第二十五話 迷宮と武器
長らくお待たせしました^^;
夏の激務に2ヶ月、倒れて1ヶ月・・・やっと復帰しました。
ぼちぼち書き上げますので気長にお付き合いくださいませ。
10/15 再更新
あれから変わらない何度目かの朝を迎える。
ランドルフィ邸宅に逗留して、すでに1ヶ月になろうとしている。
もう慣れてしまったので、居心地も悪くもない。
寝覚めと共に覚醒する意識の中、両腕の温もりを確かめて幸せに浸る。
俺は上半身を起こし、起こさないように2人の腕枕にしていた腕を引く抜く。
引き抜いた両手をイシュタルとシルビアそれぞれの頭に持っていく。
2人の頭に手を置いたら、することは決まっている、そう! 愛おしく交互に撫でるのであ~る!!
イシュタルは撫でられると、少しびくっと体を縮めながらも、俺の手の感触に幸せそうにしている。
仕舞いには俺の手を掴んで離さない。
毎朝変らないイシュタルの行動に苦笑する。
そんな時は決まって、寝言を言っている。
「トシヤ・・・離さない・・・絶対・・・絶対・・・う・・うう~ん・・・ダメ!・・」
うん。訳が解らない・・・ハハッハ
シルビアの場合は、可愛らしい獣耳を摘まむように撫で上げる。
俺の世界には無い獣人の特徴である耳は俺を夢中にさせる。
シルビアは、くすぐったそうに身動ぎをしながら、顔がにやけている。
起きている時の凛々しさからは到底想像出来ない、だらしないものになり、こちらも寝言を言ってくる。
「そ・・そこ・・・らぁめ~・・あ・・あああっぁ・・・」
うん、もう止しておこう・・・
こうして朝の日課が終わる。
いつもの朝を迎えながら、2人を見やって考える。
2人はあれから事の外、仲が良くなった??かな?
良くなったというかは微妙かもしれないが、2人の仲で妥協というか共存というか、えもいわれぬ連帯感が生まれたようだ。
今でもベットの上なのに、右がイシュタル、左がシルビアと決まった位置を守っている。
何をするにもこの順序が守られていて、忘れていた場合は気づいた方が声をかけて促すほど徹底している。
正直、軍隊も真っ青な順番制だ。
更に奇妙なことに、イシュタルもシルビアもあの日以来夜が積極的になっていた。
積極的というか、強行というか、とにかく2人が精根尽きるまで相手してくるのである。
俺としては体力的にも問題ないので、十分に楽しませて貰っているが、2人は相当頑張っている様子である。
現に今も俺に撫でられ、成すがままにされていても起きない。
最初の3日位はどちらかが起きて、俺の身支度を世話していたが、2人とも朝食まで持たずに床に丸まって寝てしまっていた。
その為、俺がベットに運び直して、もう一度寝かせてナンヤカンヤと世話を逆に焼くことになった。
その後、朝の身支度だけは諦めたのか、以来起きて来なくなった・・・
諦め早いだろ2人とも!?
