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詰んでる令嬢と色を知らない王子  作者: モモノ空
第一部 エルナード領編

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29話 エリアスの家庭教師

「お初にお目にかかります。歴史と数学、ガルナート語を教えさせていただきます。カイル・ベルナールと申します」

「マナー・ダンスを担当させていただきます。クラリス・フィッツロイと申します」


今日はエリアスの家庭教師が二名来た。

一人目の男性の先生は、黒髪で長めのクセ毛を一本に縛っている。カランドール出身で母がガルナート人なのだとか。

なので、ガルナート語も堪能なんだそうな。

ガルナート王国は日本と食文化も似ていて醤油や味噌も存在している。


昔、市場で醤油と味噌を見かけてからは私が料理長にレシピを教えて、

それ以降グランフェル家ではたまに醤油や味噌を使った料理が出る。

家族も気に入ってくれたので、今では定期的に仕入れをしてもらっている。


二人目の女性の先生は、メガネをかけてポニーテールをしたキリッとした印象の先生だ。

マナーとダンスの講師だけあって、身のこなし方が優雅。


なぜ、エリアスの家庭教師の紹介を私も聞いているかというと、

私も一緒に習うためである。

エリアスがお父様とお母様に呼んでいいか聞いたとき、なぜか私も一緒に受けることになったらしい。

なぜ……。


お母様曰く、騎士学校に行くためには勉強も必要だし、

外国語を覚えておいて損じゃないだろうと。

まあ、元日本人的には、ガルナート王国は一度は行ってみたい国ではあるので、

そこはいいのだけど。


マナーとダンスは、一応母に教わっていたからいらないと言ったら、

「あなたが将来、カタリーナ叔母様のブティックで働きたいと思っているのであれば、貴族相手の商売になるし、宣伝のためにお茶会やパーティーにも参加しなければならないでしょ?そうなった時にキレイな所作やダンスは必須じゃないかしら?」と言い出して、そう言われてしまえば、確かになと思った次第。


ダンスはエリアスと身長も近いし、ちょうどいい相手になるだろうとのことだった。


なんだか、モヤモヤする部分もあるけど、

エリアスとの勉強会が始まった。


♢♢♢


「さて、本日から勉強を始めたいと思いますが、まずお二人がどのくらいできるかを知りたいので、簡単なテストをしたいと思います」


勉強会が始まり、今日は数学をするみたい。

テストには、簡単な足し算引き算、掛け算割り算が載っていて、

最後の方には文章問題がある。


「銀貨が48枚あります。これを4人で同じ数ずつ分けると一人何枚になるでしょうか?」


さすがに簡単すぎでは……

ここはもうサイナス先生にも習ったところだし。

さっさと解いてしまおう。


「ベルナール先生、できました」

「私もできた」


最近、俺と言い出したエリアスだったけど、

先生の前ではさすがに「私」呼びに戻していた。


先生は二人分の解答をチェックして、頷いた。


「はい、お二人とも完璧ですね。セレナ様はまだ8歳と伺いましたが、すでにここまでできるのですね」

「魔導士のサイナス先生に読み書きと簡単な計算は習っていたので」

「そうだったのですね、すばらしいです」


では、次はこれをと言いながら、ベルナール先生はまた小テストを私たちの目の前に置いた。

次は三桁の足し算と引き算、それに二桁の掛け算と割り算とまたもう少しレベルが上がった文章問題か。

これもまだまだ簡単だなー。

そろばんをやっていた私なら暗算レベル。


さらに3枚目のテスト。


「これはできなくてもかまいません。念のための確認です」


最後は、足し算と引き算が四桁になり、掛け算も三桁×二桁になっていた。

まあ、これもどうにか暗算でいけそうだけど、やっちゃっていいのかしら。

でも、叔母様からデザイン費とかもらっていて、計算方法とかは教わったし大丈夫かな。


「できました」

「え!セレナ、早すぎないか?」

「セレナ様、できたのですか?」


エリアスとベルナール先生が驚いている。

やっぱり早すぎたかな。


「普段、叔母様からデザイン費としてお金をもらっているから計算は慣れているの」

「ああ、なるほどな」

「デザイン費?」

「ああ、セレナの叔母は、王都にあるブティック ローゼリアという店を運営していてな、そこのドレスのデザインをセレナがやっているのだよ」


ベルナール先生が驚いたような表情をしているけど、

さらに後ろで見学していたクラリス先生が両手で口元を押さえて目を見張っている。

どうしたのだろう?


「なるほど、それで計算にお強いのですね。しかし暗算でここまでできるとは才能ですね」

「ああ、私もここまでの計算はまだ苦戦してしまう」

「殿下もかなり高いレベルですから、ご心配なさらず頑張りましょう」


こうして、どうにか最初の授業は終わった。


それからは、週に数回、数学、歴史、あとガルナート語を学んだ。

驚いたことに、ガルナート語は日本語にかなり近い。

そもそも醤油は『ソイユ』だし味噌は『ミソ』なのだ。


「オハヨウゴザイマス、ホンジツハガルナートゴノレンシュウデス」

「オハヨウゴザイマス」

「オハヨウ、ゴザイマス」


ガルナート語の授業の時は、最初読み書きはしたが、

そのあとは、授業中はずっとガルナート語で話すようになった。

私的には思っていたよりすんなり覚えることができて、楽しく話している。


ここまで日本語だと、ガルナート王国の先祖は実は日本人の転生者だったのでは?と思ってしまう。

カランドールとガルナートのハーフであるベルナール先生の髪色が黒なのも気になるし。

将来、絶対行ってみたい国になった。


先生が最初の頃、夕飯に醤油や味噌が使われていることにいたく感動していた。

ベルナール先生のお母様がたまに作ってくれた食事と味が似ていたようだ。

ベルナール先生も侯爵家の人だけど、お母様が故郷の料理を食べたくてたまに作ってくれていたんだって。


「セレナハ、ガルナートゴガ、ウマイナ」

「ホントウニ!モウガルナートニスメルレベルデスヨ!」

「ハハハ、ナンカスンナリオボエルコトガデキマシテ」

「ワタシガ、ガルナートコク、イクトキハツウヤク、キテホシイ」

「イイデスネ!ゼヒ!」


エリアスが片言のガルナート語で、ガルナートに行く時は通訳で来て欲しいと冗談を言っていたけど、

ここまで話せるエリアスもすごい。

私みたいなチートではないのに。

やっぱり地頭がいいのだわ。


初めは面倒臭かった勉強だったけど、

ひとりじゃないから、とても楽しくできて、

エリアスには感謝しなきゃな。

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