4話 カタリーナ襲来
光魔法が使えるようになって訓練の日々が続き、気づけば2年が経っていた。
そういえば、毛先だけピンク色だったホワイトブロンドの髪だけど、
なんと、ピンク部分を切っても気づけばピンクに戻っていることが発覚した。
なので、2年経っても私の毛先はピンクのままである……。
春にお姉様が10歳になり数日後、
叔母のカタリーナ・レステリオがやってきた。
「やっと着いたわー!やっぱり王都から4日だとなかなか遠いわね。」
つばの広い帽子を斜めに被り、ダークレッドの髪を後ろで綺麗にまとめ扇子を扇ぎながら、
馬車から降りてきた。
「カタリーナお姉様、遠いところようこそおいでくださいました」
「アリシア、久しぶりね。元気でやってるかしら?」
そう、カタリーナ叔母様はアリシアお母様の5歳年上の姉である。
お母様の全体的に柔らかい雰囲気に対して、
叔母様は、メイクもバッチリでラベンダー色の瞳もキリッとした印象だ。
あ、そういえば、お兄様の瞳は叔母様譲りだったのね。
叔母様は、現在王都でブティック ローゼリアを運営していて、
今人気が出始めているやり手の経営者なのだ。
少し前にご主人を亡くして元気がなかったから心配してたけど、大丈夫そうでよかった。
「カタリーナ叔母様、遠いところありがとうございます」
「叔母様、お久しぶりです!」
リヴィアお姉様の隣で私も挨拶をした。
「ふたりとも大きくなったわね〜、リヴィアはすごく身長伸びたんじゃない?」
「はい、訓練に参加するようになってから、かなり伸びまして」
「セレナも大きくなって、アリシアに似てきたわね」
「フフフ、もうすぐ7歳になります!」
叔母様がお姉様と私の頭を撫でた。
「さて、時間もないしさっそく打ち合わせをしましょう!」
叔母様はパン、と手を叩いた。
今回なぜ叔母様が急にやってきたかというと、
リヴィアお姉様が10歳になり、
今度王都で開かれるフィリクス・ノエル・カランドール第一王子主催のガーデンパーティーに参加することになった。
どうやら、フィリクス王子が来年カランドール王立魔導学院にご入学されるにあたって、
同年代の男女の親睦を深めるためのものらしい。
なので、国内に住んでいる10歳以上の子供は参加必須らしい。
うちだと、カイエルお兄様とリヴィアお姉様が参加。
保護者として、アリシアお母様も参加するみたい。
お父様は、春になって落ち着いてきたとはいえまだ魔獣が出るので、
エルナード領に待機である。
ちなみに、私ももちろんお留守番。
そこで必要になってくるのは、パーティーに着ていくドレスだ。
お姉様もお兄様もかなり身長が高くなり昔作ったものが着られなくなってしまったので、
母がカタリーナ叔母様に相談したら、すぐに来てくれたのだ。
「リヴィアは身長が145cmもあるのね。同年代の子より大きそうだわ」
「どんなドレスが似合うかしら」
「私はシンプル目ならなんでも……」
叔母様とお母様が悩んでいるけど、お姉様は興味なさそうだな。
可愛いのにもったいない。
「今の流行りってどんなかんじなのかしら」
「最近だと、この透け感のあるパフスリーブに下は大きめのパニエを履いてふんわりボリュームを出したドレスかしら」
そう言って、叔母様はいろいろとデザイン画を見せてくれた。
「わあ、この薄いピンクのドレスとかすごくかわいい!」
「あら、ほんとね。これならリヴィアのピンクゴールドの髪にも合いそうね」
うわー、本当に可愛いドレス。
でも、これはお姉様には似合わなそうだし、
チラッとお姉様を見るとものすごく嫌そうな顔をしている。
私はお姉様に合いそうなデザインを考えた。
きっとAラインのデザインが似合うと思うんだよね!
それに後ろに大きなリボンをつけて袖は無しで、チューブトップタイプにして、
春だし腕を出すと寒いだろうから、丈の短いジャケットとか羽織ったらいいかも。
私は楽しくなってデザイン画を描いた。
前世はグラフィックデザイナーだったし、多少は描けるのよ!
下手だけど!
私はおずおずとお母様と叔母様にドレスのデザインを見せた。
「お母様、叔母様、お姉様に似合いそうなドレスの絵を描いてみたから見てほしいの」
「あらあら、セレナもすっかり女の子ね」
叔母様は私がただお絵描きしたのだと思って手に取ってくれた。
「え、これは本当にセレナが描いたの?拙いけれど見たことないデザインだわ」
「セレナはどうして、このデザインを描いたの?」
「お姉様は、10歳にしては身長が高くてスラッとしてるでしょ?」
「それはそうね」
「それに剣を毎日振っているので腕の筋肉もけっこうあるんです。」
「ちょっと、セレナ」
お姉様を引き寄せて、腕を見せる。
「だから、このパフスリーブ?って言うふんわりした袖だと強く見えすぎちゃいそうだなって」
「たしかに言われてみると、可愛らしさより腕の筋肉が目立ってしまいそうね。」
叔母様もお姉様の腕を触る。
「お、叔母様」
「この絵のドレスだとリヴィアの魅力が全面に出そうね!そう思わない?リヴィア」
「はい、この絵のドレスは派手すぎないしシンプルでとても好みです」
「ただ、この季節だとちょっと寒そうね」
「あ、じゃあ、こんなかんじの短い丈のジャケットを羽織ったらどうですか?胸元にお花があるともっとかわいいかも!」
私は話しながら、ショート丈の紺色のジャケットを描き、胸元にはピンクのコサージュを足した。
「これなら紺色のジャケットも重くなりすぎずいいわね」
「あと、お姉様は可愛い色より落ち着いた色が好きなんだよね?」
「う、うん、あんまり可愛い色は……」
姉がボソボソと喋った。
いつもはハキハキ話すのに、服となると興味がないのか自信がないのかこれだ。
「だから、ベースをオフホワイトにして、リボンやラインを紺色にしたらいいかなと思ったの!」
私はニコッと笑ってみんなをみた。
みんながじっとこちらを見ている。
興奮しすぎて喋りすぎちゃったかな……。
叔母様がずっとデザイン画を見て黙っているのが怖い……。
でも、お姉様には似合うものを着てほしいし。
「叔母様……?」
ガシッ
おずおずと声をかけると、いきなり肩を掴まれた。
「セレナ、こんな素敵なデザインいつ考えたの!?」
「い、今です」
「何か参考にしたりしたのかしら?」
「お姉様に似合いそうなドレスを考えてたら頭に浮かんできて……」
さすがに前世の記憶から引っ張り出してきたとは言えない。
「セレナ、あなた、デザイナーの才能があるわ!うちで働かない?」
「え?わ、わたし、まだ6歳」
「6歳でもこんなに描けるのだもの、大丈夫!服のことは私が教えるわ」
「え、ええっと……」
「まあまあ、そのことはあとで話しましょう。」
お母様が間に入ってくれた。助かった……。
「リヴィアお姉様、このドレスどう?」
「このドレス、すごく素敵!私、これが着たい!」
お姉様に私が描いたデザイン画を見せたら、キラキラした目で言ってくれた。
コンコン
4人で話していると扉がノックされた。




