凛太郎の謀略 ―2―
そんなやりとりがあって、迎えた日曜日。
咲はホテルのロビーのソファで、凛太郎を待っていた。
『その日はちょっと用事があるから、現地集合な』
凛太郎は自分から誘っておきながら、そんなことを曰った。
たしか、ビュッフェの予約は午後一時と言っていた気がする。
――そろそろ現れてもいいはずなのだけど。
腕時計を確認すると、予定時刻の一〇分前になっていた。咲はホテルの入り口へと目を向ける。
「あ」
ちょうど自動ドアの向こう側に凛太郎らしき人影が見えた。威圧感のある長身。グレーのジャケットに白シャツと黒の細身のチノパンを合わせたスマートカジュアルな服装をしている。そういう格好をすると案外まともな感じに見えるから、不思議だ。
あれ、でも。
その隣にスーツ姿の男が並んで歩いているのも見えた。ショートヘアの、凛太郎より少し背が低い若い男だ。
他に連れがいるなんて聞いてないから、もしかしたら人違いかもしれない。
咲は自動ドアの向こうの二人を注意深く眺めた。
自動ドアを並んで潜った男の一人は、やはり凛太郎だった。もう一人は、どこか見覚えのある顔なのに思い出せない。
「悪りぃ、悪りぃ」
咲に気づいた凛太郎が、大股でソファへと近寄りながら声をかける。
「ちょっと道が混んでて遅くなった」
凛太郎はそう言って、頭を掻いた。
「道? 凛太郎さん、車で来たんですか?」
「ああ、知り合いに送ってもらった」
「知り合いって、今、一緒に来られた方ですか?」
入り口のほうに視線を移すと、そこにスーツの男の姿はなかった。
「そう。ちょうどここに来るって言うから、送ってもらった」
送ってもらっておきながら、感謝のかけらも見えない態度で凛太郎が言う。
「さあ、早く行こうぜ。もう、予約の時間になるぞ」
さらに自分が遅れてきた割には偉そうな態度で、咲を急かした。
――やっぱり、断るべきだった。
咲は早速後悔をした。




