第三十二話 ザルツでの生活
今、俺達は迷宮に篭っている。
「シルビア、もっと敵を引き付けて!」
「イシュ姉・・・魔法・・・打つ・・・」
「いいわよ!どーーーんといって!」
「イシュタル!加護をお願いします。」
「まって、今掛けるわ。」
こんな調子で3人による攻略中だ。
俺はと言うと、後ろでデーンっと構えて、3人の戦闘を見ている。
傍目に見たら、何て薄情な男に見えるだろう・・・
でも、これも3人のLvを上げる為だから悪く思わないで欲しい。
イブロニアを出てザルツ王国に入るのに2ヶ月。
ザルツ王国の首都ガイグンを根城にして、はや1月となっている。
俺達は拠点となる家を買うために、日々迷宮に篭って資金稼ぎ中だ。
まず、ザルツ王国だが、本で得た知識通り、亜人国家であった。
国民の主は獣人だが、エルフやドワーフはてはドラゴニュートやリザードマンまで生活を共にする国家だった。
やはり国王が獣人の王ならではだろう。
今のところ、ザルツ王国と近隣の人族国家は小競り合いも無く、同盟とまでは行かないが平和的な関係を気付いている。
人族に対する感情は、比較的友好的ではあるが、たまに嫌悪の目を向けられることがある。
やはり人族国家に弾圧されて逃げてきた亜人達も居るのだろう。
この世界に来て、初めて向けられる目線に、ちょっと心が痛かった。
ガイグンに入ってからは、比較的スムーズに・・・とは行かず、ここではイシュタルやシルビアが主になって助けてくれた。
何がって、そりゃー宿を取るにしても、商館で登録するにしても人族の俺が話すよりも、シルビアが話す方が受けが良く、そういった交渉はシルビアにお任せになったからだ。
商館の登録は、イブロニアでは敢えて行っていなかった為、ここで初登録となる。
迷宮に入ったり、ドロップ品の売買などは登録自体は要らないのだが、家を買うことや町で取り扱われる様々な依頼やなんかには、どうしても身分証明書以外の登録が必要になった為だ。
「トシヤ!次ぎ行くわよ~~」
「OK、今行くよイシュタル。」
「トシヤ様、ドロップ品を魔法の巾着に入れては頂けませんか?」
「ん、いいよ~拾っていくからちょっと待て。」
ふ~
この1月で資金も十分に溜まったが、それでも余裕が持ちたいので小額換金アイテムでも拾っている。
塵も積れば山と成りだ。
実際真面目に迷宮に篭って思ったことだが、迷宮品は金になる。
イブロニアでは事件や騒動に巻き込まれた?せいもあり、結構ゆったりとした攻略をしていたので余り金銭に関して意識していなかった。
普通のパーティーで1日銀貨10枚ほどの稼ぎになり、日本円で10万円位になる。
1月みっちり篭れば2~3金貨で、日本円でおおよそ月収250万円前後だ。
何このセレブ月収は?w
まあ、命の懸かった迷宮攻略だし、日本のような社会保険や生命保険も無いのだから、当然と言えば当然なのかもしれないが、非常にお金が儲かるのだ。
迷宮産の魔石・魔結晶・鉱石類・魔物の素材等幾つかアイテムはある。
その中でも特に魔結晶と鉱石類が非常に高額で取引されていて、この辺が狙い目になっている。
迷宮の下の階層に行けば行く程、この魔結晶と鉱石類は大きくなるので価値も上がっていく。
魔結晶は日常生活に欠かせないアイテムで、各町にある下水などの公共施設や一般家庭の調理器具の火をおこすガスコンロのような物に至るまで、動力源として必要なのだ。
所謂、電気の元と考えれば妥当だ。
魔結晶に篭った魔力を使い、あらゆる物を動かす事で、町の日常は恙無く行われているのである。
鉱石類はそのまま金属としての需要が大きい。
宝石は装飾品に、鉄や胴は剣になったり鍬になったり鍋になる。
