19話 RGBだったのか!
「セレナティア嬢、おはよう!」
私は今日も朝から訓練をしていて、今終わったのだが、
そこには、ニコニコした顔のエリアス殿下がタオルを手にして待っていた。
「お、おはようございます、エリアス殿下。早いですね」
「ロウェル様もノルディス様も朝から大変ですね。おはようございます」
私はタオルを受け取り汗を拭った。
「こんなにテンションの高いエリアス様は初めてですよ」
「自分は朝練をしているので問題ありません。ロウェルのことを名前呼びしているなら、自分のこともセドリックと呼んでくれ」
「わかりました、セドリック様」
ロウェル様は苦笑しながらもとても嬉しそうな顔をしている。
セドリック様は通常通りって感じだな。
「今日で3日目だからな!待ちきれなくてつい早起きしてしまった」
「ふふふ、いくらなんでも早すぎますよ。朝ごはんは食べましたか?」
「そういえば、まだだな」
「では、一緒に食べましょう。治療はその後で」
「そ、そうだな!」
私は照れている殿下と食堂に向かった。
ちなみに、治療のことをお父様に言ったら、それはそれは深いため息をつき、懇々と静かに怒られた。
スノウも一緒に怒られ、二人並んで反省をした。
でも、最終的には許してくれ、治療がすべて終わったら、殿下を含め話し合いをすることになった。
「あれから、調子はどうですか?」
私は朝食を食べながら殿下に聞いた。
「まったく問題はない。まだ青だけだが色が見えることが新鮮で楽しい。こんなワクワクした気分は生まれて初めてかもしれない」
殿下は笑顔で答えた。
そういえば、ここ数日は夕食も一緒に食べているな。
楽しく朝食を取り、
「さて、食事も終わりましたし、今日はどこで治療しましょうか?」
「その前にお願いなのだが、今日もセドリックは護衛として来るのだが、ロウェルも同行したいと言っていて、良いだろうか?」
殿下が後ろに控えているロウェルをチラッと見た。
さすがに目を治したことを従者に隠すのは無理よね。
生活に支障もでちゃうしね。
「大丈夫ですよ。ただ治療が終わった後、ロウェル様とセドリック様には父との話し合いに参加してもらうことになるかと思います」
「すまぬな、さすがにあの2人に隠すのは難しい」
「青色が見えるようになったことはお二人には伝えているのですよね?」
「ああ、流石に隠すのは無理で伝えさせてもらった」
青色が見えると話した時に二人には言ったと思っていたんだけど、
気を遣ってくれたんだな。
「その時、詳しく話さなかったのですか?」
「大体の予想はついていると思うが、明確には聞いてこないし、私も話していない」
「そうだったのですね」
私は真摯な心遣いを嬉しく思った。
「今日だが、またあの湖に行きたいのだが良いだろうか?」
「大丈夫ですよ!あ、ただ私、湖に行く時は訓練がてらスノウと走って行くので、湖集合でいいでしょうか?」
「この間の帰りは馬じゃなかったか?」
「あれは帰りがちょっと遅くなりそうだったので、厩舎に預けている馬で帰った感じですね」
「湖までそこそこ距離あると思うが大丈夫なのか?」
「はい、今身体強化の練習もしていて、それも兼ねて走っているのでそこまで時間はかからないと思います」
「いや、そういうことではないのだが……わかった。湖で待っている」
♢♢♢
「は、早いな。むしろ待たせてしまったな」
殿下はびっくりしながら私に言った。
「馬はここまで入れないので、森の手前の厩舎に預けますからね。その間に着いちゃいました」
屋敷から湖くらいの距離だと、ぶっちゃけ馬よりノンストップで走ったほうが早いんだよね。
最近はちょっとずつ身体強化もできるようになってきたし!
