第三十五話 お兄ちゃんと呼ばれて本気になっっちゃった
アリスと一緒に迷宮に来て暫く経つ。
しかも2人っきりの迷宮攻略だ。
必然的にイシュタツ達にかなり反対されたが、今は納得している。
別にアリスを狙ってデートみたいにしてる訳じゃないよ。
俺達にLVが合わないから、こうなった訳で・・・
皆で70層に向う為にも、アリスのLVを引き上げているのだ。
「アリスほら止めだよ。」
「うん♪お兄ちゃんありがと~~」
年上なのに甘えた仕草が可愛らしい。
俺にだけ見せる笑顔は非常に心を和ませる。
しかし、顔の下は別だ。
アリスはかなり露出の効いた装備をしている。
胸だけを覆うミスリルの胸当て。
ハーフカップブラを想像させる造りは目に毒だ。
臍は丸出しで腰にしか次の装備がない。
つまりお腹全部見える。
下半身装備はバックプレイト・キュートレットがお情け程度に付いたハイレグ皮パンツ。
そんな装備で大丈夫か?
大事な所守ってるか~~いっと言いたくなる。
戦闘で動く度に大きく揺れる胸!そう胸!!
上半身の固定部分が少ないので揺れる揺れる・・・
先っぽ見えちゃぞ?
更に刺激的なのはお尻。
動けば見える半ケツは非常に情欲をそそる。
前に廻れば食い込みがぁぁぁぁあ。
褐色の肌に写る装備は白。
くっきりと浮き上がらせるアリスの肢体は艶かしさを増している。
こんなにも白黒が卑猥に見えるとは思わなかった。
もう目のやり場に困ってどうしようもない格好だ。
何度か注意したが『お兄ちゃんの好きな格好がしたいんだもん♪』
と聞き入れてくれなかった。
アリスの兄貴ってどんな趣味してたんだよと小一時間説教くれてやりたかった。
俺が身動き取れなくした敵に止めを刺し戻ってくるアリス。
「またLV上がっちゃった、へへ♪」
得意げにLVを報告するアリスに、俺は手を頭に載せて撫でる。
確か近所の子に慕われて、兄として接したときもこうしたっけ。
そのまま優しく頭を撫で続ける。
「大丈夫、俺がいるんだからね。」
頭を撫でられ喜んでいたアリスは、ギョッとして俺を見た。
え?俺変な事言ったかな?
マジマジと俺を見詰めていたアリスは、頭を振って笑顔を作る。
「ん?何でもないよ。お兄ちゃん♪」
アリスが『さあ、もっと狩りしましょう~よ~』と言うので続きを始める
毎度恒例の、迷宮60層での接待LV上げだ。
アリスの戦闘スタイルは、右手にレイピア、左手にマインゴーシュ。
グラディエイターを地で行くバリバリの前衛だった。
ユニークスキルの効果は、アリスの体をミスリル以上の硬さにする。
固有スキルによって、幻影を纏い、相手の攻撃を無効化もする。
かなり優秀な前衛といえるだろう。
ダークエルフの印象が変った。
シルビアと比較する。
シルビアがパワーとスピードとすれば、アリスは防御とクリティカルといった感じか。
特に短剣での攻撃をいなす動作が素晴らしい。
レイピアはパワーに欠けるが、繰り出す突きが急所を確実に捉える。
「じゃあもうちょっと上げてしまおうか」
「うん♪」
幾度かの戦闘をこなしアリスは目標のLVに到達する。
LV50。
これで今度からPTで行動できるな。
そう思い、今日の迷宮攻略を終わらせる。
地上に戻り家に帰ろうとするとアリスが駄々をこね出した。
「お兄ちゃん、もう2人っきりは今日が最後だよ~ここでもう少し一緒にいたい!」
俺の袖を掴んで甘えた声を出す。
確かに今日で最後か。
まあ予定より早い時間だし、良いか~
「良いよ。」
「えへっへへ♪」
アリスと一緒に座り、お話タイムだ。
お兄ちゃんとまた一緒で嬉しい♪
俺も嬉しいよ。
まだ信じてないようだけど、絶対思い出させる。
ん~思い出すかな?
お兄ちゃんは私だけのもの。
そうかそうか、俺だけか?ハハハハ。
お兄ちゃんと私は、こんな事があったの~
俺ってそんなだったの?
お兄ちゃん、もっと聞いてよ~
うんうん。
聞いてるよ~アリス。
アリスの話に相槌を打って聞き役に廻る。
兄の話になると本当に幸せそうにするんだもん。
兄の話が一段落すると、今度は俺のことを聞いてきた。
何故そんなにお兄ちゃんは強いの?