その中でもミスリルは特殊で、俺達のような迷宮攻略者から果ては王国の騎士団の装備にと、めちゃくちゃ需要がある。
需要があるのにミスリルゴーレムからしかドロップしない。
浅い階層だとミスリルゴーレムに出会う確率も低いし、ドロップしても鉱石自体が小さく必要量に足りない。
必要量揃えるには、深い階層に挑む必要もあり、必然的に供給が少ない鉱物なのだ。
そんな訳で、俺達はミスリルゴーレムからアイテムを集める為に50層に挑んで稼ぎまくった。
もちろん鉱石集めと共に、イシュタルとシルビアとリリィのLv上げも行った。
まあ、これはチートというか・・・
俗に言う接待Lv上げだ。
50層の敵を俺が瀕死にして、敵を行動不能な状態にする。
四肢を切り離したり粉砕して寝転ばす訳だ。
そこを3人が寄って鷹って袋だ叩きにして経験値を稼がせると言う、何とも普通なら非常識な行為でガンガン上げていったのだ。
現在の各ステータスはこうなっている。
名前 イシュタル
種族 エルフ族
種別 ハイエルフ種
性別 ♀
年齢 17歳5ヶ月
LV 61
職業 精霊魔法士
HP 4,529/4,529
MP 8,259/8,259
腕力 38
体力 35
知力 58
精神 65
敏捷 34
器用 45
スキル
肉体強化LV10
上級風魔法LV10・聖級水魔法LV10・神級神聖魔法LV10
神級風精霊魔法LV10・神級水精霊魔法LV10
聖級弓術LV10・聖級杖術LV10・上級剣術LV2
ユニークスキル
精霊共鳴・鷹の目
固有スキル
天使の加護
流石、イシュタル。
元天使は伊達じゃなく、スキルが最高位の物を持っている。
LVに関しては、地上に降りた時点で一からなのか初期値からのノビになっている。
名前 シルビア・シュターゼン
種族 獣人族
種別 銀狼種
性別 ♀
年齢 16歳6ヶ月
LV 63
職業 獣闘士
HP 7,582/7,582
MP 582/ 582
腕力 59
体力 62
知力 25
精神 26
敏捷 61
器用 58
スキル
肉体強化LV6
初級風魔法LV3・上級剣術LV8・上級斧術LV5
ユニークスキル
部分獣化
固有スキル
獣王の威
シルビアは体力の伸びが良く、HPもかなり高くなってきた。
腕力も敏捷も申し分ない。
前衛としては優秀である。
名前 リリィ・ランドルフィ
種族 フェアリーハーフ
種別 妖精種
性別 ♀
年齢 13歳8ヶ月
Lv 60
職業 魔法使い
HP 2,015/2,015
MP 6,950/6,950
腕力 22
体力 19
知力 67
精神 38
敏捷 25
器用 35
スキル
聖級風魔法LV9・聖級水魔法LV5・中級神聖魔法LV8
中級杖術LV9・肉体強化LV5
ユニークスキル
精霊の加護
固有スキル
精霊降臨
リリィは知能が凄い。
しかしフェアリーの血が影響してか、HPを筆頭に力に関する部分の伸びが悪い。
しかし、扱う魔法はすさまじく、イシュタルに勝るとも劣らないステータスだ。
この世界の能力値は、基本99までで上限になり、それ以降はボーナス数値による加算しか無い。
ボーナスはLv補正が基本で、残りは個々の種族値や職業値が付く。
また、スキル上昇は熟練度が影響しているようで、隠しステータスなのか上がるタイミングが掴めない。
変りにスキル取得はスキルスクロールを使用し、適正があればスキル取得が可能だ。
取得出来るなら、幾らでもスキルは増やすことが出来る。
しかし、適性が無ければスキル取得が出来ない為、確実にスキルを増やす事ができないのがたまに傷だ。
さて、回想していたら次の戦闘も終わったようだ。
ドロップ品を回収して、また次の戦闘へと挑む。
