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COLORS~魔王を倒す救世主たちに、正義の心がありません~  作者: 水嶋りこ
2章 未来からの使者

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22.最悪の史実

「最後に、言っておく」 


茜の言葉には反応せず、感情のない声音が空間に落ちる。


「俺は“今のお前たちが生きている延長線上の未来”にいる。時間は一本の線で繋がっており、パラレルワールドは存在しない」


先ほどまでと同じ抑揚のない調子で、はっきりと断言する。


「つまり、これから告げるのは予言じゃなく、この先にお前達が経験する“史実“だ」


その言葉が告げられた瞬間、わずかに場の空気が張り詰めた。



「——ダンザ」

静寂の中で、名を呼ばれる。


「聖戦でカラーズと魔族は全滅し、魔王だけが封印されて生き延びる。封印が解けた後、魔王は世界を滅ぼす」


ダンザは何も言わない。

だが、握りしめた拳に、わずかに力がこもった。


勇者としての人生も、人々を守るための戦いも——全てが無意味だったと突きつけられる。

それでも、否定の言葉が出てこない。


あり得ない。

そう切り捨てるには、あまりにも彼の言葉は具体的すぎた。


「リーイン。

お前は復讐を果たせないまま茨雷に殺される。シキは戦闘中に逃走。生死不明」


リーインの瞳が、わずかに揺れた。

その直後、すべてが止まる。


表情が凍りつく。

感情が消えたのではない。ただ、外へ出る前に押し殺された。

変わらない表情のまま、リーインは何もない空間を見つめている。


「ジェレン。

魔王を封印すれば解放されるという希望は砕かれ、魔力切れになったところで狂った魔導士に消される」


この場に、ジェレンはいない。

人前に姿を現さないからだ。

カラーズでさえ、彼が何を考え、どう動く人かを知らない。

確信を持って、彼の行動を予想できる者はこの場にはいない。


それなのに、京の口から語られる言葉は、迷いがなかった。


「茜。

聖剣フェルメリアの使い手になり、殺戮マシーンと化して発狂する。最後は采牙に殺される」


「……え、采牙に?」

茜が思わず采牙を見る。


采牙は茜にとって、唯一の味方だった。

その視線を受けても、采牙は動かない。

聞こえていないはずがないのに、応じる気配すら見せず、ただ静かに京を見つめている。


まるで、その言葉ごと切り捨てるように。


「千弦。

やっと死ねたというのに、俺のせいで過去へ戻される。歴史を変えない限り、冤罪死刑の無限ループを永遠に繰り返す」


空気が鋭く張り詰めた。

ひやりとした冷気が、肌を刺すように広がる。

青い瞳の奥に底の見えない暗さが、静かに沈み込んだ。


「采牙。

お前の大切な魔族は全滅し、大好きな魔王も“心のない化け物”になって世界を滅ぼす」


「……大切な魔族?大好きな魔王、だと?」

ダンザの声には、露骨な困惑が滲んでいた。

何を馬鹿なことを。

そう言いかけた視線が、采牙へと向く。


采牙は驚きも、否定もしない。

その瞳だけが、思考の奥へ沈んでいる。


それが何を意味するのか理解した瞬間、ダンザは言いかけた言葉を飲み込んだ。


伝承の声は止まらない。


「これらは、確実な未来だ。未来を変えたいなら、京を守り、京の言葉を聞け」


揺らぎのない、確定した事実としての言葉だった。


「俺が京に託した伝承は魔王を倒すための方法を含む。決して魔族に、魔王に、京の存在を知られるな。

京が消されたら、史実を変えられないからだ」


淡々とした調子のまま、さらに続けられる。


「そしてもし、“魔王を倒さない”選択をするのなら」


その言葉に、わずかな緊張が走った。


「その時は、雹・茨雷・澪・カラーズだけで話し合え。魔王を救うための伝承も用意した。これは、他の伝承をすでに聞いていることが条件になる」


「魔王様を救う……?」


反応したのは、澪だった。

魔王を倒すための伝承。

それが、この場に流れている前提だった。


それなのに。

“救う”という言葉が、そこに混ざる。

澪は言葉を失ったまま、わずかに視線を落とす。

思考が揺れた。


「だがその場合も、魔王には京の存在を絶対に知らせるな。知られた瞬間、その選択肢は失われる」



「——以上だ」


次の瞬間、肩の力が抜けたように京の体が揺れる。

京は目をこすりながら、大きなあくびをした。


「ふぁ〜あ……。朱嶺にいちゃん、なんて……??」

場違いなほど無垢な声が、重く沈んだ空気の中に落ちる。


京だけが知らない。

今、自分の口で語った内容を。


 

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