12話 根暗な王子との出会い
あれから1ヶ月が経ち、今日は王子が来る日だ。
さすがにいつもの訓練着ではなく、ちゃんとドレスを着ている。
もちろん、自分でデザインしたやつだ。
お母様とお姉様のドレスも私がデザインしたやつだ。
「あら、セレナ、どうしたの?ニコニコして。殿下がくるのが楽しみ?」
「そんなわけないじゃん、たぶんセレナは私たちがセレナのデザインしたドレスを着てるのがうれしくてニヤニヤしてるのよ」
やば、顔に出てたかな。頬を触ってみる。
「リヴィアお姉様、大正解!」
「やっぱりねー。この新しいデザインのドレスもすごくかわいい!ありがとうセレナ!」
「どういたしまして、お姉様は背丈があるからストライプが似合うよね!お母様も胸元から首元までの繊細なレース、すごく品があって素敵!」
「あらあら、ありがとう。こんなデザインできるセレナは本当にすごいわ!」
お母様が私の頭を優しく撫でてくれた。
本当に二人ともよく似合う。
自分のドレスを作るより、誰かの似合う服のデザインをしたほうが100倍楽しい!
そんなことを考えていたら、屋敷の前に馬車が止まった。
「ようこそおいでくださいました。エリアス殿下」
お父様が胸に手を当てて礼をした。
「しばらくの間、よろしく頼む。エリアス・ルシアン・カランドールだ」
そういって、少し頭を下げた。王族って普通頭とか下げないイメージだったけど、
礼儀正しい謙虚な人なのかもしれない。
エリアス殿下は、9歳のはずだから身長は私とほぼ変わらず、すごく色白で線の細い人だった。
表情はほぼなく、髪の色がプラチナブロンドで肩より長く後ろで結んである。目の色はくすんだ紺色をしていた。
「こちらが妻のアリシアで、その隣が姉のリヴィアーナ、そして一番下のセレナティアです」
「アリシア・グランフェルです」
「リヴィアーナ・グランフェルです」
「セレナティア・グランフェルです」
3人で挨拶をした。
「あと、こっちが従者のロウェル・シェリルドで、後ろにいるのが護衛のセドリック・ノルディスだ」
「従者のロウェル・シェリルドです。しばらくよろしくお願いいたします」
シェリルド様は年齢は18らしいけど、とても落ち着いていて柔らかい雰囲気の人だな。
髪の色はダークブラウンで、瞳の色は落ち着いた緑色だ。
「セドリック・ノルディスだ。エリアス殿下の護衛として同行している。こちらにいる間は強さで定評のあるフェルン騎士団と一緒に訓練にも参加させていただけるとうれしい。よろしくお願いします」
ノルディス様はシェリルド様より少し上で21歳らしい。
紺色の髪、紺色の瞳で、護衛なだけあってがっちりしていてキリッとした雰囲気だ。
「ああ、ぜひ参加してくれ!毎朝、訓練場で鍛錬しているから来てくれればいい」
「ありがとうございます!」
お父様とノルディス様はうれしそうに握手した。
「あとは息子のカイエルがいるのだが、今は王都にある王立魔導学院に通っていて、こちらには出向くことができず、申し訳ない」
「勉学に励むことは大事なことだ、問題ない」
「そう言っていただけると助かります。さあ、どうぞ中に入ってください。部屋も用意しておりますが、まず部屋に案内したほうがよろしいでしょうか?」
父が先導しながら、屋敷に入った。
「そうだな、まずは着替えもしたいので案内していただけるだろうか」
「はい、承知しました。側近と護衛の方の部屋も用意しましたので、メイドのほうでご案内させていただきます」
父は執事に目配せをして、指示を出した。
とりあえず、殿下は着替えのため各自部屋に向かった。
私たちは、客間でお茶の準備をして待つことにした。
♢♢♢
しばらくすると、殿下が客間にやってきた。
着替えたみたいだけど、着替える前と同じグレーのスーツだった。
え、王族だけでなく貴族って色々な衣装を持っているイメージだったけど、
さっき着てたスーツとほぼ一緒?柄だけ少し違うだけだな。
シェリルド様が服選びをミスするようには見えないから、王子殿下のただの好みなのかな。
私は姉や兄の衣装デザインを最近してたせいで余計王子の衣装に目がいってしまった。
「待たせてしまったか?」
「いえ、ちょうど準備が終わったところです」
お母様がにこやかに答えた。
「エリアス殿下、体調のほうはいかがですか?長旅お疲れになったでしょう?」
「いや、大丈夫だ」
「あ、よかったら、お茶と甘いものをご用意いたしたので召し上がってください」
「いただこう」
エリアス殿下は、黙ってお茶とお菓子を摘んだ。
さすが王子なだけあって、所作が無茶苦茶綺麗だった。
自分ももう少し頑張らないとなと思ってしまった……。
「そういえば、もうすぐうちのセレナが8歳になるのですが、殿下は今9歳でしたよね?」
「ああ、そうだな」
「年も近いので、仲良くしていただけるとうれしいですね」
「ああ」
えー……、この王子、口下手なのか?人見知り?
お母様が一生懸命話を振っているのに、返答短すぎない?
こんな人と仲良くなんて、私なれる気がしないんだけど。
あまりにも返答短すぎて、シーンとなっちゃってるじゃん。
気づけよ!
「あー、殿下は明日以降どのように過ごす予定ですか?」
「そうだな、とりあえず今週は屋敷でゆっくり過ごしたいと思っている」
「そうですか、では、何か入り用があれば、メイドのほうに聞いていただければと思います」
「助かる、ありがとう」
そんなかんじで、内容のないうっすーいお茶会が終了した。
これは仲良くなる以前の問題では……?
ちなみに、スノウは私の足元に座ってずっと寝てるふりをしていた。