元々だよ~
何故そんなにいい装備なの?
ちょっと訳ありでね~
何故そんなに優しいの?
ん~地かな?
何故そんなに我慢するの?
ふぇ?なにが?
「我慢しなくて良いんだよお兄ちゃん・・・私・・・お兄ちゃんなら・・・」
行き成りの展開にしどろもどろの俺。
胡坐をかいていた俺の上に座ってくるアリス。
程よい張り、柔らかな肉感、漂う色気。
そして、香るフェロモンは俺の下半身を直撃する。
更にアリスは、俺の顔にグッと胸を押し付けてくる。
必然的に俺は顔を胸に埋められ、アリスの両手に抱き込まれている。
耳元で悪魔の囁きが聞こえる。
「お兄ちゃん・・・もう我慢できない・・・フ~~~~~」
耳に息を吹きかけられ、ゾクゾクと背筋から腰に快感が伝わる。
チャームすらレジストする俺が、魅了されている。
それ程までにアリスの色気が凄まじいのだ。
「らぁめら、ありゅす・・・おっほ~~~」
間抜けな声を出し、色香に惑わされる俺。
自然と手がアリスの胸に吸い寄せられる。
手を胸当ての隙間から入れて、先を弄ろうとする。
俺の手に蹂躙される胸の感覚に、アリスは必死に堪えていた。
堪えていた?
堪えて?
おぼろげに聞こえる俺の声。
無意識にアリスの口を塞ごうと迫った瞬間。
「ああ、いや・・・だめ・・・兄上・・・」
涙を浮かべ顔を背けるアリスを見て意識が戻る。
兄上。
堪えるっか・・・
「アリス、あんまりお兄ちゃんを苛めないでくれないか?」
「・・・え?あ・・・うん、ごめんね~お兄ちゃん♪調子に乗っちゃったテヘ」
今のやり取りを取り繕うように、元通りになるアリス。
俺は、ワザと誘惑に困惑した演技をしてアリスと向き合う。
アリスの行動の意味。
俺を誘惑したいのに、体は受け入れてくれないのだろう。
このままでは気拙いので帰る事にする。
「帰ろうか」
「うん」
さっきの事は無かった事にして『ゲート』で家に帰る。
帰った先で、イシュタルとシルビアの視線が痛かった。
女の感が働くのか、俺とアリスを猜疑心に満ちた顔で睨んでいる。
夜になり、何時ものようにイシュタルとシルビアが部屋に来る。
ただし、2人の様子から甘い時間を過ごす為ではない事が解った。
「どうしたの?」
「トシヤ、アリスの事、解ってるんでしょ?」
「何のこと?」
「アリスがデリオス国の間者だという事ですよ、トシヤ様。」
え?
流石に俺が兄じゃない事は解っていた。
今日の事で何か事情がある事も察したけど・・・
間者とは思いも付かなかった。
俺が驚く姿に呆れる二人。
「まさか、本当に気づいてないとは・・・」
イシュタルは諦め顔に俺を見る。
いや、すんません。
「流石の私も驚きますトシヤ様、お人好しが過ぎますよ。」
シルビアは少し笑ってそういった。
ごめんね、何時もこんなんで。
「兎に角アリスは間者に間違いないわ。彼女が此処に来た経緯を調べたのよ。」
「町に入った様子や、どういった繋がりがあるかも情報屋から買い付けましたし。」
情報屋!何それカッコイイ!!
シルビアはマジこっちで有能さが際立ってきたな~
参謀になっちゃうの?なっちゃうの?
ゴホン・・・はしゃぎすぎた。
イシュタルとシルビアは、家で待っている間に奔走してくれたらしい。
お金に物を言わせ、色々と情報を集めて結論を出したようだ。
「で、どうするの?」
イシュタルの問いかけに、俺は今日のアリスを思い出す。
「ん~このままでいいんじゃね?兄の事は本当だと思うぞ。だからその辺は信じれるしな~」
「「はぁあ??」」
「いや、別に何があった・・・あったん~無い、そ、ある訳じゃないし危険は無いと思うよ。」
俺の言葉に見る見る顔色が変る2人・・・
いや口がその・・・すべっちゃった。
「やっぱり何かあったのね!あったのね!ふふ・・・はは・・・ト~~~シ~~~ヤ~~~」
「やはり、兄妹ものの禁断さに負けたのですか!!」
「見せなさい!今日何があったか確認してあげる!!」
「そうです!確認しましょう!!」
やめて~~~
ズボンを脱がさないで!
