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詰んでる令嬢と色を知らない王子  作者: モモノ空
第一部 エルナード領編

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18/31

18話 治せる力があるなら治したい

王族の治療をしていいものかと迷ったけども、

どうやってもこの不憫な王子を私は放っておけないのだ。


スノウのほうをチラッと見ると頷いてくれた。

私はフーっと一呼吸して言った。


「殿下、私には秘密があります」

「それは魔法が使えないということではなく?」

「実は私、ひとつだけ使える魔法があるのです」

「ひとつだけ?」

殿下が不思議そうな顔をしている。


「はい、それを使って殿下の目を治せるかもしれないなって」

「それって、もしかして光魔法?でも、それなら他の生活魔法なら使えるのでは?」

「普通はそうなのですが、私の場合なぜか光魔法に全振りしていて他の魔法は一切使えないのですよね……」


本当になんで光魔法全振りなんだ。

生活魔法が使えたらどんだけ便利か。

水を出すとか、火をおこすとか、汚れを落として乾かす魔法とか、異世界ならではの魔法を使ってみたかった!

クリーンの魔法とか使えたら最高だったのに。

よくあるライトに関しては光魔法属性だから使えたんだよね。

ただ最初は魔力の加減ができなくて、眩しすぎて目が死んだけどね。

それから必死に魔力操作したらいいかんじの明るさに調整できるようになった。

そのおかげで、騎士たちの軽い怪我とかも無駄な魔力を使うことなく治療できるようになってよかった。


今は魔力はあるのだから、肉体強化くらいはできないかとバルド師匠やサイナス先生に相談しながら研究している。

走りながら、筋肉疲労がきたらこっそり回復とかはできるから、長距離なら走れるんだけどなー。

ただ、これをやると筋肉が鍛えられないので程々にしているけど。

いざという時、逃げるには使えそうだなと思っている。


「でも、私の目は大司教に治癒魔法をかけてもらってもダメだったのだ。さすがに無理では?」

「はい、無理かもしれませんが、私の治癒魔法は他よりちょっと強いのでもしかしたらと思いまして」

「ちょっとねぇ……」

私の隣で寝そべっているスノウがぼそっと呟いた。


「どうでしょう?無理かもしれないのであまり期待はしないでください」

「いや、やってくれるならありがたい。あまり無理はしないで欲しい」

「わかりました。ではやってみますね」


私は膝立ちをして、殿下と向かい合った。

「ちょっと触っても大丈夫でしょうか?」

「ああ、大丈夫だ」


私も医者ではないから詳しくはわからないのだけど、

後天性の色盲は外傷によることが要因のこともあったはず。

それに、話を聞くかぎり殿下は後頭部を強打している。

ということは、脳から視神経に何かしらの影響が出て見えなくなった可能性がある。

そうなると、治すのは脳から視神経の間だ。


きっと治癒師は色盲とわかったときに目を治すイメージをしたと思うけど、

それだと眼球には影響がないから治らなかったんだと思うんだよね。


よし、イメージできた。


「さて、やってみますね」

私は頭の両サイドを両手で包んだ。

「な!」

殿下が顔を真っ赤にしている。


「触ってしまって申し訳ないのですが、ちょっと細かい治癒になりそうなので我慢してください」

「わ、わかった、よろしく頼む」

殿下は赤くなりながら目を瞑った。


「よし、では治癒魔法をかけます」

脳から視神経の修復をイメージして、でも一気に治すと視覚情報が多すぎて脳と目にダメージを負ってしまうかもしれないから、少しずつ点滴をするように……。

私はとりあえず、3分の1くらい修復するようにイメージした。

そして、殿下の頭全体を暖かな光が包んだ。


「よし、このくらいかな、ゆっくり目を開けてください」


殿下はゆっくりと目を開けた。


「色が……君の目の色だけ違って見える……」

殿下は目を見開いて言った。


「私の目の色は、青色なんですよ。ようこそ色のある世界へ」

にこっと笑って殿下を見た。


「これが色……」

殿下の目から涙が溢れた。


「殿下、湖のほうを見てください。青色が広がっていませんか?」

私がそう言うと、殿下が湖の方を見た。


「……すごい、青色が広がって……空も」


殿下は涙で濡れた目を大きく開きながらずっと景色を見ていた。

私はしばらく殿下の隣で静かに座っていた。


「殿下、そろそろ夕方になりそうなので帰らないと」

「ああ、そうだな」

と、いいつつまったく動く気がなさそうな殿下。


「殿下、明日の朝日もきっと綺麗ですよ。楽しみですね」

私は立ち上がりながら言った。

殿下は私の言葉にこちらを向いた。


「そうか、明日も色が見られるのか……」

「はい、これからずっと、もっとたくさん見られるようになるはずです」

「もっとたくさん」


私は殿下に手を伸ばした。

殿下は私の手を掴み、立ち上がった。


今までの死んだような目が嘘のようにキラキラしていた。


「ちなみに、違和感とか具合が悪いとかありませんか?」

「いまのところ、特に無いな」


大丈夫そうでよかった。

まだ3分の1くらい治したつもりだったけど、どうやら青しか見えるようになっていないみたいだな。

魔力絞りすぎたかな。


「殿下、私は今日、殿下の目を3分の1くらい治すつもりで治癒魔法をかけたのですけど、それより少なくかけたかもしれません」

「なるほど、それなら早く続きをやって欲しい!」

殿下が前のめりで言ってきた。


「まあまあ、落ち着いて。目は繊細なのです。一気に色がついた世界を見たらその鮮やかさのせいで逆に目が痛くなってしまう可能性があるのです。だから少しずつ治していきましょう?」

「そ、そうか……。じゃあ、続きは明日か?」

「そうですね、3日くらいは様子を見ましょうか?もしかしたら後々何か具合が悪くなったりするかもしれないので」

「3日もか……」

明らかに肩を落としてシュンとしている殿下。


今まで無表情だったから、なんだか可愛く見えてしまう。


「じゃあ、明日も私に様子を見せてくださいね。さて、帰りましょう!」

私は立って、殿下に手を伸ばした。


「そうだな、帰ろう」

殿下が私の手を取り、笑顔で言った。

明日も投稿予定です!

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