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49番目の後継者  作者: ペンギンMAX
第三章 新たなる旅、ザルツ王国
34/41

第三十四話 見知らぬ女性から変な事を言われた

 立ち上がり俺を見詰めるダークエルフ。

 見詰められ、ちょっと照れる俺。

 だって綺麗なんだも~~~ん。


 ストレートロングの長髪はプラチナゴールド。

 シルビアを白銀とするなら、こちらは白金。

 

 顔立ちは大人びていて美しいお姉さん。

 瞳はエメラルドグリーンに輝き目尻は上に上がっている。

 少しキツメの顔が印象的だ。

 だが、それが良い!!


 背は女性陣で一番高い。

 プロポーションはこれまた抜群なのに肉付きが厭らしい。

 妖艶さと言うのか?

 胸とお尻が大きく見える。

 たぶん腰のくびれが細い為、より強調されているのか。


 肌の色は小麦色に輝く茶色。

 この世界では忌避されるべき色だが、とてもメリハリが効いていて艶かしい。

 すんげー綺麗な黒ギャルに見える。


 健康的な褐色の肌に醸し出される妖艶さ。

 色気ムンムン漂う感じは、男を狂わせそうだ。


 それぞれを例えて見よう

 イシュタルは見た目優しいお姉様、ヤンデレだけど。

 シルビアはクーールビューティー、腐ってるけど。

 リリィは可憐な美少女、無口だが。

 ダークエルフは妖艶な美女と言ったところか。


 とりあえず『解析』を使ってみた。

 どんな人物か参考になるだろう。


 名前  アリス・ブラシェール

 種族  ダークエルフ

 種別  妖精種

 性別  ♀

 年齢  20歳5ヶ月

 Lv  28

 職業  グラディエーター

 HP  2,660/2,660

 MP  2,940/2,940


 腕力 22

 体力 38

 知力 32

 精神 24

 敏捷 25

 器用 25


 スキル 

  聖級火魔法LV2・上級土魔法LV1・聖級闇魔法LV3

  上級剣術LV4・上級槍術LV4・隠密LV2・肉体強化LV10


 ユニークスキル 

  身体硬化


 固有スキル

  分身



 アリスというのか、このダークエルフは。

 それにしてもグラディエーターって、なんぞ?

 ローマの剣闘士だったっけ?

 ダークエルフなのに・・・


 ダークエルフって異世界の忍者を想像していたが、違うのかな。

 どう見てもスキル的にバリバリの前衛っぽいんだが。

 身体硬化なんかは壁役の特徴な気がする。

 でも盾術ないしな~

 

 見た目からくる色気は他を圧倒する。

 この違いは年齢的なのもからきているのかな?

 イシュタルもシルビアも成長したら、こんな美女に変身するのか?

 俺は美しい女に育った2人を想像して、鼻の下が伸びる。


 もちろんイシュタル達にジト目で見られたのは言うまでもない。

 ところで、アリスは何しに来たのだろう。



「お・・・」


「お?」


「お兄ちゃん!!」


「「「「ええええええええ!!」」」」



 アリス以外のその場に居た全員が驚きの声を上げる。

 20才の女性から『お兄ちゃん』とはこれ如何に?



「会いたかった・・・会いたかったよ~おにいちゃ~~~ん!!」


「ちょ!え!俺、貴方の事知らないですよ!」



 感動に打ち震え、目に涙を溜めて飛び込んで来るアリス。

 飛びつき、両手を広げて俺を抱きしめ、胸に顔を埋めて頬擦りしている。

 俺も咄嗟に抱きしめ返してしまった。



「あああ、お兄ちゃん・・・やっぱり覚えてるんだ~」


「え?何のこと?」


「惚けないでよ~抱きしめ方が変ってないもん。」



 美女に『もん』とか言われギャップ萌えにコロっといってしまいそうになる。

 いやいやいや~まてまて。

 抱きしめ方に違いがあるのか?



「あああああああ、トシヤになにすんのコノアマ!!」



 素が出てますよイシュタルさん。



「と・・・トシヤ様に妹が?兄妹シュチュエーション?有り・・・有りよね。」



 あのねシルビア・・・腐る以外の属性付けちゃ駄目だよ。



「・・・H・・・トシヤ。」



 ん、ぶれないねリリィ。

 皆、俺とアリスの成り行きに怒気が上がる。


 アデーレとノーラも部屋で控えていたが、俺を見て辟易としている。

 


「やっぱり胸ですか、死ねばいいんです。」



 アデーレの毒ある一言・・・根に持ってる?