そんな感想を胸に、俺は一人で身支度を整え、ランドルフィ卿の下に挨拶に行く。
ランドルフィ卿は、朝食前には必ず執務室にいて、午前中の指示を部下や執事に出した後、書類に目を通しているのはずだからだ。
執務室のドアをノックして声をかける。
「トシヤです、よろしいですか?」
「開いておる、入ってくだされ。」
ドアを開け、室内に入り、日本と同様に頭を下げて、まずは朝の挨拶をする。
「おはようございます、ランドルフィ卿。本日も晴天に恵まれ心地よい朝ですね。」
「ん、おはよう勇者殿。この天気だと今日も迷宮に赴かれるのかな?」
「ええ、許可が頂ければ朝食後、行こうかと思っています。」
「左様か、では朝食後はいつもの通りに。」
「では、そうさせてもらいます。後ほど朝食の時にまた。」
「では後ほど。」
毎朝、ほぼ同じ会話をこなして、執務室を後にする。
初日は挨拶を済ませて、今後の行動を聞いたり答えたり、外に行くときの条件を話し合ったりしたのだが、決まってしまえば挨拶も自然と簡単になっていったのだ。
執務室を後にして、部屋に戻って窓を少し開ける
夜に篭った空気を入れ替える為、風を招き入れ椅子に腰掛ける。
ベットの方を見ても、2人はまだ夢の中のようだ。
朝食まではまだ2時間程ある、2人をそのままに、ランドルフィ卿より用意してもらった書物に目を通す。
心地よい風を感じながら、静かな朝の時間を過ごしていた。
暫く読書をしていると、朝食を知らせる為にメイドが部屋を訪ねて来る。
俺は、了解の返事を返し、メイドを室内に招きいれ、何時もの様にベットの2人の給仕をお願いする。
このメイドさんには感謝だ。
だって、毎晩行われている行為の後を見せ付ける格好になっているのだから。
何も言わずに作業してくれるのでありがたい。
まあ、ランドルフィ卿には筒抜けだろうけどね・・・
これを合図に、イシュタルとシルビアはようやくベットより起き上がってくるのである。
2人は諦めたのか開き直ったのか、メイドの給仕に身を任せることに慣れきっていた。
慣れちゃダメだろ?っと突っ込みたかったが、そこは声に出さずにそっとしている。
起き上がり、俺に2人揃って挨拶をしてくる。
「おはよう~トシヤ~・・・・今日も素敵よ♪」
「お・・おはようございます、トシヤ様。」
メイドが居るにも拘らず、2人は交互に目覚めのキスを交わしてくる。
俺としては恥ずかしいので最初は嫌がっていたのだが、2人の気迫に負けて今では受け入れている。
流石にこれに関しては、メイドの視線が痛い・・・・
そんな好色家を見る目で見ないで欲しい・・・・
「っっとにも~トシヤは私たちだけ見て居ればいいの!!」
「そうです、トシヤ様は私達以外に気にしてはいけません!!」
なんだか、シルビアまでイシュタルに感化されてしまっていないだろうか??
2人は俺の側に女性がいるほどスキンシップやキスを強要することが多い気がする?気のせいだろうか・・・
毎朝の出来事とはいえ、慣れない日課に戸惑う毎日である。
身支度が終わると決まって、メイドに先導されて食堂に赴き、ランドルフィ卿の家族と朝食を共にする。
朝の挨拶に始まり、他愛のない女性の話に花が咲き、平和な日常が繰り返される。
朝食後は、必ず迷宮に向かっている。
単純にランドルフィ卿の邸宅にずっと篭りたくなかった事と、早くこの世界を廻れる資金に知識と経験を積みたかったからだ。
魔法の巾着には最初ルビさん関連しか入っていなかった。
だからといって、この世界でそれらを資金にする気もなかったし、形見を売るなんて言語道断である。
出来得るだけ、こちらの資金調達方法を見つけて、早くこの国を出て行きたいのである。
世界を廻るには相当時間が掛かるだろうし、まごまごと一国に長居しすぎる気はない。
面倒になったらトンズラする気満々の俺だった。
良いのかそれで?俺?(笑)
朝食を済ませ、何時ものように邸宅の門を潜ると、彼女が居た。
これもランドルフィ卿との約束の一つで、外に出る際には同行を許さないといけないからだ。
「おはよう、リリィ。」
「・・・お・・・は・・よう・・」
「おはよう、リリィ。」
「おはようございます、リリィさん。」
イシュタルは少し機嫌悪く、シルビアは丁寧に挨拶をする。
しかし、リリィは相変わらず抑揚のないしゃべり方だな・・・