「なるほどな……私も鍛えるために走ったほうが良いだろうか」
「いやー、どうですかね、殿下はカランドール王立魔導学院に入る予定ですよね?」
「そうだな、今のところ」
「それなら、そこまで体力は必要ないのでは?」
「まあ、そうだな……」
殿下は何かを考えているようだった。
「さて、敷物も敷きましたし、ここに座ってください。治療を始めましょう」
「本当にセレナ様が治療するのですか?」
さっきまでずっと空気みたいに存在を消していたロウェル様が心配そうに話しかけてきた。
「そういえば、説明していませんでしたね」
私はこの間、殿下に説明したように光魔法だけ使えること、魔力が多いことを説明した。
「まさか、大司教でさえ治せなかった殿下の目をセレナ様が治せるなんて……」
「まあ、信じられないですよねー」
「いや、そういうわけではないのですが……」
ロウェル様が慌てて否定した。
「まあ、側で見ていていただければわかると思います。危ないことはないので」
「わかりました、急に失礼いたしました」
ロウェル様は深々と頭を下げた。
そして、私は前回同様、殿下の頭を包み脳から視神経を修復するイメージをした。
殿下の頭全体を暖かな光で包んだ。
「よし、今日はここまでで。ゆっくり目を開けて辺りを見渡してみてください」
「木々に色がある」
殿下が湖の方など、キョロキョロと周りを見渡した。
「よかった!次は緑が見えるようになったのですね!木々の色は深い緑色です!」
「これが緑……。物語などで森には緑が広がっていると読んだことがあるが、これが緑なのだな。草の方も薄い緑だ」
殿下が足元の草を触った。
ん?薄い?明るいではなく?
草は黄緑だから薄いよりは明るいでは?
「殿下、草の色は薄い緑ですか?草の色は木より明るく見えませんか?」
「いや、明るいというよりは薄いかな?何か問題があるのか?」
これは赤を認識できないことによって黄緑が認識できていないのかな?
え、もしかして順番は違うけどRGBで治りつつある?
たしか、赤 (Red)、緑 (Green)、青 (Blue) の3つの色が光の三原色で、3つの光を混ぜ合わせることで様々な色を表現することができるんだっけ?加法混色とかって名前で光は重なるほどに明るく、白くなっていくんだったかな。
ディスプレイとかがRGBで色を再現してたはず。
ここにきて前世で勉強した色彩学が役に立っているとか……。
それがなんで目を治すのに当てはまってしまったんだろう。
人の目の構造はそこまで詳しく覚えてないからRGBがベースになったのかな。
あれ、そうなると私の目の色ってちゃんと見えてなかったのでは?
「で、殿下、ちょっと私の目を見てもらえますか」
私は慌てて殿下に聞いた。
「急にどうした?」
殿下がこちらを向いた。
「ん?目の色が3日前と違う……もっと明るくて輝いて見える」
や、やっぱり!RGBじゃん!
となると、やっぱり3分の1は治ってたんだ。
「殿下、これが私の本当の目の色です。緑が見えるようになって、青と緑を掛け合わせてできる色も認識できるようになったのですよ、ほら空の色や湖の色も違って見えませんか?」
RGBの概念がないと説明難しいな……。
絵の具とかだと色を合わせたら暗く見えるからな。
「ほ、本当だ、もっと深みがあり明るくキレイだ、青だけを認識しているときもすごく綺麗だったのにこんなに違うなんて」
殿下は空と湖を行ったり来たりして見ている。
「今気づいたのか?」
「はい、申し訳ないのですが私も目を治すのは初めてで、本人しか認識できないことで、どう治っていくかわからなかったのです。青なら青系統の色は全部見えるのかなと勘違いしていました……」
「そうか、まあ私の目は私にしかわからんからな」
殿下は瞼の辺りを触りながら言った。
「すみません……でも、これで次は赤が見えるようになり、きっと全部の色を認識できるようになるはずです!」
「なぜ、青緑で次が赤なのだ?」
「それを説明するのは今の私には無理なので、いずれ解説できるようになったらします。」
この世界の色彩について調べないと変な説明になってしまいそうだから、慎重に話さないと。
「その赤色?がわかると具体的にどこに色がつくのだ?」
「そうですねー……わかりやすいところだと、あ、私でいうと肌の色ですね、もっとわかりやすいのは唇ですね!唇が1番赤に近いと思います」
私は自分の唇を指しながら言った。
「く、唇……」
殿下は顔を真っ赤にして何か呟いている。
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもない!そうなると、やっと本来のセレナティア嬢を見ることができるのだな」
「そうですよ!私だけじゃありません、ロウェル様やセドリック様、ここにある花々の色もわかるようになりますよ。楽しみですね!」
「それは楽しみだ」
殿下は笑顔で言った。
今週の金土日は連続投稿!ということで、明日も投稿します。




