スレッドの【お断りします。】っだ。



「ああ!?その顔は興味ね~っって思ってるな。」



 以外に空気の読める奴だな。

 おれは感心しながらも肯定する。



「っち、そう来るとは思ってたけどよ~人族ってのは面倒だな~ったくよ。まあ仕方ねーな~どうしてもやってもらうぜ~」



 バヴェルはアリスの頭を掴み顔を上げさせる。

 気を失っていたアリスは、苦しさの余り意識を覚醒させつつある。

 


「う・・・っく・・・かは・・・」


「アリス!」


「・・・お・・・おにいちゃん?・・・」


「ああ、お兄ちゃんだ!待ってろ助けるからな!」


「・・・お・・・おにいいちゃ・・・ん・・・助けて・・・」



 俺を兄と勘違いし、涙を流して助けを請うアリス。

 バヴェルは俺とアリスのやり取りを見て、満足した顔をする。



「おお!いいね~流石人族の反応だわ~お前ら最高!これからよ、ぜってーに戦う気になるようにしてやっからよ。」


「何をする!止めろ!」


「あああん!何ってこうすんだよ、ほれこの奴隷の首輪が目に入るか?これをよ、魔力を込めずに嵌めるとどうなっか知ってるか?」


「ど・・・どうなるか?だと・・・」


「なんどよおめーは、そんなことも知らねーのかよ。」



 バヴェルは呆れた顔をして俺を見る。

 アリスは奴隷の首輪を見て、意識を取り戻すほどに驚愕している。

 いったい何が起こるんだ??



「・・・あああ・・・やめ・・・て、助けて!!・・・お兄ちゃん!!」


「うっせーよこのアマ!」


「アリスから手を離せ。」


「ああ?出来るのかおめーによ。解ってんだろ?俺に攻撃できない事が。んん???!」



 そうなのだ、いつもなら速攻で力を使い攻め立てるのに、俺は躊躇している。

 直感が俺に警告を発し、動きを止めているのだ。

 たぶん、このバヴェルは相当強いのかもしれない。



「でだ、説明してやんよ~知らねーと、おめーが必死にならねえからな。この奴隷の首輪な魔力を込めて嵌めるとだ~、魔力を込めた奴の奴隷になっちまうのは知ってるか?」


「ああ、それは知っている。」


「っけ、そっちは知ってるのかよ。やっぱおめーはスケベなんだな。」


「ほっとけ!!」



 どうもこのバヴェルと言う魔族は飄々としたとこがあって掴み所が無い。

 会話のキャッツイボールが微妙にし辛い。

 ヤンキー口調なのが実に話しにくいのだ。



「うんでよ~奴隷の首輪を魔力を込めずに嵌めるとよ~、主の居無い奴隷状態になるわけよ~解っか?つまりよ~命令される存在が無い奴隷。いつまでも主の命令を待つ待機状態になっちまうって訳よ~」


「それは、誰かが命令すればいいんじゃないのか?」


「あああん?解ってねーな~誰も主じゃないんだぜ?何時までも動く事は出来ないのに意識はあり続ける地獄の苦悶。死ねない、生きれない、こうして廃人になっちまうってわけさ~」



 またもやゲラゲラ笑うバヴェル。

 アリスは震えて泣いている。

 動けずただ成されるままの自分に恐怖し、俺に助けて欲しいと。



「そんな事させない!」


「っけ、させるも何もこうしちゃーもうおめー何も出来ねーべ。」



 バヴェルは無造作に、頭だけを必死に振り抵抗するアリスの首を空けさせ奴隷の首輪を嵌める。

 


「やめろ!!!」



 叫びはするもののバヴェルはもう首輪を嵌めてしまった。



「ああああ・・・・・・・・・・・・・・」



 悲痛な呻き声を上げたかと思おうと、口を紡いで声を出さなくなる。

 アリスは首輪を嵌められると、人形の様に動かなくなり座り込んでしまった。

 その顔からは精気が失われ、目も焦点が合っていない。



「っは!どうだよ!もうどうしようもねーぜ?」



 笑いながら俺を見るバヴェル。

 俺は怒りを露にし、刀を取り出し鞘から抜き放つ。

 


「そうだ!それでいいんだよ~」


「殺してやる!」



 怒りに震える俺にバヴェルは言う。



「舞台はできたがよ~おめーにゃあ真面目に実力を出して貰いてーからよ。1ついいことを教えといてやるよ。」


「なんだ、もうお前を殺すだけだが。」


「実はな・・・」



 バヴェルの言葉に驚きつつも冷静さを取り戻す。



「そんなことが可能なのか?」


「ああ、嘘わいわねーよ。その代り、おめーは全てを出せよ?」


「ああ、わかった。」


「うんじゃあ、やるか!」



 俺とバヴェルの戦闘が始まる。

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