感情を殺しているのか元々薄いのか、なかなかに掴み所のない女の子だと思う。
彼女、リリィは魔法使いだそうで、って見たから知ってはいたんだけど、俺たちの役に立つからという事と、リリィの育成に協力して欲しいという理由で同行させられている。
真の理由は、どうせ俺の監視だとは解っているんだが、女の子を無碍にできる筈もなく、済し崩し的に了解している。
「じゃあ、皆行こうか。」
「「は~い」」
「・・・・・・・・」
いや、ピクニックじゃないんだぜ?w
緊張感のない出発に苦笑をもらして馬車に乗り込む。
ランドルフィ卿の計らいで、迷宮までは専属馬車が用意されているので、まさにVIP待遇で何時ものように、迷宮へと向かう。
向かう先は丘陵部にある迷宮だ、鉱石、特に宝石になるものを集めて資金を稼ぐ為だ。
迷宮入り口から、今日の向かう先丘陵部迷宮の53層に来ている。
監視のリリィが居るとはいえ、俺の力はある程度知れてしまっていたし、資金を早く調達したいのと、イシュタルとシルビアのLvを早く上げていきたかったという思いが優先して、迷宮深くに入っている。
リリィは俺に促されて迷宮に入ったときは目を見張って驚いていたが、俺たちの戦いを見て納得したのか、以後何も表情に出さなくなっていた。
「トシヤ!新手よ!」
声を聞き戦闘態勢に入る。
この階層には鉱石にちなんだモンスターが闊歩していて、ゴーレムやデュラハン、スケルトンロードにカーバンクルといった日本でも馴染みのモンスターが出現する。
今現れたのは、ミスリルゴーレム2体にデュラハン3体、スケルトンロード1体、そしてカーバンクルが1体だ。
普通のPTなら、この階層にはまず辿り着けないし、ましてやこんな高Lvモンスターなど倒せないのだが・・・
特にカーバンクルは魔法を反射するため、厄介な存在であるため、出来るだけ敬遠される。
しかし、俺達にはそういった常識が通じないので、サクサクと狩ってしまおうと思う
イシュタルからシルビアに防御魔法が飛び、シルビアは肉体強化を発動してスケルトンロードに向かう。
俺はシルビアが戦闘経験を積める様に、それ以外のモンスターを引き付け、クレイモアを一閃させて薙ぎ払う。
固まっていたデュラハンが消えたのを確認して、返す刀でミスリルゴーレムをぶっ叩く。
叩かれたミスリルゴーレムは砕け散ってこれまた消えたので、残るカーバンクルまで即座に移動し、額の急所を突き刺す。
我ながら化け物じみてるなっと思い、今の攻撃でヒビが入ったクレイモアに気付く。
ぶっちゃけ、この階層でこの武器というのがおかしいのかも知れない。
スケルトンロード以外が消えたのを確認してから、シルビアに視線を向ける。
シルビアは落ち着いて、スケルトンロードの剣を裁き、2本のシミターで器用に攻撃している。
安定した戦いを見ていたが、ふっとシルビアの右手の剣に目がいく。
「っダメだ!さがれシルビア!!」
叫んだ途端シルビアも気付いたのか、スケルトンロードから離れる為に後ろに下がろうとしたが・・・
モンスターも馬鹿じゃない、その隙を好機と見て剣を突き入れて来た。
「危ない!!」
「キャアぁぁぁ!」
一瞬にしてシルビアとスケルトンロードの間に割り込み、突き入れられた剣をおれ自身が受ける。
鎧を貫通して腹に当たったが、俺には届かない。
生身でも高Lvな肉体には傷一つ付ける事が出来ない。
剣を受けたまま、スケルトンロードの首を横凪に払い首を飛ばし、上段に構えて残った体を真一文字に縦に割る。
スケルトンロードの消滅を確認せずに、直ぐシルビアの元に駆けつける。
シルビアを心配して、彼女を抱きしめる。
「大丈夫か!シルビア!」
「あ・・え・・っと・・大丈夫です・・トシヤ様・・・ッポ。」
俺とは対照的に顔を赤らめ、照れているシルビアは俺の腕の中で、いじらしくモジモジしていた。
照れるって事は大丈夫のようだ。
一安心していると、そこに久方ぶりの鬼気迫る声が響く。
「シ~~~ル~~~ビ~~~ア~~~!!」
「おお・おうふ!?」
「あ・・・え・・・イシュタル・・これは・・・っち・・・ちょ!?」
「ずるい!ずるい!ずるい!ずるい!ずるーーーーーーーいいぃぃ!・・・エッグエエグウ・・・」
「我慢してるのに・・・・クスクス・・・でもシルビあも・・・よがっだ・・・」
泣いているのか?