俺の浮気を疑う2人の行動はエスカレートする。
ベットに押し倒され、衣服を脱がしに掛かってくる。
いや、甘い雰囲気ならいいけど、こんなのは萌えない!
その瞬間俺の直感が働く。
ドアの向こうに人がいる。
そうアリスだ。
「アリス、聞いていたのか?」
途端に、俺を手篭めにしようとしていた2人もドア口に目をやる。
「知っていたのか。もう演技も必要ないか。」
「まあ、間者とは思って無かったけどね。」
「何故だ?私の行動に付き合う義理は無かった筈だが。」
「ん~俺さ最近思い出すのよ。妹っていうか近所の子でね。俺の事お兄ちゃんって慕ってくれてたの。」
「・・・・・・・」
「懐かしくってさ、つい嬉しくなってたのさ。それに愛する人を失った気持ちは理解できるから放っとけなかったからかな~」
「気持ちだと・・・貴様に・・・何が解る!簡単に言うな!」
「アリス!トシヤは本当の事を言ったわよ!トシヤは・・・トシヤは・・・もっと過・」
「いいよ、イシュタル。言わなくて。」
「でも、トシヤが・・・」
言い合いの最中、アリスは諦めたように嘆息して踵を返す。
「何処に行くんだ?」
「正体がバレタのに留まる馬鹿はおらぬは。」
そういって家を出て行った。
俺達はアリスを止める事無く見送る。
また誰か来るかもしれないがその時はその時だ。
気を取り直して乱れた衣服を直す。
イシュタル達も気分的に盛り上がらないのでお茶を飲むと言う。
2人が出て行くと、珍しくアリスが部屋に来た。
いやいやロリタイムは始まらないよ?
「・・・トシヤ・・・アリス・・・危ない。」
「ふぉ?」
事情をアリスに聞く。
どうも家の周辺に只ならぬ気配があるらしい。
気配の詳細は見えないが、魔族かもしれないとの事。
俺は慌ててアリスの後を追う。
イシュタル達は俺の行動を察してか、止めてきた。
「行く必要ないじゃない!あの女に気があるの!?」
「いや・・・なんて言うかさ。可哀想じゃん・・・このまま死んだりしたら俺後悔しそうだから。」
「全くトシヤ様のお人好しが此処までとは。」
「ほ~~~んっと、馬鹿よね~」
「馬鹿で悪い、ごめんよ。」
「いいわよも~好きにして来なさい。」
「ええ、お好きに暴れると宜しいかと。」
2人は俺を呆れながらも送り出してくれた。
嫉妬もあるだろうに、俺の我侭を聞いてくれる。
本当に俺には過ぎた2人だよ。
追いかける事を理解してもらい勢い良く駆ける。
アリスを探すには直感を頼った。
いた!
アリスは魔族に抱えられている。
周りからは複数の気配。
魔族を逃がすように、手下と思わしき魔獣が襲ってくる。
刀を取り出し、向ってくる魔獣を撃退しているとアリスを抱えた魔族は飛び去ってしまった。
「っく、邪魔だ!!」
竜闘気と肉体強化を最大限に聞かせて魔獣の中を突っ切る。
すでに空高くまで飛翔している魔族。
地面を踏みしめ、両足で思いっきり蹴り上がる。
空高く舞い上がるも、後一歩届かない。
手を伸ばせば届きそうなのに・・・
「・・・お兄ちゃん?・・・」
聞こえるアリスの声は小さくなっていく。
アリスは魔族と共に、空の彼方に消えていった。
地面に降り立ち、残った魔獣を一掃して家に帰る。
帰って来た俺を見て、イシュタル達が事情を察して助言してくれる。
「トシヤ、アリスはデリオス王国から派遣されていたわ。」
「どうしますか?トシヤ様」
「皆には迷惑を駆けるかも知れないが・・・俺は行く。」
「そう・・・デリオス王国と喧嘩しちゃうの?」
「最悪は・・・な。」
「まあ、何があってもトシヤに付いていくだけだし、いいわよ。」
「私もそうです。」
「・・・トシヤ・・・頑張れ・・・」
「直ぐに行ってくる。」
俺は『ゲート』を使いデリオス王国に向う。
向かう先はランドルフィ卿邸宅。
あの人に聞くしかないだろう。
失脚している事も知らず、俺はデリオス王国へと帰っていった。