「兄弟ですか~いいですね、感動の再会♪」



 ノーラ・・・君は素直すぎてお父さんは心配です。

 メイドの2人からも突っ込みを受けつつ、アリスにこの状況を確認する。



「あの~すいません。貴方はどちら様でしょう?」


「・・・やっぱり記憶が無いの、お兄ちゃん。」


「コラ!離れろ!トシヤに近付くな!トシヤは私とシルビアだけが触っていいのよ!!きいいいいいい。」


「黙れ!女!兄上との再会を邪魔するな下郎。」


「「「「っはぁ?」」」」


 

 突然口調の変るアリス。

 え~~っと何この変わり身の早さ。



「私が何を言っても違うと言い張りよって、嘘を申したな?兄上が居たではないか!」


「嘘じゃないわよ!トシヤが貴方の兄だなんてありえないわよ!」


「えっと、俺が貴方の兄なんですか?」


「うん♪お兄ちゃんに間違いないよ~ほらココ。」


「ん?」


「この首筋にある痣が証拠~これはお兄ちゃんにあった特別な形の痣だもの。見間違う訳ないもん。」


「え~っと、でも俺、人族ですよ。」


「うん、そっか~そうよね。お兄ちゃんは事情解らないもんね。」



 イシュタル達と俺との会話が全然違うじゃん!

 また変なのが来たよ・・・



「お兄ちゃんはね、生まれ変わりなの。」


「へっぇ?」


「だ~か~ら~、生まれ変わり♪5年前に死んで生まれ変わって今のお兄ちゃんになったの。」


「ちょ!生まれ変わりは良しとして、5年って年数合わないじゃん!」


「それはね、死んで過去に生まれ変わって、今に至るから合わない訳無いよ?」



 駄目だこの人。

 完全に思い込みに従って疑問を挟む余地が無い。

 


「絶対に違うわよ!断言できるわ!兄じゃないわよトシヤは!」


「そうですよ、イシュタルの言う通り、兄な訳がありません!」



 俺が異世界から来た事を知っている2人は当然認めない。

 いや、俺も認めないけどね。



「黙れ!兄上は兄上。それ以上もそれ以下でもない。ようやく見つけたのだ兄上だ!2人の会話を邪魔立てするな!」


「するわよ!何を企んでるか知らないけど、トシヤに関わるな!」


「そうは行かん。どうしても兄上を連れて帰るぞ!我が家へ!」


「っはっぁ?いや俺は此処が家なんですけど?」


「え・・・帰らないのお兄ちゃん・・・グスグス」



 俺が一緒に帰らないと言うと、途端に泣きだしたアリス。



「ほ~っらトシヤも違うと解ってるから帰る気無いのよ。諦めて出て行ってくれる?」


「まあ、なんだ人違いと思うから、そのごめんね。」



 泣いているアリスにちょと感傷的に成り、優しく言葉を掛ける。



「・・・嫌・・・お兄ちゃんと離れるなんて嫌!」


「・・・えと・・・違うんだけど・・・」


「わかった・・・こうなったら私のお兄ちゃんと認めるまで此処に居る!」


「「「「えええええええ!」」」」



 こうしてアリスは有無を言わさず居座る事となった。

 猛反対するイシュタル達を宥めたのは俺。

 だって女性の涙に弱いんだもの・・・


 泣きじゃくって必死に、俺を兄と信じ込んでいるアリスが不憫だったから。

 屋敷の2階に部屋を与え、アリスを住まわせる。


 まあ、違うと解れば出て行くだろう。

 どうせそれまでの事さ。


 イシュタル達のご機嫌を治すことに専念して寝る事にする。

 寝室で不貞腐れる2人を、必死の土下座で諌めて本日も終わった。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 上手くいったわ。

 情報通り何てお人好しな男だろう。


 押し掛けて、家の住人となる事に成功したアリスはベットでほくそ笑む。

 それにしても警戒心がなさすぎる。

 それはそれで、ある意味底知れない怖さを感じるのだが・・・



「何があっても何とかなると、やはり自信があるのか・・・」


 

 アリスは今後、トシヤにどのように取り入っていくかを考える。

 間抜けな姿にばかり目が行くと、本当の力量を見誤るかもしれない。

 気を引き締める為にも、あらゆる可能性を考慮する。


 今回の任務はトシヤの監視及び篭絡だ。

 デリオス王国の王佐、フィリポスからの依頼だ。

 デリオス王国はトシヤをかなり欲しているようで、出来れば懐柔して王国の力として利用しようと考えている。


 もちろん一筋縄ではいかない。

 その力は圧倒的でしかも底が見えない。

 剣も魔法も使え、その体は鋼の如く一切の攻撃を通さない。

 まるで竜のように。


 だが、そんなトシヤにも弱点らしきものはある。

 女性だ。

 女性関係には滅法弱く、衛兵が言うにはエルフの女性に詰め寄られて小さくなっていたらしい。

 奴隷の獣人の雌にも入れ込んでいるようだ。

 そして、先だって失脚したランドルフィ卿の孫娘を保護している。

 