イシュタルは、何時もとは違い地面にぺたんと座って泣き崩れている。
どうやら俺への嫉妬とシルビアの無事を安堵する気持ちが責めぎあって、こんな風になったようだ。
今までが順調すぎて、命の危険が伴う惨事がなかったのもあったのだろうか。
それに彼女達のLvはまだ低い、無茶をさせているのかもしれない。
シルビアは俺の元を離れてイシュタルに駆け寄り、抱きしめるようにして泣き崩れる背中を摩っている。
イシュタルもシルビアに抱きつき返してエグエグと甘えているようだ。
天使として孤独を過ごしたイシュタルにとって、ライバルであり、対等であり、同じ男を愛するシルビアの存在は特別になっているようだった。
ちょっと吃驚はしたけど、なんだか微笑ましくなっていると、遠巻きに2人を見るリリィの目に変化が見られたような気がしてそちらを見た。
「・・・・なにを・・・みて・・・」
「あ・・いやすまない。」
俺が見ていることに気付いたリリィは、直ぐに感情が無くなっていた。
気のせいかとも思ったが、この子も何か抱えているのかなっと考えてしまっていた。
その後予備で購入しておいたシミターを取り出し、シルビアに装備させる。
俺もクレイモアを巾着に戻し、予備のグレートソードを取り出す。
実は武器の破損はこれが始めてではなく、俺が3度目、シルビアが4度目となる。
迷宮に稼ぎに来ているのに、なぜか武器の購入で資金が目減りしているのが悲しい・・・
ある程度53層を歩き、幾度かの戦闘をこなして出口へと戻る。
今日の稼ぎを商館で換金した後、馬車に揺られてランドルフィ卿邸宅に戻る。
メイドの案内に従い体の汚れを風呂場で流し、着替えを済ませる。
もちろん、イシュタルとシルビアに散々奉仕されたけどね♪
やっぱり戦闘の後は高揚するのか、長いお風呂となってしまった・・・・
風呂を上がり、部屋に戻って着替えを済ませ、夕食を済ます。
夕食だけは一同に会することはない。
ランドルフィ卿が城から戻ら無い事もあるし、ミアリル夫人は晩餐会や貴婦人の集まりなどで不在も多いため、各自食事を取ることが暗黙の了解になっている。
食事を済ませ、給仕のメイドにお礼を言って部屋に戻る。
部屋に戻ると各々が装備の点検や雑談をして寝るまで過ごすのだが、今日は2人にというかイシュタルに相談があった。
「イシュタル、武器のことなんだが、やっぱ拙いよね。」
「うーん、そうねー今日のシルビアの事もあるし、考えなきゃいけないかもね。」
「だよねーおれの力に耐えれないのは仕方がないとしても、シルビアを危ない目にはあわせたくないしね。」
「あ、いえ・・・私がもっと強くなって剣の扱いが上手くなればいいのですから・・・」
シルビアは申し訳なさそうに俯く。
イシュタルはそんな彼女を見て、意を決したように俺を見つめる。
「トシヤ・・・トシヤさえ良いなら一つ良案があるのだけど・・・」
「ん?良案?」
「うん、トシヤ怒らないでね、その・・・ルビさんの・・・その爪とか鱗で装備を作るって言う手があるのだけれど・・・」
「ほぇ?」
素っ頓狂な声を出して俺は固まってしまった。
確かにルビさんはドラゴンである、その素材を元に武器や防具に加工できない事もないとは思う。
でも、それはファンタジー世界の定番だろうが、ルビさんは別格だ。
だって、あの硬いルビさんの爪や鱗が果たして加工できるのか??
「こうなるんじゃないかって、ルビさんはトシヤに形見分けしたんじゃないかと思うの。」
「・・・・・・・」
そうかもしれない、形見として貰いながら、大切にしたいと思いながらもどうしたら良いか迷っていたのも事実。
「ルビさんの形見の武具を作ってみない?」
イシュタルの言葉に促されて、俺は口を開く。
「どうすればいい?」
イシュタルは、何時ものように夜の営みを開始することも忘れて、俺にその方法を話し出す。
シルビアも真剣に聞き入っていて、夜更けまで相談が続いた。
ところどころ設定を思い直し読み返して感を取り戻しております。
お気楽に読み飛ばしていただくとありがたいです。




