24話 街を案内する
最近、エリアスが騎士団の朝の訓練に参加するようになった。
「今日から訓練に参加することになったエリアス王子殿下だ」
朝、騎士たちと整列していると、父である騎士団長から発表があった。
「まずは朝の訓練だけ参加させてもらう。まったく訓練を受けたことがないのでよろしく頼む」
全然聞いていなかったからびっくりしてしまった。
ちなみに、セドリックさんも一緒に参加するみたいだった。
挨拶が終わり、エリアスの近くに行って聞いてみた。
「エリアス、なんで急に訓練に参加することにしたの?」
「色がわかるようになって外の世界に興味が出てきて、せっかく、北西の守護者と呼ばれているグランフェル辺境伯家に来たのだから、鍛えるのもありかなと思ってな」
「そっか、すごく良いと思う!手伝えることがあったら言ってね」
「ああ、ありがとう」
正直、エリアスは色白でほっそりし過ぎているし、私より食べないから心配していたんだよね。
ずっといろんな人から嫌な視線を送られていて、外に出られなかったから仕方ないかなと思っていたんだけど、
前向きになってくれたみたいでよかった。
♢♢♢
それから数日経って、今日はエリアス達と街に来た。
ここの街は屋敷から馬車で30分くらいのところにあるシュタインガルドという街だ。
エルナード領の中でもかなり栄えている街になっていて、
石畳の道にレンガの家が並んでいて、前世の記憶にあるドイツに似た雰囲気の街並みになっている。
今日はここで私が街案内をする予定だ。
ちなみにエリアスは毎日朝練が終わるとヘトヘトで、夜は気絶するように早寝をしているらしい。
そんな状態で、朝練終わりに買い物なんて行けるの?って聞いたら
「……大丈夫だ」と両手で剣を地面に突き刺して、汗だくで息切れしながら全然大丈夫じゃない感じで言っていた。
さすがに無理では?と思い、
今日は訓練終わりに私の治癒魔法で筋肉疲労を治してあげた。
「毎日、これをしてほしい……」
とボソッと言っていたけど、これを毎日やると筋肉が育たないから、無理なんだよね。
今日だけ特別です。さすがに可哀想過ぎたんで……。
そして、今日はなんとリヴィアお姉様も一緒に参加してます!
「お姉様、騎士団の訓練の方はいいんですか?」
「ええ、たまには休めと父上からも言われたの」
「お姉様、全然休まないから心配です」
「再来年には魔導学院に入ってしまうし、それまでに騎士団で学べることは学んでおきたいんだよね。将来のために」
最近のお姉様は魔導学院に入るための勉強が前より増えて、
騎士団の訓練にも本格的に参加するようになってしまったので、
全然遊べていなかったからうれしい!
「エリアス殿下、初日にお会いして以来ですね。今日はよろしくお願いします」
「ああ、よろしく頼む」
エリアスとお姉様が挨拶をしていた。
「さて、エリアス、どこか見たいところはある?」
「そうだな、とりあえず宝飾店に行って、セレナの髪飾りを見ようか」
あの時はお父様に言われて、髪飾りがほしいって言ったけど、本当にお礼なんて気にしなくていいのになー……。
「それでしたら、そこの路地を曲がったところにある宝飾店が品揃えもよくていいと思います」
どうやら、リヴィアお姉様が案内してくれるようだ。
正直、私はまだひとりで街に来たりしていないから、
今回お姉様が参加してくれて本当に心強い!
あと、さすがにエリアスの護衛が少ないので、
騎士団の人が私服で一緒についてきてくれている。
まあ、正直、私とお姉様とセドリックさんがいれば問題ないと思うけど……。
「セレナ、この間話していたけれど、どんな髪飾りがいい?」
私は店内をウロウロしつつ、何かないかと探した。
店内には、ネックレスから耳飾り、指輪など所狭しと並んでいる。
高そうなものは透明ケースの中に飾ってあるようだ。
その中に、手に取って見ることができる髪飾りコーナーがあったので行ってみた。
んー、この水色と紺色のお花のモチーフのものも可愛いけど、訓練時にはつけられないよなー。
私は一度、手に取ったけど元の場所に戻して他のものを見てみた。
「あ、これいいかも」
ベースに金色と銀色があって、植物の柄が全体的に描かれており、真ん中に宝石が埋め込まれている。
金色のほうはピンクの宝石で、銀色のほうには水色の石が埋め込まれている。
これは迷う。
正直、どっちも可愛い。
手に持って悩んでいると、お姉様が話しかけてきた。
「あら、それ可愛いわね」
「シンプルなので訓練時にも付けられそうかなと思って」
「たしかに訓練時は紐で結んでいるけれど飾りとか付けられないしね」
やっぱりお姉様も同じこと考えていたみたい。
訓練だけど、ただの紐だと寂しいんだよね。
「そうだお姉様、これお揃いでつけませんか?」
「いいわね!」
「お姉様の髪色だと、金も銀も合いそうだけどやっぱり石はピンクの方が合いそう!」
私はお姉様の髪に当てて真剣に考える。
「セレナはどっちがほしいの?」
「正直両方めっちゃ迷っています」
「毛先がピンクだからピンクの石も合うし、私の目の色が水色だから水色も捨てがたい……」
目の前にある鏡を見ながら、髪留めを合わせてみた。
「ふふふ、いろいろ似合うと大変ね」
お姉様は笑いながら鏡を覗き込んできた。
お姉様とのショッピング、すごく楽しい。
そういえば、こういう買い物って今世ではあまりしたことなかったな。
「決めた!お姉様はピンク!私は水色!でどうかな?」
「私はセレナのセンスを信じているからセレナが決めてくれたものでいいわ」
「お、決まったか?」
ちょうど決まったところで、エリアスが覗き込んできた。
お姉様と盛り上がりすぎてエリアスのこと放置しちゃっていた。
「うん!この銀色のにするわ」
「わかった、これは俺からプレゼントをする」
あれ、エリアスって一人称俺だったっけ?
訓練に参加するようになって、騎士たちの口調がうつっちゃったのかな?
「本当にいいの?」
「もちろん。あ、そっちの金色のはどうするんだ?」
「これは私がお姉様にプレゼントしようと思って」
「それなら、これも俺が払うよ」
「ええ、悪いよ」
「いや、正直この髪留めを一つや二つプレゼントしたところで君へのお礼は足りないと思っているから払わせてくれ」
ドレスのデザインをして入ったお小遣いでお姉様にプレゼントしようと思っていたんだけどな、どうしよう。
「セレナ、せっかくこう言っていただいているし、甘えちゃいましょう!エリアス殿下、ありがとうございます」
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
「ああ、じゃあ、支払いをしてくる」
お姉様の言葉に促されて、エリアスに買ってもらうことにした。
いろいろ気を使わせちゃったなー。
私からも何かお礼できないかな。
あ、これいいかも。
私はひとつ思いついた。




