2022/10/16
3984.
「・・・それで、そんなことで母さんは学校に呼び出されたのか」
「ああ、そうだ・・・父さんも、面目ない」
「あーーーーっはっはっは! だぁぁ~~~~~~っはっはっはっは!! 兄・・・兄・・・!! マジウケる・・・! あぁ~~~~っはっはっは!」
「全くだよ。高校生にもなって何をやってるんだい。学校に出向くなんて恥ずかしいったらありゃしない」
3985.
「しょ、しょうがないだろう! “絶対押すな”って言われたら押しちまうのが人間のサガなんだから!」
「だからってマジで押す奴があるかよ! あーーっはっはっは! 笑わかすなよ! サバ令嬢への殺人未遂に続いて笑いの無差別殺人までやるつもりかよ! あぁ~~~っはっはっは!」
「美々香もやかましいよ。そろそろ静かにするんだね」
「無理だ・・・無理だろ・・・くくく・・・っはは・・・っ、だぁぁ~~~~っはっはっはっは!!」
3986.
「くっそ・・・人のやらかしでは盛大に笑いやがって・・・お前だってあの場にいたら同じことしてたからな!?」
「そんなの関係あるかよ! はは・・・っ! 今回やったのは紛れもなくお前・・・くくっ、しかも、みずき兄も一緒って・・・あっはは・・・っ!! バイト代返してでもその場面に居合わせたかったぜ・・・ははっ!」
「全く。何がそんなに面白いんだか。あやうく家族が犯罪者になりかけたんだよ」
「だからこそ面白いんじゃないか。はは・・・っ。良かったなぁ? サバ令嬢が取り計らってくれて。でなきゃ良くても1週間謹慎、最悪は少年院だったぜ? だぁぁ~~っはっはっはっは!!」
3987.
「あ~~っ、だぁ゛ぁ゛~~っ、はぁ~~~っ。ふぅ。やっと呼吸できるようになってきたぜ・・・。しっかしとんだバカがいたもんだな? 2階の窓枠に座ってる奴を押して落とすなんて」
「何度も言わせるな! あの場面で“絶対押すな”と言われて押さないバカの方がいないだろう!?」
「お前らマジでバカか?」
「全く・・・頭のデキが悪いのなら構いやしないけどねえ、ひとさまに迷惑かけることだけはするんじゃないよ」
3988.
「何言ってんだよ母さん。デキが悪いからこそひとさまに迷惑かけることになったんじゃないか。自分の血を呪えよ」
「アタシじゃなくて父さんの血だよ」
「何を言う。母さんの方だろう」
「やめてくれよ。どう取り繕ったって私ら家族はどうしようもない人間の集まりなんだからさ。あぁ~笑った。ウチならまだしもみずきんちはどうなってるんかね」
3989.
「・・・はぁ。崇、あなたはこういうことするタイプじゃないと思ってたのだけれど」
「お、俺だって思ってたさ! というか今でも思ってる! だけど! “本作品の良心”が故にあの場ではあぁせざるを得なかったんだ・・・!」
「どんな良心が働けば人を2階から突き落とすことになるの?」
「見苦しいわよ兄さん。自分のやったことの非は認めないと」
3990.
「みずき、お前なら分かるだろう・・・? あの、どうしても押さなきゃいけない場面ってやつが・・・!」
「分かりたくもないわよそんなの」
「そっ、そもそも、お前があと1分早く部室に来てればあんなことには・・・!」
「いま自分がみっともないこと言ってるって理解してる?」
3991.
「だっ、だが待て! あれは部長が望んだことなんだ! あの場面での“絶対押すな”は最早“押せ”と言ってるようなもの・・・!」
「でも発言が“押すな”であった以上、本人が嫌がってるのに押したことになるけど?」
「そうはならない法律になってるはずだろう?」
「なってないわよ何言ってるのよ」
3992.
「とにかく崇。あなたこれから1週間毎日牛乳1リットルね。少し頭を冷やしなさい」
「あ、あぁ・・・そうだな・・・懺悔には牛乳ガブ飲みがいいって研究結果が発表された出たんだっけ」
「ほんとに勘弁してよね兄さん。美々香んちは良いとして、ウチまで保護者召喚を経験するハメになるなんて、屈辱でしかないわ」
「私だって今日の学会途中で帰ることになったんだからね。“家庭の事情”で通ったけど、本当の理由なんて恥ずかしくて言えたものじゃなかったわ」
3993.
「さ、さすがに、あいつらんちよりは保護者召喚回数が少ないと信じるぞ・・・」
「残念ながら同点よ。兄さんとお兄さんが1回ずつで、私と美々香がゼロ」
「嘘・・・だろ・・・!? 美々香ちゃんにまで負けてるのか・・・!?」
「だから腹切って? もう高校生なんだから1回でもアウトに決まってるでしょ?」
3994.
「そ、んな・・・。そんなことはあってはならない! 意地でも美々香ちゃんに何かやらかさせて満月家に勝つぞ!」
「低レベルな争いをしないで?」
「頭が痛いわ・・・崇、あなた次何かやったら牛乳学会の事務員ボランティアを1年やってもらうから」
「嫌だ! 絶対に嫌だ! あんな、年寄りたちの憩いの場を維持するための召使いになるのだけは!!」