17話 エリアスの過去
ーエリアス視点
「2〜3歳の頃の話で、私自身はあまり覚えてないのだが、当時面倒を見てくれたメイドの中に間者が紛れていたようで、私は誘拐されたのだ」
「え!誘拐!?」
思いも寄らない話だったのか、セレナティア嬢は目を見開いて驚いている。
「馬車に乗せられどこかに連れていかれようとしたときに、騎士団が追いついて誘拐未遂で終わったのだが」
セレナティア嬢がホッとしたような表情をしている。
ころころとよく表情が変わるものだな。
「その時に馬車から放り出されてしまい、その時に頭の後ろの方を強打して怪我を負ってしまったのだ」
「ええ、だ、大丈夫だったのですか?いや、大丈夫だったからここにいるのか……」
「怪我はすぐ治癒師に治してもらったのだが、私はその前の記憶がなく、さらに色がわからなくなったらしい」
「では、小さい頃は見えていたのですね」
「ああ、ただ私には記憶がないのでなんとも言えんのだが」
セレナティア嬢は何か考えているような表情になり、黙ってしまった。
今まで、私の話をこんなに真剣に聞いてくれた人はいただろうか……。
だいたいは忌避感があったり、憐れんで気を遣っていたり。両親や兄は普通に接してくれていたが、たまに気を遣わせている感じがしたな。
セレナティア嬢は不思議な子だ。
色が見えないことを知っても何一つ態度が変わらず、
もっと知ろうとしてくれる。
「急に色がわからなくなったから、余計呪いなんじゃないかと言われたんだ」
「そんなわけあるわけがないでしょう!」
セレナティア嬢が怒った表情でこちらをみた。
「セレナティア嬢は私のことを気味が悪いと思ったりしないのか?」
「え?全く思わないですが?」
意味がわからないと言った表情でこちらをみてる。
「初め色が見えないと聞いた時は、生まれつきなのかなと思っていました。でも、後天的なのですね……」
「こう?なんといったのだ?」
「いえ、もしかしたら頭をぶつけた衝撃で見えなくなったんじゃないかなと思ったり」
「そんなことあるのか!?」
医師や高位の治癒師にも診てもらい、原因がわからないと言っていたのに、この子は一体……。
「あ、たぶんですよ!たぶん!話を聞く限り頭を打ってから記憶を失っているので、色を失った可能性もあるのかなって!」
記憶と共に色を……。
たしかに頭を打ったせいで記憶を失ったと聞いた。
まさか色も関係があったのか?
「なぜ、いままでその可能性に気づかなかったんだ……」
「あくまで憶測ですよ!」
セレナティア嬢が慌てながら答えた。
「とは言っても、記憶が戻っているわけでもないしな。記憶が戻っていないという事は色も望み薄か……」
まあ、期待しても仕方あるまい。
仕方ないけど……。
「もし治るなら、君が見ている景色を一緒に見てみたかったな」
「殿下……」
「暗い話になってしまい申し訳ない!」
「いえ、私が聞きたいと言ったので。話してくれてありがとうございます」
そう言った彼女の表情はずっと何かを悩んだままだ。
「セレナ、自分のしたいようにしていいと思うよ?」
ずっとセレナの隣に座っていたスノウがいきなり喋り出した。
「ちょ!スノウ!人前で話さないようにって」
わたわたしながら、私の方をみた。
「えーっとこれは……」
何を焦っているんだ?
ああ、なるほど。
「大丈夫だ、スノウが話せる事は知っている」
「え!いつの間に!?」
チラッとスノウをみると素知らぬ顔をしている。
「たまたま話してるタイミングに出くわしてしまってな」
「そうそう!夜に鼻歌歌いながら散歩してたらバッタリ会っちゃってさ!」
「ええー……。夜に何してるの?っていうか一緒に寝てたはずじゃん!」
「たまたま眠れなくてさ」
スノウが慌てたように言い訳をしてくる。
「まったく、気をつけてよね!」
スノウがしゅんとしてる。
本当にあの時と同じ奴なのか?態度違いすぎだろ。
冷めた目で見てると、こちらをチラッとみて、
ツンと無視してきた。
いい性格しているな、こいつ。
「殿下、あの……このことは……」
「大丈夫だ。他言はしない。ただコイツ……じゃない、この子は本当にアッシュウルフなのか?」
「あー、いやー……」
「フェンリルだよ」
「ちょっと、スノウ!」
セレナティア嬢が濁したのにサラッといいやがった。
しかし、フェンリルだと!?
「あの伝説に出てくるフェンリルなのか?」
「えーっと、そうですね、まだ子供なんですが……」
「お前より、僕の方が何十倍も強いんだから、セレナに変なことしたら許さないから」
こいつ、そのために自分がフェンリルだとバラしたな。牽制するために。
「スノウ!黙って!それに殿下のことお前とか言っちゃダメだからね!殿下、申し訳ありません」
キューンと言いながら、わざとらしくフセをしてるスノウ。申し訳ないと思ってないくせに。
「大丈夫だ。それにセレナティア嬢に何かすることもないから安心しろ」
スノウはじーっとこっちをみたあと、反対側をみて目を閉じた。
「それで、スノウは君に何をいいたかったんだ?」
「それはですね……」
セレナティア嬢はスノウの方を見て頷き、意を決したようにこちらを見て言った。
「……エリアス殿下の目、私が治せるかもしれません」




