8話 お父様との話し合い
フェンリルのスノウの背中に乗り、グランフェル家に帰って来た。
「ま、魔獣!?」
あ、しまった、スノウを小さくするのを忘れてた。
「あー、まってまって!」
「セレナ様!この魔獣はどうしたのですか??」
衛兵があっという間に集まってきてしまった。
「これから、お父様に説明するところなの。」
「承知しました。ダリオン騎士団長に伝えてきますので、執務室でお待ちください」
「はーい、よろしくね」
衛兵が急いで走っていった。
二人と一匹で執務室に入り脱力した。
「なんかすごい日だった……」
「そうじゃな、いろんな意味で……」
おじさんがこっちをじっとみてきた。
「そういえば、おじさんの名前って聞いてなかったかも」
「そういえばそうじゃのう、バタバタしててすっかり忘れておったわ」
そんな話をしてると、
バンッ
と扉を開けてお父様が入って来た。
「セレナ大丈夫か!?魔獣に襲われたときいたぞ」
「大丈夫です。それに襲われたのではなくて……いや、一応襲われたのかな?こちらの方が助けてくれました」
私は隣に座ってるおじさんを紹介した。
おじさんが立ち上がって胸に手を当てて騎士の礼をする。
「お久しぶりでございます。グランフェル辺境伯殿、元王宮騎士団団長のバルド・グランツにございます」
「グランツ殿!お久しぶりでございます。王宮のパーティー以来でしょうか?セレナを助けていただいたとか……」
元王宮騎士団長!?
只者ではないと思ってたけど、予想以上にすごい人だったんだ。
「いえ、助けたというか、森でお嬢……セレナ様が魔物と対峙してるところに出くわしたものですから、倒すのを手助けした次第です」
「グランツ様が後ろからヴォルガベアを一刀両断してましたけどね」
「セレナ様の身のこなし方を見ると、きっと1人でも対処できたでしょうな」
「それでも、助けていただいてとても助かりました。ちゃんとご挨拶もしておりませんでした。セレナティア・グランフェルです。セレナと呼んでください」
そういえば、バタバタしててちゃんと挨拶もしてなかったな。
「まってくれ、湖の付近でヴォルガベアが出たのか?」
「はい、お父様、そのことでお話があり、グランツ様に同行してもらいました。あとこの子のことも……」
私は足元に大型犬サイズで座っているスノウをみた。
それから私は森であったことを説明した。
「つまり、ヴォルガベアに出くわして、そのあとこの子の怪我と毒を治し、従属の術の解除し、瀕死の森の主も治したと」
「は、はい」
お父様は手で顔を覆ってため息をついた。
「セレナ、光魔法は無闇に使うなとあれほど……」
「で、でも、目の前に死にそうな子がいたら無理ですよ!」
いくらお父様に言われても、
あんな姿をみて、助ける術があったら絶対助けてしまう。
「セレナのお父さん、セレナを責めないで!僕が助けてほしいってお願いしたの!」
そういうと、スノウは元のサイズに戻った。
「え、しゃべって!?というかサイズも変えられるのか!」
お父様、私とまったく同じ反応してるわ。
「これが本来のサイズなのか、大きいな。」
「僕のお母さんは僕の3倍は大きいよ!」
「さすが森の主だな」
ちょっと引きながらスノウを見るお父様。
「で、なんでセレナと一緒にこの子は来たんだ?」
「えーっと……」
「僕がセレナと一緒にいたくて契約してもらったの!」
いや、あれは契約というかもはや当たり屋……。
「もう契約済みなのか……」
「いやー、私の不意打ちでどうにもならなく……グランツ様も見てましたよね!?」
「ああ、そうじゃな、あれはもう当たり屋のようなもんだな」
ハハハと笑うグランツ様。
「しかしどうするかな、フェンリルと契約なんて聞いたことがないぞ」
「僕のことはセレナの犬だと思ってくれていいよ!護衛もできるよ!これでもけっこう強いんだよ!」
「セレナの犬?」
「わわわ、これはえーっと、私が大きすぎるから無理って言ったら、自ら犬発言し出して……私が言い出したわけじゃないのよ!」
「このサイズだと白い犬に見えるでしょ?」
スノウはまた大型犬サイズに戻った。
「ま、まあ、見えんこともないが……ペットだと今後入る予定の騎士学校には連れて行けないがいいのか?」
「え、そうなの?」
「あそこは全寮制だしな、ペットは禁止だ。ただ従魔なら戦闘の役に立つから大丈夫だ」
「従魔か……スノウどうする?」
「僕はセレナと一緒に入れればなんでもいいよ」
スノウが私の脚にすり寄ってきた。やっぱりこの大きさだと可愛い。
「じゃあ、アッシュウルフの亜種ということにして、従魔契約をした程にしよう」
「足首に装飾品とかつけて従魔だとわかるようにしたほうがいいかもしれませんな」
「最近お兄様が魔道具の研究してるみたいだし、なんかいいのがないか相談してみる」
どうにか、スノウの立ち位置の話し合いが終わった。
「グランツ殿とはもう少し話すことがあるから、セレナは先にカイエルのところに行っていなさい」
「わかりました!ではグランツ様、お先に失礼いたします。」
私はカーテンシーをして、スノウと共に兄のもとに向かった。
♢♢♢
「さて、あとはグランツ殿、もう見てしまったから言うが、セレナは光魔法の使い手なのだ」
「もしかして、あの子が噂で聞いていた魔法が使えない……」
「ああ、そうだ。王都までその噂が広まってしまっているのか……」
ダリオンはため息をついた。
「そうですな、グランフェル家はとくに魔法剣士を代々輩出してることで有名ですからな」
「まったくくだらない噂だ。ただセレナ魔法が使えないのは本当なのだ。光魔法が強すぎるせいで、他の生活魔法ですら使えないのだ」
「それはなんとも……教会が飛びつきそうな案件ですな。瀕死のフェンリルを救ってしまうなど、歴代の聖女以上になるかと」
「そうなのだ、これがしれてしまうと、必ず教会から引き抜きの話が来てしまう。私は娘を教会には渡したくないのだ。なので、できれば……」
バルド・グランツは少し前まで王宮騎士団長をしており、王の護衛もしていた。
怪我から騎士団を辞めたと聞いていたが、まさかエルナード領に越してきてたとは……。
「わかりました。この事は私の心に留めておきましょう。なに、もう隠居した身です。今はリンデン村に住んでますので、何があった際はお手伝いできるかと思います」
「あなたならまだまだ現役でいけそうなのに辞めてしまわれたのですね」
グランツ殿は引退したとは思えない屈強な体をしている。
「ははは、筋力はまだまだいけますが、王の護衛をしてた際に、脚をやってしまいましてね。これでは護衛はできません」
膝をさするバルド。
「なるほど。グランフェルは魔獣はいるが緑が多くいいところだ。ゆっくり過ごしてくれ。何かあった際は相談に乗っていただけると助かる」
「承知いたしました。辺境伯」
グランツは座ったまま、胸に手を当てて騎士の礼をした。