こうして夕方近くになり、本日の迷宮攻略も終わり、換金へと商館へ急ぐ。
『ゲート』を開き、町の近くまで移動。
後は徒歩で町に入り、商館での売買だ。
最初、この町で迷宮品を売ったときは、周りの視線や職員の反応が凄かったけど、今はもう慣れてくれたようで何時も通りだ。
「今日もコレを頼む。」
「かしこまりました。本日も素晴らしい品々ですね。」
職員は品々を確認して代金を用意する。
「本日は2金貨と56銀貨になります。いやはや私もあやかりたいものです。」
「いや、運がいいだけです。」
言っては見た物の胡散臭いだろうな・・・
無事換金も済み、残金の確認だ。
今日まで諸経費を支払い、細かいのを除き、手元には352金貨と98銀貨がある。
ちょっと荒稼ぎしすぎたかもしれないが、今の所なにも言われていないし何も起こってないので大丈夫だろう。
資金を確認できた俺は、そろそろ家も買えるだろうと考える。
家の購入資金以外のその他必要な家具や備品も、購入可能だろうし、貯金としての金も十分な蓄えになった。
3人にそろそろ相談して、物件を見て廻ろうかと思う。
宿に戻り、風呂を済ませ食事をして部屋で相談だ。
宿は2部屋借りていて、1つが俺とイシュタルかシルビア。
もう一つがリリィとイシュタルかシルビアになっている。
お・・・オッホン!!
言わずもがなだろう。
要は俺とイシュタル・シルビアのどちらかとナニをナニする時、交代で部屋を行き来してもらってるのだ。
この3ヶ月仲良くなったとは言え、リリィとはまだ微妙だし、なにより13歳はお子様だ。
俺としてはリリィには純粋で居て欲しいので、出来るだけHな行為に触れないよう計らっているけど・・・たぶんバレてるだろうな~
それでも、ロリには!!
ロリには・・・ならない・・・ック~~~~リリィは可愛いからな・・・
ってか手を出そうものならリリィは当然として、イシュタルシルビアの拷問が怖いのです、ハイ。
リリィの事は、この際おいといて、家だ家。
この世界に来てマイフォーーーーーームですよ。
3人に気兼ねなく出来るトイレに、誰にも邪魔され無いゆったりと入れる風呂。
俺が食べたいと思う内容の料理が出来るキッチン。
もう、今までの旅の苦労とか考えたら、ちょー欲しいんです。
でも、一緒に住むであろう3人の意見を聞かないといけない。
部屋で家について、各自の要望を聞く。
「私は~~~ん~~~トシヤと寛げる空間と、トシヤの為の料理を作れるキッチンが充実していたらそれでいいかな?あ、ダイニングは広い方がいいわ。だって食事は楽しい方がいいもの。」
っと、イシュタル。
「そうですね、剣の修練が出来る庭があれば申し分ないでしょうか。後は書斎があると・・・私も色々と学習したいので。」
これはシルビア、努力家と言うか真面目だな。
「・・・魔法研究・・・部屋・・・」
ん、解ったよリリィ。
魔法使いの定番である、研究室みたいなのが欲しいのね。
了解了解。
各自の要望の後は細かな希望や夢だ。
キッチンはどんな設備が良いだとか、風呂の広さとか部屋数とか。
以外にも家に関するこの世界の女性の夢は、現代日本と変らないようで。
夢を膨らませて夜遅くまで話し合ったのだった。
翌日。
迷宮攻略をお休みして、商館に赴く。
商館の職員に聞き、家に関する希望を伝え、この世界の不動産屋に該当する商人のカウンターヘト赴く。
「いらっしゃいませ。」
「実は我が主が家を所望しているのですが。」
「では、まず希望とご予算が合うかみてみましょう。」
「うむ、ぜひ頼む。」
ここでもシルビアにお任せだ。
まさか17歳にして家を購入するとは、日本では考えられない事だ。
商人に希望を伝え早速何件かの家を見に行くことになった。