 トシヤは女性には甘い。

 強大な力があれば、女性の1人や2人屈服させ己が支配下に置くことも出来るのにそうしていない。

 今日もエルフと獣人のご機嫌を取ったり、孫娘を自愛の表情で見ている。


 だからこそ、そこに付け込む隙がある。

 現に今日、泣き顔を見せただけでアリスを信じたのだから。

 


「お兄ちゃん・・・か・・・」



 アリスには実の兄が居たのは本当の事だ。

 そして密かに慕っていたのも事実。

 今回の依頼に際して、トシヤを信じさせる為に本当の気持ちを織り交ぜたのだ。

 

 小さいころから優しく、憧れていた兄。

 褐色の肌と言うだけで、魔族と関わりがあると思われるダークエルフは蔑まれていた。

 魔族となど関わりなど無いのに。


 小さい頃から苛められていたアリスを、何時も助けてくれた兄。

 泣いていたら必ず頭を撫でながら『もう大丈夫、俺が居るよ』と言ってくれた。

 その優しい大きな手と笑顔は、アリスの心を愛情で満たしてくれた。

 物心が付いてからは、兄はアリスにとって特別で掛替えの無い存在になっていた。

 でも、兄は逝ってしまった。


 ダークエルフは、この世界では忌み嫌われている。

 だから普通に仕事など雇って貰えない。

 その為、常に危険な影の仕事が主になってしまう。


 扇動・誘惑・詐欺・暗殺・毒殺・誘拐・・・

 嫌われ者は、更に嫌われる仕事をする事で孤立していく。

 兄はそんな中の暗殺任務中に死亡した。

 返り討ちにあったのだ。


 兄を失い、ショックのあまり暫くは何も出来なかった。

 でも、ダークエルフの占星術師がアリスを救った。

 兄は生まれ変わっていて、何処かに居る。

 何時か出会うことが出来ると。


 アリスは縋った。

 誰もが馬鹿にする言葉に縋ったのだ。

 そうする事でアリスは強くなることが出来たのだから。


 今度は兄を絶対に死なせない。

 兄を迎えにいき、また撫でて貰うために。

 だから国外に出る仕事は、率先して引き受けて来た。

 生まれ変わった兄を見つけれると信じて。


 特に今回の任務は、普段行く事の無いザルツまで行けるという。

 兄を探すにはどうしても行っておきたい。

 ただ任務の篭絡と言う点で、アリスは未経験だ。

 たぶん外されると思い、諦めていたのだが。

 ある理由により、まさかの抜擢だった。

 

 それは美貌だ。

 ダークエルフもエルフに劣らない美しい種族だ。

 篭絡にはその体を使えば、忽ちに異性を虜に出来る。


 だが、トシヤの周りは、余りにも美しい女性が揃い過ぎていた。

 普通に美女を送り込んでも篭絡は叶わないだろう。

 彼女達を差し置いて、寵愛を受けるには相当なインパクトがいる。


 だからこそダークエルフの中でも特に美しく、その妖艶さに定評のあったアリスに白羽の矢が立った。

 美しさに引けを取らず、肉体的にも同等。

 だが、彼女たちには無い色気は群を抜く。


 アリスは覚悟を決めて今回の任務に挑んでいる。

 本当は兄以外の男など嫌なのだが・・・

 

 それに思い出しても鳥肌が立つ。

 同族の嫌らしい視線や、多種族からの蔑む視線は慣れている。

 しかし、あのトシヤの視線は違う。


 あれはダークエルフなど関係なく女を見る目だ。

 しかも同族と違い、感嘆を含む視線は好奇に満ちていた。


 

「お兄ちゃん・・・怖いよ・・・」



 悪寒がする体を、自分で抱きしめながら兄を思う。

 兄に捧げたかったものは、兄を探す為に捨てる。

 兄に失望されてでも、兄の生まれ変わりを見つけたい。

 矛盾する思考の中、アリスは自問自答を繰り返す。

 

 明日以降、トシヤを己で溺れささないといけない。

 ベットの中で必死に自分を守るようにして丸まり、眠りに付いた。

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