5話 デザインの才能
「カイエルです。中に入っても大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、入って」
「カタリーナ叔母様、お久しぶりです」
「あらあら、カイエルも大きくなったわね。身長はどのくらい?」
「この間測ったら、160cmでした」
「12歳の男の子にしては大きい方ね。リヴィアもだけどこれはグランフェルの血かもね」
「きっとそうだと思います。僕はもうそれほど鍛えたりもしてないのですが、身長だけがどんどん伸びてしまって」
お兄様は本当に儚げ系の美少年である。
最近はサイナス先生の研究室に入り浸って、研究を手伝っているようだ。
本読んでるか研究してるかで、もうほぼ鍛えていない。
たまにお姉様に引っ張り出されて走ったりはしてるようだけど。
「さて、カイエルもスーツを新調しないといけないのだけど、何か希望はあるかしら?」
「そうですね、派手でなければなんでもいいです」
「ここの上の子達は本当に服に興味がないのね……」
叔母様が頬に手を当てて苦笑した。
「お姉様は剣で、お兄様は魔法にしか興味ないですね!」
「セレナは何が好きなの?」
「私はまだわからないです。でも剣や魔法で生きていくのはちょっと違う気がしてて、今日お姉様のドレスを考えるのはとても楽しかったです!」
「私の跡継ぎはセレナになるかしらねー」
叔母様が私の頬を撫でながら言った。
「さてセレナ、じゃあカイエルのスーツはどうしましょうかね?」
「んー、お兄様は細長いのでベストはあったほうがいいかなと思います。」
「たしかにね、ジャケットだけだとちょっと心許ないかもね」
「あとは、せっかくだからお姉様のドレスの色に合わせたいけど……」
「リヴィアのドレスに合わせるとちょっと重すぎるかもしれないわね」
叔母様とふたりで考える。
「んー、薄紺のスーツにタイをお兄様の瞳の色のラベンダーグレーにしたら、ちょっと春らしくならないでしょうか?」
「色のセンスもあるのね。素晴らしいわ。」
「カイエルお兄様は、この色どうですか?」
見本の布から近い色をお兄様に当ててみた。
「うん、この色なら派手すぎないからいいね。ありがとうセレナ」
お兄様が頭を撫でてくれる。
「じゃあ、あとはアリシアのドレスね!」
「え、私は大丈夫よ。前のものがあるし」
「何言ってるの!何年前のドレスだと思ってるの!セレナ、お母様のドレスのデザインも考えたいわよね?」
「私が考えていいのですか?」
お母様は美人なのに、全然ドレスとか新調しないのよね。
着飾れば絶対もっとキレイになると思ってたんだよね。
私はキラキラした目でお母様を見た。
「そ、そうね、せっかくセレナが考えてくれるなら新調しようかしら。」
「そうしなさい!」
叔母様が私の方を向いてウィンクした。
私はこっそり、グッと親指を立てた。
「さて、セレナ、アリシアにはどんなドレスが似合うかしら?」
「んー、お母様なら……」
お母様は私と同じ淡いゴールドのウェーブヘアで、目の色は薄い茶色。
シフォン系のふんわりしたオフショルダーとかどうだろうか。
「お母様は首が長くて鎖骨も綺麗だから、肩を少し出して、素材はふんわりしたかんじで、色はみんなに合わせて青系のブルーグレーとかどうかな?」
「まあ、また見たことない形ね、でもこれだと首周りが綺麗に見えて素敵ね!」
この世界にはオフショルダーはないのかな?
あとシフォンって言葉も使っていいかわからないし、これは服について勉強しないとダメかも。
「ちょっと肌が出過ぎじゃないかしら……」
「それなら、レースのグローブをつけたらどうかな?」
お母様の言葉に私はデザインにグローブを追加で描いてみた。
「あら、これならいいんじゃない?アリシアどう?」
「そうね、腕もだいぶ隠せるし」
「じゃあ、これで決まりね。あとは王都に戻ってデザイナーと詰めるわね」
急いで片付けを始めるカタリーナ叔母様。
「カタリーナお姉様、まさかもう帰るわけじゃないわよね?」
「え?帰るけど?」
「今日来たばかりで、まったく休んでもいないのよ?1日くらい泊まっていったらどう?」
「こんな素敵なデザインを見たら、今すぐにでも形にしたくなっちゃって」
叔母様は来たばかりなのに疲れを一切見せず、むしろ目がイキイキしていた。
「これはチャンスよ!今うちの店はけっこう人気が出てきてるの。それに今回のこの新しいドレスのデザイン!やるしかないわ!」
いや、だからって王都からここまで4日かけてきて、すぐ帰るのは無謀すぎるし、
今はアドレナリンが出てるから大丈夫だと思うけど、王都に戻ったら倒れる未来しか見えない……。
私は叔母様の服を少し引っ張って言った。
「叔母様、さっきお洋服のこと教えてくれるって言ったのにお泊まりしてくれないの?」
「ん〜……そうね、これは未来への投資と考えて、いろいろ刷り込むのはありよね」
叔母様はボソボソとなにか言ってるけど聞こえない。
「カタリーナ叔母様?」
「そうね!せっかく来たのだもの一日くらいお泊まりして、セレナとお話ししようかしら」
「やったー、ありがとう、叔母様!」
母が横でほっとした顔をしている。
それから、私は夕飯にはお父様にドレスのデザインを見せて褒められ、
寝る前まで叔母様に服飾のことをいろいろ教えてもらった。
私はこの世界で、剣でも魔法でもなく、デザインをして生きていくのもいいかもしれないと思った。




