14話 どうやら地雷を踏んだらしい
さっき、私は殿下にマカロンの説明をした。
なのに、ロウェル様は殿下にさらに説明をした。
私とロウェル様の説明の違いって……。
色と場所?
ロウェル様はわざわざ右からと説明をした。
その後の私のチョコミントの件も、
緑と茶色のコントラストと言ったら周りがザワついた。
もしかして、エリアス殿下は色がわからないとか?
だからいつも同じ色の装いなのかしら。
でも、それなら初めから言ってくれればいいだけのような?
わからん……聞いていいのかな?
この雰囲気で。でも聞かないとわからんし。
よし!
「あの……違っていたら申し訳ないのですが、もしかしてエリアス殿下は色がわからなかったりしますか?」
その瞬間、メイドがお盆を落とし、
エリアスがカチャンとティーカップを置いた。
やっぱり聞いちゃいけないやつだった?
「セレナ様、それは……」
ロウェル様が説明しようとしたが、殿下が遮ってきた。
「ロウェル言わなくていい、私から説明する。セレナティア嬢の言う通りだ。私は色がわからぬのだ」
「それなら最初から言っていただければ……」
私がどうにか弁解しようとしたら、殿下がかぶせて話してきた。
「黙っていたのは気味悪がられるからだ」
「気味悪いなんて!」
「セレナティア嬢にも不快な思いをさせたな。先に失礼する」
エリアス殿下はそういうと、さっさと帰っていった。
人の話を聞けー!
「え?ちょっ……!」
「セレナ様、申し訳ありません。先にお伝えしておくべきでした」
ロウェル様はそう言うと、頭を下げて急いで殿下に着いていってしまった。
ポツンと残される私。
周りを見ると気まずそうにしてるメイド達。
「ねえ、みんなは知ってたの?」
「そうですね、王都では有名な話でして……まさかセレナ様が知らないとは……」
私付きのメイドのリーナが代表して答えてくれた。
知らんがな!
王都に行ったこともないし、年齢的にも外のお茶会も参加したことないし!
言っといてよー。
私、なんか嫌なやつみたくなっちゃったじゃん!
っていうか、色盲くらいでみんな過敏過ぎない?
いるでしょ、そういう人!
……もしかして、この世界に色盲って知られてなかったりするのかしら。
それなら、この過敏さもわからんでも……。
とりあえず、このままだとまずいしお父様に知らせに行くか……。
気が重いと思いつつ、私はトボトボとお父様のいる執務室に向かった。
♢♢♢
コンコン
私は執務室のドアを叩いた。
「セレナです。入ってもいいでしょうか?」
「どうした?いいぞ」
お父様がペンを片手にこちらを見た。
「すみません、私、何やらエリアス殿下の地雷を踏んでしまったようで……」
「地雷?何があった?殿下と庭でお茶会をしてると聞いていたが」
「そうなんですけど……というか、お父様のせいでもありますからね!」
そうだよ、私が王都のこと疎いの知ってるのに、前もって教えてくれなかったのも悪いじゃん!
「む、なんのことだ?」
「殿下の目のことです!」
「目?あー、あのことか。有名な話なんだがな、セレナは知らなかったのか?」
「知らないですよ!私、王都に行ったこともなければ、家族以外のお茶会にも出たことないんですから!知るわけないでしょ!」
イライラし過ぎて、お父様に当たってしまった。
「それはすまん。みんな知っているものかと」
「いえ、私もお父様に当たってしまってごめんなさい」
理不尽すぎて、ついお父様にきつく言ってしまった。
私はしゅんとしながら言った。
「それでどうしたんだ?」
「殿下に色が見えないのかと聞いてしまいました……」
「それはまた、直球で言ったな」
お父様が苦笑した。
「だって、色が見えないってだけで、そんな大事なことだと思わなくて!」
「セレナは色が見えないことがたいしたことじゃないと思ったのか?」
「はい、いや、色が見えないのは大変だなと思いますよ、もちろん。でも自分でどうにかできるものではないでしょう?」
「ふむ、そうだな」
お父様は頷きながら答えた。
「それをあんなわざわざ腫れ物を扱うみたいな……」
「セレナは知らないだろうが、王都では色が見えないのは呪いだと言う噂があってね」
「は?呪い?」
「ああ、セレナは教会が祀っている女神様のことを知っているか?」
「はい、癒しと彩りを司る女神ルメリアーナですよね?」
「そうだ、その彩りというところが問題でな。色が見えないことで女神の加護がないのではないかと噂が立ち、そのうち呪われてると言われるようになってしまったのだ」
「そんな無茶苦茶な……」
あまりの滑稽さに、言葉が出てこなかった。
「陛下も教会の大司教も否定はしているのだが、王宮の誰かが言い出してもうどうにもならなくなってしまっているらしい」
「そんな……」
本人は何も悪くないのにそんな噂が経ってるなんて。
そりゃー、人見知りの根暗にもなるわけだわ。
納得してしまうと、余計自分が軽率に聞いてしまったことを後悔してきてしまっている。
「私、後日謝りたいと思います。不可抗力なんですけど殿下の傷をえぐったのは確かなので」
「そうだな、すまんが殿下と話し合ってくれると助かる」
「わかりました、それでは仕事中失礼しました」
私は頭をさげて退出した。
はー……面倒臭いことになった。
「セレナ、大丈夫?」
ずっとそばにいたスノウが声をかけてきた。
約束通り、殿下がいるところでは大人しくしてくれてとてもいい子だ。
「大丈夫だよ!スノウもそばにいてくれてありがとね」
私はスノウを撫でながら言った。
「セレナが困ってるなら、僕が殿下にガツンと言ってあげようか?」
「ううん、これは私と殿下で話し合わないとダメだから大丈夫だよ」
とりあえず、謝ろう。
そして、謝っても無視されるならそのときはもういいや!知らん!




