22話 訓練と特訓
「師匠ー、おはようございます!」
今日は昨日話していた通り、バルド師匠のところにエリアスとセドリックさんを連れてきている。
ロウェルさんもエリアスに同行している。
「おー、セレナ来たか、めずらしく馬で来たんだな。ん?お前らも来たのか」
「師匠、エリアスは王子殿下だよ、口調!」
「おお、そうだった。申し訳ございません」
バルド師匠は軽く頭を下げた。
「問題ない。今日はセレナの付き添いだ」
エリアスは軽く手を上げた。
「さて、とりあえず、今から森でセレナに指導をせにゃならんのだが、お前らはどうするんだ?」
「私もついて行ってもいいだろうか?」
師匠が唸りながらエリアスやセドリックを見た。
なんだろ、見られながら特訓ってなんか恥ずかしいな。
「見ていても、そんな面白いものでもないと思うのだけど」
「いや、どういう修行をやっているのか気になってな」
「そうじゃなー、もうすぐ夏とはいえ、魔獣がまったく出ないというわけではないからなー」
師匠はエリアスが危険な目に遭うかもしれないから渋っているみたい。まあ、王子だしね。
「私が護衛しているので、そこは大丈夫かと」
セドリックが師匠に声をかけた。
「ああ、そうか、セドリックがいるなら大丈夫か、ちゃんとお守りしろよ」
「もちろんです!」
セドリックさんは右手を握り、左胸を叩いた。
騎士がよくやっている挨拶だ。
「さて、今日は森に入ってわしは木剣で行くから、セレナはひたすら回避をするように」
「そ、それは怪我しないのか?」
エリアスが驚いている。
「手加減はしているから大丈夫だ」
「それに怪我しても自分で治せるから」
こういう時に治癒魔法を使うことができるのは便利だよね。
この特訓は何回かやっているけど、結構難しいんだよなー。
「あと、魔獣が出たら対処するように」
「短剣は使ってもいいですか?」
「ああ、いいぞ」
私は腰にある短剣を触って確認した。
「セドリック、基本的に魔獣の対処はセレナにさせるから、お前は殿下の周りだけ注意しておけ」
「え、セレナ様がすべてですか?」
「セレナなら、単体でヴォルガベアくらいまでなら倒せるから大丈夫だ」
「ヴォルガベアを単体で!?」
普段、無表情のセドリックさんがめっちゃ驚いている。
「セレナ様、今7歳でしたよね……?」
「そうですね、あ、そういえばもうすぐ8歳になりますね」
「セレナ様は何月に誕生日なのですか?」
ロウェルさんが急に話に入ってきた。
「2ヶ月後の蒼天の月ですね」
この世界は癒しと彩りの女神ルメリアーナを信仰していることから、
月の名前にも色が絡んだ名前になっているんだよね。
ただ、数字が並んでいるより季節も感じられて私は好きなんだよね。
基本12ヶ月で構成されているから覚えやすくてよかった。
――――
1月:明白の月
2月:銀雪の月
3月:芽吹の月
4月:彩花の月
5月:新緑の月
6月:慈水の月
7月:蒼天の月
8月:橙夏の月
9月:黄熟の月
10月:紅奏の月
11月:深紫の月
12月:金夜の月
――――
「2ヶ月後ですって、殿下。まだ余裕があってよかったですね」
「私は何も言っていないだろう」
ロウェルさんとエリアスが何かボソボソと話している。
「どうしたの?」
「い、いやなんでもない……」
どうしたんだろう?
「もうすぐ8歳だとしてもヴォルガベアは新兵がひとりでやっと倒すレベルなのですが……」
「ええ!でもお姉様も7歳の時には余裕で倒してましたよ?」
セドリックさんが信じられないという顔をしている。
「セドリック、これがグランフェルの血筋ということじゃ。それにこの家系は5歳から訓練が始まるからな」
「5歳から……これが北西の守護者といわれる由縁なのですね」
まあ、たしかにグランフェルの血はすごい。
前世では考えられないくらい、身体能力が高いし吸収力も高い。
魔法が使えなくてもどうにかなるのでは?と前向きになれるのもこの能力のお陰だ。
そんなこんなで、やっと修行を開始し、
途中でダガーラビットという兎型で角がある魔獣が現れたので、短剣を投げてサクッと倒した。
でも、その瞬間、後ろから師匠が切り込んで来たから、あれはめっちゃ焦った。
どうにか、もうひとつの短剣で木剣を弾き、後ろに飛び跳ねて避けたけど不意打ちはずるい。タチが悪い。
「ふむ、うまく避けたな」
「師匠、不意打ちはずるいですよ」
「何を言っているのだ、いつ何時も背後を気にしないとやられるぞ」
「うう……」
しばらく特訓をして、本日は終わった。
「ふー、疲れたー」
「お疲れ、セレナ」
エリアスがタオルを持ってきてくれた。
「あんな激しい特訓をしているとは思っていなくてかなりハラハラしたぞ」
「これでも最初のころに比べるとだいぶ当たらなくなってきたんだよ」
「ワシもちゃんと見極めてやっているからな」
師匠はさっき私が倒したダガーラビットを解体しながら言った。
「さて、このダガーラビットを使って昼にでもするか」
「いいですね!私も手伝います!」
ダガーラビットは淡白だからホワイトシチューとかがいいかなー。
「セレナも料理をするのか?」
「セレナはけっこう料理がうまいんだぞ。貴族の令嬢とは思えん」
そういえば、令嬢は基本的に料理はしないんだっけ……。
「師匠が料理をするといつも焼くか煮るだけになるから私が作ってるんですよ!」
師匠が作ると塩胡椒で焼くか野菜と煮るかの2択なのだ。
「私たちもご一緒してしまっていいのでしょうか?」
ロウェルさんが聞いてきた。
「量もあるし、大丈夫だ。まあ作るのは基本セレナだがな」
「感謝する。セレナの料理が食べられるのは楽しみだ」
エリアスが嬉しそうに答えた。
「手伝えることがあったら言ってください。私も一通り料理はできますので」
さすがロウェルさん、万能すぎる。
それから師匠とロウェルさんの3人で料理をし、お昼を食べた。
我ながら美味しくできたし、みんなにも好評でよかった!
次の更新は、26日予定です!




